2017 Fiscal Year Research-status Report
分子時計遺伝子群を標的とした骨関連疾患治療薬の創出に向けた分子薬理学的研究
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16K11495
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
平居 貴生 愛知学院大学, 薬学部, 准教授 (80389072)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜村 和紀 愛知学院大学, 歯学部, 准教授 (00422767) [Withdrawn]
近藤 久貴 愛知学院大学, 歯学部, 講師 (40469002) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 骨代謝 / 時計遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、骨組織における時計遺伝子の機能と骨病態時における時計遺伝子の関与を明らかにすることを目的としている。ヒトの主な時計遺伝子として,Clock, Bmal1, Per, Cry などが見出されており,これらは転写に関わる因子である。また、時計遺伝子Nuclear Factor, Interleukin 3 Regulated/E4 Promoter-Binding Protein(Nfil3/E4BP4)は、T細胞の分化決定に必須な転写因子であることがすでに報告されている。一方、これまでの研究で、CT法を用いた骨量の測定、形態計測による骨芽細胞数、破骨細胞数の測定、カルセイン二重標識法による解析の結果、Nfil3/E4BP4遺伝子欠損マウスでは野生型マウスに比べてBV/TV値と骨形成の指標であるBFR値の減少が明らかとなった。すなわち、Nfil3/E4BP4は骨形成に関与する可能性が示唆された。また、本年度は、骨芽細胞におけるNfil3/E4BP4の標的遺伝子として見出したBmp4の制御機構について解析すると同時に、転写調節因子Ppargc1aの骨組織における新規機能についても解析した。その結果、骨芽細胞におけるアドレナリン受容体シグナリングによるNfil3/E4BP4発現上昇とそれに伴うBmp4発現の抑制には、転写因子C/EBP deltaが一部関与する可能性が示唆された。また、転写調節因子PGC-1 alphaの骨組織特異的な新規機能を明らかにするためにCre-loxPシステムを用いた骨芽細胞特異的Ppargc1a遺伝子欠損マウス(Osx-cre:Ppargc1aflox/flox)を作製し、これらマウスの表現型の解析を行った結果、Ppargc1a遺伝子欠損マウスではコントロールマウスに比べてBV/TV値の減少が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は、計画通り、個体レベルでの転写調節因子PGC-1 alphaの骨組織特異的な新規機能を明らかにするためにCre-loxPシステムを用いた骨芽細胞特異的Ppargc1a遺伝子欠損マウス(Osx-cre:Ppargc1aflox/flox)を作製し、これらマウスの表現型の解析を実施した。CT法を用いた骨量の測定、形態計測による骨芽細胞数、破骨細胞数の測定、カルセイン二重標識法による解析の結果、Osx-cre:Ppargc1aflox/floxマウスでは、コントロールマウスに比べて大腿骨における骨量BV/TV値の減少が明らかとなった。また、これら骨量の減少には骨形成の低下が関与する可能性が示唆された。また、昨年度に続き、細胞レベルでの時計遺伝子Nfil3/E4BP4の機能解析を継続して実施した。骨芽細胞様株MC3T3-E1細胞に対するsiRNA、ChIPアッセイ法、あるいはリアルタイムPCR法を用いてNfil3/E4BP4のノックダウンの影響について検討した結果、Nfil3/E4BP4がCDKN1A遺伝子にコードされるサイクリン依存性キナーゼ阻害因子1(p21)の遺伝子発現を直接的に制御することによって、細胞増殖を負に制御することが示唆された。これら制御機構が、骨リモデリングにどの程度関与するかについては、個体レベルおよび細胞レベルの解析で今後検討しなければならないが、これまでの結果に関しては、ほぼ予定通りに進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に続き平成30年度は、時計遺伝子群Nfil3/E4BP4の新規機能を解析の解析を継続する。骨芽細胞特異的Ppargc1a遺伝子欠損マウスの解析では、Ppargc1aが骨芽細胞において機能的役割を果たす可能性が示唆されたので、骨芽細胞におけるNfil3/E4BP4とPpargc1aの分子レベルでの相互作用の可能性について検討する予定である。また、NFIL3遺伝子欠損マウスは、炎症性疾患との関連が指摘されている。また、これまでの研究成果において、Ptgs2がNfil3/E4BP4の標的分子である可能性を見出している。よって、Nfil3/E4BP4の病態生理学的重要性を明らかにするために、骨関連細胞における時計遺伝子Nfil3/E4BP4による炎症性サイトカインの新規発現調節機構の探索を試みることによって、関節炎といった炎症性疾患発症におけるNfil3/E4BP4の関与の可能性について検討する。さらに、卵巣摘出マウスを用いて骨粗鬆症発症時における時計遺伝子群の変動と生物作用について継続して検討する予定である。すなわち、卵巣摘出群のマウス大腿骨とSham群を比較して、時計遺伝子Nfil3/E4BP4、Period、Bmal1、Rev-erb、ROR alpha及びPpargc1aの遺伝子変動について解析し、病態時における時計遺伝子群の関与の可能性について検討する。また、骨代謝における時計遺伝子の機能的役割に関する全体像を明らかにするために、Nfil3/E4BP4とBmal1, Rev-erbなどの時計遺伝子との相互作用の可能性についても検討する予定である。
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