2016 Fiscal Year Research-status Report
老化制御因子による骨芽細胞と軟骨細胞の分化制御メカニズムの解析
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16K11462
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
内藤 昌子 日本大学, 歯学部, 准教授 (40436803)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 骨芽細胞 / 軟骨細胞 / 核内膜 / 早期老化症 / 細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、骨および軟骨組織におけるLMNA遺伝子の発現および局在解析を中心に行なった。長管骨組織におけるLamin A/Cタンパク質は、皮質骨や海綿骨の骨芽細胞と骨細胞に局在が認められた。次に、前骨芽細胞のモデル細胞株であるMC3T3E1細胞を用いて骨芽細胞分化を誘導した際のlamin A/C遺伝子とタンパク質の発現変化を解析した。その結果lamin A/CmRNAとタンパク質発現レベルは石灰化をともなうMC3T3E1細胞の骨芽細胞分化に関連して増加した。次に、estrogen receptor antagonistであるfuvestrantを分化誘導培地に添加し、MC3T3E1細胞の石灰化や骨芽細胞分化を抑制するとlamin A/C mRNAおよびタンパク質の発現増加が認められなかった。これらの結果からlamin A/Cの発現は骨芽細胞の分化と相関を示すことが明らかになり、本分子が骨芽細胞分化や骨基質産生能に重要な役割を果たすことが推察された。成長板軟骨組織でのlamin A/Cタンパク質の発現は増殖軟骨細胞・肥大軟骨細胞の核内に局在を示した。次に軟骨前駆細胞のモデル細胞株であるATDC5を用いて軟骨細胞分化を誘導した際のlamin A/C mRNAおよびタンパク質の発現変化を検討した。その結果、骨芽細胞とは異なり、軟骨細胞分化に関連したlamin A/C mRNAおよびタンパク質の発現増加は観察されなかった。骨および軟骨形成におけるlamin A/Cの機能を明らかにするため、Lamin A遺伝子、またはC末アミノ酸欠損型Lamin A変異体の遺伝子導入をMC3T3E1細胞やATDC5細胞を用いて行い、現在増殖能の評価や分化に及ぼす影響について解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り本年度は骨芽細胞・軟骨細胞分化誘導モデルを用いてlamin A/C遺伝子およびタンパク質の発現変化の解析を遂行し、遺伝子過剰発現系の実験モデルの構築を進めることができた。間葉系前駆細胞の実験モデルの構築に関してやや遅れがみられるのは、他の研究グループによる報告がなされたため、骨芽細胞と軟骨細胞の分化モデルの解析に集中することを決めた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は前年度得られた基礎的知見をもとに、老化制御因子が骨芽細胞分化に及ぼす影響の解析を中心に行う。平成28年度に樹立したLamin A遺伝子、またはC末アミノ酸欠損型Lamin A変異体の遺伝子を導入したMC3T3E1細胞を用いて分化誘導実験を行う。骨芽細胞の分化を誘導するためにBMP-2,アスコルビン酸,β-グリセロフォスフェート,デキサメサゾン存在下で樹立した細胞を21日間培養し解析を行う。分化能の評価は、初期の骨芽細胞分化の指標となるアルカリフォスファターゼ(ALP)染色と、カルシウムの蓄積を検出するアリザリンレッド組織化学染色を用いて解析を行う。またRNAを抽出しcDNAを合成したのち、リアルタイムPCR法にて骨芽細胞分化マーカーの遺伝子発現変化を解析する。そして、骨芽細胞分化に重要な役割を果たすWnt/β-catenin シグナルの活性変化をWestern bot法にて解析を行う。骨基質産生能の変化を詳細に検討するため、Ⅰ型コラーゲン抗体を用いた免疫染色を行い、骨基質の形成様式の違いを形態学的に検討する。細胞増殖能の評価はBrdUのラベル実験により定量的に解析を行う。以上の実験を行うことで、骨芽細胞分化におけるlamin A遺伝子と早期老化症型変異体が骨形成に及ぼす影響を明らかにすることができる。また同時に軟骨細胞分化への影響の解析を進める。
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Causes of Carryover |
研究計画はおおむね順調に進んでおり、必要な消耗品類の購入も計画的に行うことができた。しかしながら研究成果をまとめるための論文投稿を行う段階で、当初想定していた論文掲載料や印刷料が必要でない学術雑誌に投稿し、その結果論文が受理されたため、次年度使用額が15361円生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、研究計画の中心的な部分を遂行する年度にあたり、分化誘導因子やリアルタイムPCR関連試薬など高価な試薬の消耗が増えることが予想される。次年度使用額をあわせて有効に実験を遂行することを計画している。
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[Journal Article] LIPUS suppressed LPS-induced IL-1α through the inhibition of NF-κB nuclear translocation via AT1-PLCβ pathway in MC3T3-E1.2017
Author(s)
Nagao M, Tanabe N, Manaka S, Naito M, Nakai K, Takayama T, Kawato T, Torigoe G, Sekino J, Tsukune N, Maeno M, Suzuki N, Sato S.
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Journal Title
J Cell Physiol.
Volume: .
Pages: in press
DOI
Peer Reviewed
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