2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K11527
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
小林 良喜 日本大学, 松戸歯学部, 助手(専任扱) (10609085)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 歯周炎 / 自然リンパ球 / Innate Lymphocyte Cell |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周疾患は歯周病原性細菌と宿主細胞との相互作用により歯周組織の破壊が引き起こされる慢性炎症性疾患であり、生体は細菌に対する防御反応として様々な免疫反応を有している。近年、自然免疫に関わる新たな細胞群として、自然リンパ球 (Innate Lymphocyte Cells, ILCs)は生体恒常性に関わり、炎症誘発や慢性化の誘導に深く関わることが報告されている。本研究では歯周病原性細菌による歯周炎の誘発と慢性化に至る機序をILCsの動向を中心とした自然免疫機構の解明を目的として、申請者らが確立した歯周病モデルマウスを応用して行った。歯周病原性細菌の口腔内接種を計14日間連続で行い、30日後に有意な歯槽骨の水平的骨吸収や歯肉の炎症を病理組織的標本により確認した。次いで、ILCsの動向についてフローサイトメトリー法により検討したところ、Lineage(-)CD45.2(+)CD90.2(+)IL-7R alpha(+)細胞群を歯肉組織から単離した歯肉単核細胞(Gingivai mononuclear cells [GMCs])中に認めることができた。対照群と比較した場合、ILCsは顕著に増加してはいなかった。ILC陽性細胞は全GMCsにおいて1~3%程度である。ILCsはサイトカインの産生能によりIFNgを産生する1型、IL-5やIL-13を産生する2型、IL-17やIL-22を産生する3型に分類される。歯肉炎症巣に局在する自然リンパ球を同定するには十分な細胞数を供することは困難であることからILCsの分化・誘導に関わる樹状細胞などを解析することで歯周炎に関わるILCsの検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
歯周病原性細菌を口腔内接種させることで、対照群と比べて顕著な歯槽骨の水平的骨吸収と歯肉の炎症を病理組織像より認めた。炎症歯肉から単離した歯肉単核細胞(Gingivali mononuclear cells; GMCs)をフローサイトメトリー法により自然リンパ球 (Innate Lymphocyte Cells; ILCs)の発現を検討したところ全GMCs中に1~3%の発現を認めることができた。しかしながら、対照群と比較して有為な変化を認めるには至らなかった。 現在、ILCsの動向をLineage(-)CD45.2(+)DC90.2(+)IL-7R alpha(+)として検討していることからILCの3つのサブセットの動向を検討するには至っていない。これは、歯肉から採取できる歯肉単核細胞がわずかであり、ILCの発現を検討するに十分な細胞数を得るにいたらなかったことに起因する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究成果より歯肉炎症巣にはILCsの局在が示された。歯周病原性細菌の口腔内接種による歯肉炎の誘発や慢性化による歯槽骨の吸収への関与が考えられることから、ILCのサブセットについて解析を行う。ILCsはサイトカインの産生能から3群に分類することができる。フロサートメトリー法により単離したILCsを歯周病原性細菌から抽出したタンパク抗原により刺激させた培養上清をサイトカインELISA法に供することでILCsの同定を検討する。同時に、ILCsの分化・誘導に関わる樹状細胞や粘膜上皮細胞から産生されるサイトカインを検討する。歯肉炎症巣から単離させた樹状細胞を歯周病原性細菌由来タンパク抗原を共培養させることで得られた上清をサイトカインELISA法に供することでサイトカインを検討する。他方で、炎症歯肉上皮から精製したtotal RNAをリアルタイムPCR法に供することでサイトカインを検討する。
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Causes of Carryover |
歯周病原性細菌の口腔内接種により歯肉炎症巣に遊走されるILCの動向を検討するためにフローサイトメトリー法により検討したが検出されたILCによるサブセットの解析には細胞数が十分ではなかった。サイトカイン産生能を検討するのには十分な細胞を得ることができなかったので単核細胞の採取方法を変更した。また、フローサイトメトリー法に使用する蛍光標識抗体を新たに検討したことで計画に遅れが出たため、サイトカインELISAキットの購入しなかったので次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
歯肉炎症巣におけるILCの動向を検討するために、セルソーターシステム(FACSaria, 共用機器)などを用いてILCを採取し、より詳細な検討を行う。セルソーターシステムに用いる蛍光標識抗体は平成28年度の検討結果から検討する。また、ILCの各サブセットへ分化・誘導させるサイトカインを産生すると考えられる樹状細胞や歯肉上皮細胞からサイトカインの産生についてELISA法やリアルタイムPCR法などを用いて検討を行う。樹状細胞等を検討することで歯肉炎症巣に局在するILCの動向を検討する。上記について検討するために使用する蛍光標識抗体、サイトカインELISAキット、PCR試薬の購入に充てる。
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