2016 Fiscal Year Research-status Report
ミクログリアによる脳炎症を主軸とする歯周病のアルツハイマー病増悪メカニズムの解明
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16K11478
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
武 洲 九州大学, 歯学研究院, 准教授 (10420598)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 歯周病 / ミクログリア / アルツハイマー病 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はジンジバリス菌の口腔内慢性投与により惹起させた歯周病に関し、(1)脳炎症の惹起に関するエビデンスならびに(2)アルツハイマー病分子病態(Aβ蓄積ならびにタウ蛋白質の過剰リン酸化)への影響、(3)学習・記憶機能への影響を解析し、歯周病によるアルツハイマー様病態の発症・促進機構を明らかにすることを目的としている。
平成28年度では主要な歯周病菌であるジンジバリス菌由来のリポ多糖類(PgLPS)を若齢ならびに中年の野性型ならびにカテプシンB欠損(CatB)マウス5週間連続して腹腔内に投与した後、学習・記憶能力を測定し、脳内のアルツハイマー様病態について解析を行った。その結果、PgLPS末梢慢性投与により中年マウスにおいてアルツハイマー様分子病態が誘引され、CatBがその病態の発症ならびに進行に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度では、歯周病の学習・記憶機能への影響ならびに老化の影響について解析を行った。PgLPSを5週間連続して腹腔内に投与した後、ステップスルー型チャンバーを用いた受動回避試験により学習・記憶能力を測定した。その結果、野生型中年マウスでは、学習・記憶障害が認められたが、野生型若年マウスならびにCatB欠損中年マウスでは、学習・記憶障害は認められなかった。また、PgLPSを投与したマウス脳内のアルツハイマー様病態について解析を行った。その結果、野生型中年マウスではミクログリアならびにニューロンにおいてCatBの発現が有意に増大していることが明らかとなった。また、野生型中年マウスではミクログリアにおいてIL-1βが有意に増大し、海馬ニューロンにおいてAβの蓄積が認められた。しかし、CatB中年マウスではIL-1βの発現増大ならびにAβ 蓄積は認められなかった。以上の結果より、PgLPS末梢慢性投与により野生型中年マウスにおいてアルツハイマー様分子病態が誘引され、CatBがその病態の発症ならびに進行に関与する可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
私たちはこれまでCatBがミクログリアにおけるプロカスパーゼ-1の活性化を介してプロIL-1βの活性化に関与することを報告してきた。ミクログリアの産生分泌するIL-1βが海馬ニューロン内におけるAβの蓄積にどのように関与しているのかを解析する。また、ニューロン内のCatBはβセクレターゼとして働き、ニューロン内ででAβ蓄積に関与することが知られている。そこで培養系を用い、ミクログリアからのIL-1β産生分泌おけるCatBの役割と、βセクレターゼとして働く海馬ニューロン内のCatBの役割について詳細な解析を行う。具体的にはPgLPSで刺激したミクログリアの培養上清(MCM)の初代培養海馬ニューロンにおけるアミロイド前駆体タンパク質(APP)、βセクレターゼ(BACE1)ならびにCatBの発現に対する影響をウエスタンブロット法ならびに免疫組織化学的手法により解析する。さらにCatBの特異的阻害剤CA074Meの影響を解析する。
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Causes of Carryover |
予算の調整で差額が生じたが、年度内での執行が間に合わなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度、物品費としてすみやかに使用する予定である。
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