2016 Fiscal Year Research-status Report
咀嚼筋痛障害モデル動物を用いた咀嚼筋痛障害に伴う慢性痛発症機序の解明
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16K11533
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
隈部 俊二 大阪歯科大学, 歯学部, 准教授 (30288774)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
乾 千珠子 (山本千珠子) 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (00419459) [Withdrawn]
中塚 美智子 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (70368158)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 咀嚼筋痛障害モデル / 中枢 |
Outline of Annual Research Achievements |
咀嚼筋痛障害は顎関節症(Temporomandibular disorders:TMD)の主要な病態であり、痛みに苦しむ患者は非常に多い。スプリントが無効な重症例は全身に広がる慢性的な筋痛である線維筋痛症に移行すると言われる。口腔顎顔面領域の慢性痛に関し、神経損傷由来の病態については研究が盛んに行われ、中枢および局所における動態について数多くのことが解明されてきた。しかし咀嚼筋痛障害の病態については未だ解明されていない点が多く、治療法も確立されていない。また病態解明に不可欠な咀嚼筋痛障害モデル動物の開発も進んでいない。本研究では咀嚼筋痛障害の治療法開発に向けた基礎研究として、まず咀嚼筋痛障害モデル動物を作製することにした。 平成28年度はまず雄性 Sprague-Dawley (SD)ラット(250g)の左側咬筋に、炎症性要因としてLPS (E.Coli) 2μg/kgを生理食塩水に溶解したものを50μl投与し、24時間後に侵害性要因として6%高張食塩水を50μlずつ、90分間隔で5回投与したものを実験群とした。比較対照群はLPS 2μg/kgを生理食塩水に溶解したもの、もしくは生理食塩水を50μl投与し、24時間後に同じものを50μlずつ、90分間隔で5回投与したものとした。現在脳幹の形態変化の過程をHematoxylin-Eosin (HE)染色にて観察するとともに、炎症メディエーターの抗体を用い、免疫組織化学的染色を行って可塑的変化を検索している。また細胞内情報伝達物質の発現について、免疫組織化学的染色を行って免疫陽性細胞数をカウントしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
雄性 Sprague-Dawley (SD)ラット(250g)の左側咬筋に、炎症性要因としてLPS (E.Coli) 2μg/kgを生理食塩水に溶解したものを50μl投与し、24時間後に侵害性要因として6%高張食塩水を50μlずつ、90分間隔で5回投与したものを実験群、LPS 2μg/kgを生理食塩水に溶解したもの、もしくは生理食塩水を50μl投与し、24時間後に同じものを50μlずつ、90分間隔で5回投与したものを比較対照群として実験を進めている。刺激開始2週後、ならびに3週後に脳幹および咬筋を取り出し、脳幹については炎症メディエーターの抗体を用い、免疫組織化学的染色を行って可塑的変化を検索した。また細胞内情報伝達物質の発現について、免疫組織化学的染色を行って免疫陽性細胞数をカウントしている。 研究はやや遅れている。理由は筋の可塑的変化の検索の際、より研究の精度を高めるためにはin vitroでの実験も必要ではないかと考え、実験内容の追加について検討を重ねていたためである。脳幹に関するデータは現在収集中であるが、収集終了後解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず現在収集中のデータ解析を進めていく。また誘発される痛み行動の指標として、障害部ではpush-pull gaugeによる咬筋の筋圧痛閾値を、また障害部以外ではvon Frey filamentでWhisker Padを刺激したときの頭部回避閾値を刺激側および非刺激側にて継時的に測定する。障害発生後1週を過ぎ、末梢における痛みの発生源が消失しているが、末梢および中枢において可塑的変化がみられた場合、モデル動物として有用と判断する。 次に試薬の投与後1日、3日、7日、2週、4週、8週、10週、12週、16週に左右両側咬筋を摘出し、通法に従い切片を作製する。組織修復の過程をHE染色にて観察する。炎症メディエーターの抗体を用い、免疫組織化学的染色を行って可塑的変化を検索する。並行して筋組織から筋芽細胞を採取し、培養して筋線維を形成させ、炎症メディエーターを作用させた際の筋の免疫組織化学的変化についても検討を行う。 また炎症メディエーターおよびポリモーダル受容器の抗体を用いて蛍光二重染色を行い、局所炎症に伴うポリモーダル受容器の感作について検討する。
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Causes of Carryover |
筋の可塑的変化の検索の際、より研究の精度を高めるためにはin vitroでの実験も必要ではないかと考え、筋組織より筋芽細胞を採取し、培養して、炎症メディエーターを作用させた際の筋の免疫組織化学的変化についても検討を行うことにした。実験内容の追加について検討を重ねていたため、残額を使用することができず、次年度使用額が生じることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の分担者2名の分担金は計60万円である。 次年度は今年度に引き続きラットを用いて実験を行う予定で、ラット購入費として10万円を計上する予定である。またELISAキット等の分子生物学的解析や免疫染色のための抗体、細胞培養用培地といった試薬購入費として30万円、細胞培養などに用いる器具購入費として10万円を計上する予定である。さらに研究成果を発表するため、国内学会(日本解剖学会、東京都)、国際学会(International Society of Neurochemistry (ISN) 2017、Paris, France)参加費ならびに出張費各1回として計30万円を計上する予定である。研究成果発表費用、英文校閲費用としては26万9千円を挙げている。
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