2017 Fiscal Year Research-status Report
口腔細菌ペプチダーゼの基質となる全身疾患関連生理活性ペプチド探索の基盤研究
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16K11481
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
根本 優子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (10164667)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
根本 孝幸 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 教授 (90164665)
下山 佑 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (90453331)
馬場 友巳 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (60189727)
小早川 健 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 技術職員 (10153587)
木村 重信 関西女子短期大学, 歯科衛生学科, 教授 (10177917)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | DPP4 / インクレチン / インスリン / 歯周病菌 / 2型糖尿病 / GLP-1 / GIP / 血糖 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周病菌Porphyromonas gingivalis (Pg),および関連菌のジペプチジルペプチダーゼ(DPP)4組換え体を発現精製し,合成基質に対する酵素学的パラメーターを決定した。kcat/Km値より細菌DPP4は生体内でも充分に高い活性を有する可能性が示唆された。DPP4によるインクレチンペプチド(GLP-1,GIP)分解を質量分析で解析した結果,Argジンジパインによるインクレチン分解は血清添加により完全に阻害されたが,PgDPP4は効率よくインクレチンを分解することが示された。また,各種組換え体DPP4によるGLP-1, GIPのN末端ジペプチド分解の詳細も明らかになった。さらに,細菌DPP4をマウスに静注し,ブドウ糖負荷試験を行ったところ,DPP4投与により負荷後30分の血糖上昇が有意に高値となり(対照群250 mg/dL, 投与群 300-400 mg/dL),さらに負荷後120分血糖値への低下が遅延することが明らかになった。以上の結果は,細菌DPP4が生体内で機能することを示唆するものである。実際,細菌DPP4静注により血漿中の活性型GLP-1濃度は低下し,同時に血漿インスリン濃度も低下した。従って,これらの結果は細菌DPP4による宿主血糖調節機構の修飾が起こりうることを示すもので,DPP4-インクレチン分解を介した歯周病-2型糖尿病連関の新規の分子機序の存在を示唆する。 小児口腔へのPg菌定着過程の解析方法として,新たなfimA遺伝子ジェノタイプ解析方法を提案した。解析の結果,病原性が低いと考えられるfimA typeIとIVが早期に定着することを見いだした。さらに,細菌DPP11の3次構造解析を行い,基質ペプチド結合分子の結晶構造解析と熱力学解析からエンタルピー依存性の新規のペプチダーゼ基質認識機構を提唱した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2型糖尿病はインスリン抵抗性を病態の中核とし,循環器障害,認知機能低下等の原因となることから寿命とQOLを大きく左右する疾患である。一方,成人の7割以上が罹患する歯周病は,糖尿病との関連性が指摘されているものの,その分子メカニズムは必ずしも明らかではない。現在のところ,起炎菌である口腔細菌由来LPSおよび歯周組織の炎症による炎症性サイトカイン濃度上昇を介した間接的な増悪機構が考えられている。我々は,歯周病-糖尿病連関の観点から血糖コントロール因子であるインクレチンペプチド(GLP-1,GIP)を分解するdipeptidyl peptidase(DPP)4に着目し,検索の結果,600種以上の口腔細菌のなかで歯周ポケットに生息可能な細菌がDPP4オルソログを有し,実際,主要な歯周病菌DPP4によるGLP-1およびGIPの限定分解・不活化と血中インスリン濃度低下がおこること,また,同時に食後高血糖の上昇と血糖低下の遅延が起こることを明らかにした。さらに,薬剤耐性遺伝子カセットを用いたDNA断片エレクトロポレーション法により種々のP. gingivalisジペプチジルペプチダーゼ遺伝子破壊株を作成し,細菌ペプチダーゼによる生理活性ペプチド,およびタンパク質分解についての検討を継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
野生株,種々のP. gingivalisジペプチジルペプチダーゼ遺伝子破壊株 (Δdpp4, Δdpp5, Δdpp7, Δdpp11),多重ペプチダーゼ遺伝子欠損株及びジンジパイン欠損株(kgp rgpA rgpB)を用いて,インクレチンペプチド分解能について検討する。また,それぞれの組換えタンパク質を用いて,糖非発酵性であるP. gingivalisのペプチダーゼ分解活性について基質特異性,およびペプチド分解能に及ぼす各DPPの寄与について検討する。 歯周病原性菌,対照口腔細菌のペプチダーゼ遺伝子オルソログ分布を検討する。また,各種歯周病原菌,口腔細菌,およびBacteroides属菌のDPP活性について合成基質とペプチドを用いて解析する。同時に細菌DPP, AOPによる生理活性ペプチドやタンパク質分解について検討し知見を得る。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Degradation of Incretins and Modulation of Blood Glucose Levels by Periodontopathic Bacterial Dipeptidyl Peptidase 4.2017
Author(s)
Ohara-Nemoto, Y., Nakasato, M., Shimoyama, Y., Baba, T., Kobayakawa, T., Ono, T., Yaegashi, T., Kimura, S., Nemoto, T.K.
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Journal Title
Infection and Immunity
Volume: 85
Pages: e00277-17
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Bacterial protease uses distinct thermodynamic signatures for substrate recognition.2017
Author(s)
Bezerra, G. A., Ohara-Nemoto, Y., Fedosyuk, S., Cornaciu, I., Hoffmann, G., Round, A., Marquez, J. A., Nemoto, T.K., Djinovic-Carugo, K.
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 7
Pages: 2848
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Genotyping procedure utilizing nested PCR for P. gingivalis fimA demonstrates dominant preference of fimA-type I and IV in healthy children.2017
Author(s)
Shimoyama, Y., Ohara-Nemoto, Y., Kimura, M., Kimura, S., Tanaka, M., and Nemoto, T.K.
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Journal Title
Journal of Dental Sciences
Volume: 12
Pages: 213-219
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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