2016 Fiscal Year Research-status Report
酸性細胞外pHによる糖代謝リプログラミングについて-特に癌幹細胞維持に関連して-
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16K11517
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Research Institution | Ohu University |
Principal Investigator |
加藤 靖正 奥羽大学, 歯学部, 教授 (50214408)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酸性細胞外pH |
Outline of Annual Research Achievements |
癌細胞は、解糖系の亢進により癌組織内の細胞外pHは酸性を示す。これは、好気的な条件下で乳酸を最終代謝産物とする“好気的解糖”あるいは“Warburg effect”として知られている癌細胞の特徴の一つである。一方、癌組織を構成している癌細胞は不均一であり、中には殆ど増殖せずに化学療法や放射線療法に非感受性な細胞が存在して再発や転移の原因として考えられている。これを癌幹細胞説という。本研究ではまず、酸性pHに対して馴化させた細胞株を作成し、癌幹細胞の割合が上昇するかについて検討した。その結果、口腔扁平上皮癌細胞を酸性pHで2ヶ月間かけてpH6.2でも増殖するpopulationを作成すると、癌幹細胞マーカーであるCD44vの発現が上昇することを見出した。さらにフローサイトメトリーにより癌幹細胞リッチなside populationの割合が増加したことから、CD44vの発現上昇は癌幹細胞の存在比の増加が原因と考えられた。実際、酸性細胞外pH馴化細胞は、高いスフェア形成能を有し、ヌードマウスへの高い造腫瘍性が確認された。スフェア形成能は、酸性pHで培養することで維持されたが、中性pHで培養を続けると低下した。このことは、中性pHで維持できるside populationは少なく、酸性pHでの方がside populationの割合を高い状態で維持できることを示している。現在、癌細胞株の種類を増やして検討している。一方、acuteな酸性細胞外pHによるMMP9発現のシグナルにRhoA-ホスホリパーゼD1アイソザイムの制御因子としてPAK6/7の存在を見出し16th Metastasis Research Society(中国成都)で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
酸性pH耐性株の作出が進んでいるので、順次side populationの割合を調べる。
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Strategy for Future Research Activity |
ある種の癌細胞では、酸性細胞外pHにより癌幹細胞を濃縮することが可能となったため、普遍性について検討していく。また、癌幹細胞の濃縮は、もともと存在していた癌幹細胞が複製したものか、あるいは“分化した癌細胞”が癌幹細胞かしたのかについては明らかになっていない。そこで、癌細胞から細胞クローンを採取し、マウスへの造腫瘍性を調べる。造腫瘍性を示さなかったクローンにつき、酸性pHに馴化させることで、造腫瘍性を獲得できるかどうかについて検討する。酸性pHに馴化した細胞について、メチル化酵素の発現状況を検討する。Acuteな系として、酸性pH刺激により発現上昇したMMP9遺伝子のプロモーターのメチル化について検討を進める。まずは5-azacytidineで脱メチル化することでMMP9発現が誘導されることを検討する。
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Causes of Carryover |
当初計画していた経費の一部を、大学から支給される経常研究費から充当したため、次年度額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
酸性pHに馴化する細胞を種々の細胞株を用いて作製しているときに、脂肪滴が顕著に増加していることが観察された。当初計画に含まれないが大変興味深く解析を優先的に行う必要性が生じた。そこで、次年度使用額は脂質代謝について必要な経費として使用する予定である。
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