2017 Fiscal Year Research-status Report
唾液腺Ca2+応答の低侵襲的長期間イメージング技術の確立と機能・再生研究
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16K11484
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
谷村 明彦 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (70217149)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 久淑 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (00275489)
根津 顕弘 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (00305913)
森田 貴雄 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (20326549)
赤松 徹也 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(生物資源産業学域), 准教授 (80294700)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 唾液腺 / in vivoイメージング / カルシウム / 光ファイバー / ウイルスベクター |
Outline of Annual Research Achievements |
唾液腺の水・電解質分泌は細胞内Ca2+濃度の上昇によるイオンチャネルの活性化がトリガーとなることから、腺房細胞のCa2+シグナルが精力的に調べられてきた。我々はアデノウイルスベクターを使って生きたラットの顎下腺腺房細胞にCa2+センサー (YC-Nano 50) 遺伝子を発現させることによって、生きた動物において唾液腺Ca2+シグナルを解析する技術を確立した。またこの技術を使った解析によって、唾液線の組織レベルで同調するCa2+オシレーションが発生することに加えて、Ca2+オシレーションが波の様に広がるCa2+ウェーブが起こることが明らかになった。また平成28年度の研究において、従来用いていたアデノウイルスベクターに加えて、アデノ随伴ウイルスベクターやレンチウイルスベクターを用いることによって、1ヶ月以上の長期間にわたってCa2+センサーを発現させることに成功した。さらに、このin vivo Ca2+イメージング技術と、微小圧力センサーを使ったリルタイム唾液分泌測定法や、レーザースペックル血流計を使った血流イメージング法を組み合わせる事によって、唾液分泌における唾液腺腺房細胞のCa2+応答と血流の関係を解析している。 これまで行ってきた薬物刺激による唾液分泌をさらに発展させて、神経刺激や感覚刺激などより生理的な唾液分泌機構を解明するために、平成29年度は低侵襲的なin vivo Ca2+イメージング技術の開発を重点的に行った。従来の計画は、光ファイバーと光電子増倍管を使った光計測によるin vivo Ca2+測定法の開発であった。しかし、組織レベルのCa2+ウェーブなどの現象が明らかになった事から、光ファイバーを使った「低侵襲性in vivo Ca2+イメージング法」の開発に計画を変更した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
低侵襲的in vivoイメージングシステムを開発するために、ヒト唾液腺用の内視鏡を蛍光顕微鏡に装着したイメージングシステムの構築を試みている。基本システムとしてニコンインステック社製の電動顕微鏡(Ti2E)に、既存のEM-CCDカメラとフィルター切換装置を装着し、新しいソフトウェアで制御するイメージング・システムをセットアップした。この実験システムでは、CFPとYFPを使ったFRET測定や、GFPやRFPを使った蛍光測定を同時に測定できる事を確認している。またヒト唾液腺用の内視鏡で、唾液腺などの組織を可視化できることを確認した。この内視鏡を顕微鏡に連結することによって、低侵襲的in vivoイメージング・システムが完成すると考えられる。予備実験では内視鏡からの蛍光測定には成功したが、明瞭が画像を取得するには至っていないと言う点で「やや遅れている」と判断した。現在、アダプターの改良を行っており、平成30年度中には使用可能になると予測される。 顎下腺の導管結紮・再解放によって唾液腺の萎縮と機能再生が起こることが知られているが、我々は顎下腺の導管結紮によって反対側唾液腺の機能亢進が起こる事を明らかにしている。平成29年度までの研究から、この機能更新は反対側唾液腺の肥大ではなく、アセチルコリンに対する感受性の増大であることが示されている。また興味深いことに、この機能更新ではアセチルコリンによるCa2+オシレーションが、持続的Ca2+上昇に変化すると言うCa2+応答の質的変化を伴っていることが明らかになっている。現在の実験では、静脈からの持続的に注入したアセチルコリンによる反応を観察しているが、開発中の低侵襲的in vivoCa2+イメージングシステムの実用化によって、神経刺激や味覚等の口腔感覚刺激を用いたより生理的な唾液分泌の解析が可能になると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
低侵襲的in vivoイメージング:現在開発中の内視鏡を使った「光ファイバー式蛍光イメージング・システム」を完成させて、神経刺激や味覚等の口腔感覚刺激を用いたより生理的な唾液分泌の解析を行う。特に口腔感覚刺激による唾液分泌の解析は、意識がある状態で実施する必要があり、そのためには動物を神経遮断性鎮痛状態する必要がある。これまでの予備実験で、フェンタニルとドロペリドールを用いた実験を試みており、条件を最適化して意識レベルを維持した状態での実験条件を確立する。 これまでの研究では、Ca2+応答と唾液分泌の関係を主に解析してきた。一方で、Flamindo2を使ってcAMPレベルの解析を試み、培養細胞でのcAMPイメージングに成功している。また、このcAMPセンサーを使った動物のために、Flamindo2を発現させるためにアデノウイルスベクターも作成済みである。平成30年度には、これらを用いて唾液腺のin vivo cAMPイメージングを行う。この実験では、cAMP濃度の変化とタンパク分泌に加えて、唾液腺の水分泌におけるcAMPの役割も明らかにする。 平成29年度までの研究で明らかになった知見の中で、最も注目すべき発見は顎下腺の導管結紮によって反対側唾液腺の機能亢進である。この機能亢進のメカニズムが解明され、それを人為的にコントロールすることが可能になれば、口腔乾燥症の治療法に直結する技術に発展する可能性がある。我々は、次世代シーケンサーを使った網羅的遺伝子解析によって、この過程で変化する遺伝子を同定している。低侵襲的in vivoイメージング・システムをこれらの治療法開発における評価系として確立したい。
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Causes of Carryover |
光ファイバー式蛍光イメージング・システムが平成29年度に完成しなかったため、解析に使用する予定の予算を次年度に使用する。次年度繰越金は平成30年度の予算と合わせて、光ファイバー式蛍光イメージング・システムに使用するアダプターの作成、およびこのシステムを使ったin vivoイメージング用の試薬、消耗品等に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)