2018 Fiscal Year Research-status Report
還元型グルタチオンの歯髄保護効果:歯科保存修復への応用
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16K11542
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
平石 典子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 講師 (20567747)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | グルタチオン / 還元剤 / 歯科材料 / 銀イオン / ストロンチウムイオン |
Outline of Annual Research Achievements |
臨床歯科領域で使用される、金属イオンの歯髄への毒性効果を、グルタチオン配合による解毒効果と合わせて評価した。う蝕予防目的で一般に臨床で使用されている、38%フッ化ジアンミン銀溶液と、マルチイオンリリース型のbioglassを対象に、細胞増殖/細胞毒性試験、細胞中のアルカリホスファターゼ活性試験をラット歯髄細胞株(RPC-C2A)にて行った。結果、前者で10万倍希釈でも毒性が呈示され、銀イオン(金属錯体)金属毒性が、象牙細管を経由し、歯髄細胞に対し組織為害性を示していることが懸念された。5mM、50mM濃度の還元型グルタチオンを添加したところ、6時間では、還元型グルタチオンの添加により有意なフッ化ジアンミン銀の毒性軽減が認められた。24時間では50mMのグルタチオンによる毒性軽減は認められたが、5mMのグルタチオンによる毒性軽減は認められなかった。ALPでは6時間、24時間ともにグルタチオンを加えた結果、有意なフッ化ジアンミン銀の毒性軽減が認められた。この内容は、ことし6月、国内学会に発表予定である。マルチイオンリリース型のbioglassでは、フッ化物イオン、ホウ酸イオン、アルミニウムイオン、ケイ酸イオン、ストロンチウムイオンなどが長期的に徐放されることによりバイオアクティブ効果が発現する機能性ガラス素材として注目されているが、深い窩洞に使用した場合、濃度依存的ではあるが、毒性が示された。このように、歯科材料では、濃度依存性ではあるが、細胞毒性を有する材料があり、グルタチオンによる毒性緩和の可能性の追及の必要性が示させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
グルタチオンは、細胞内に 0.5から10 mMという比較的高濃度で存在するが、細胞外の濃度はその1/100以下である。この濃度では、還元型グルタチオンの、ラット歯髄細胞株による細胞レベル実験では、細胞増殖、細胞中のアルカリホスファターゼ活性に変化はなかった。しかし、50mM 以上では、グルタチオンの毒性がやや出現した。これは、グルタチオン本来の還元作用で、アッセイテストの結果に影響が及ぶ懸念も否定できなかった。深いう蝕に、直接塗布する臨床的効果を期待していたが、う蝕起炎菌の抗菌作用、またはう蝕菌由来の脱灰を抑制する緩衝能はグルタチオンに、期待できないと考えられた。そこで、抗菌作用及び脱灰緩衝能を持つ薬剤の、歯髄への直接の影響を緩和する効果を評価することになった。 上記の2つの効果を持つ、マルチイオンリリース型のbioglasとグルタチオンの並行利用に注視した場合、リリースされる、フッ化物イオン、ホウ酸イオン、アルミニウムイオン、ケイ酸イオン、ストロンチウムイオン中で、ストロンチウムイオンの毒性が懸念された。擬似体液とこれらリリースイオンの反応を分析し、リン酸カルシウム系の生成沈殿物のX線回折解析を試み、現在解析中である。
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Strategy for Future Research Activity |
還元型グルタチオンは非タンパク質チオールトリペプチドであり、生理的機能は主に細胞レベルで水溶性の抗酸化物質として働き、解毒作用に関与する物質である。しかし、ラット歯髄細胞株による細胞レベル実験では、細胞増殖、細胞中のアルカリホスファターゼ活性に変化はなかった。ある種の金属イオンは非酵素的にグルタチオンと結合するため、解毒作用を呈するが、歯科材料からの様々な金属イオンの溶出が懸念されるため、2019年度,研究期間延長し、追加実験を行う所存である。金属イオンと、グルタチオンの反応生成物に対する、組成分析を、外部分析機関にて、実施予定である。グルタチオンが、有害性の金属イオンのミネラル沈殿に、抑制または促成効果があるのか、組成分析より考察し、グルタチオンの応用方法は、金属イオンリリース歯科材料に配合させるか、イオンの景況が歯髄に及ぶ懸念があるときに、追随してグルタチオンを塗布するか、臨床的に確実な方法を検討する。細胞増殖、毒性試験は、骨芽細胞(MC3T3ーE1細胞)の使用も予定する。
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Causes of Carryover |
研究結果発表を海外学会にて予定していたが、国内(東京)にて発表を行えたため、旅費が削減でした。ラットにて動物実験予定であったが、細胞を使ったin vitro、アッセイテスト追加試験を実施していたため、動物実験関連費用が未使用であった。グルタチオンは、細胞内に 0.5から10 mMという比較的高濃度で存在するが、細胞外の濃度はその1/100以下であり、この濃度では、還元型グルタチオンの、ラット歯髄細胞株による細胞レベル実験では、細胞増殖、細胞中のアルカリホスファターゼ活性に変化はなかった。しかし、50mM 以上では、グルタチオンの毒性がやや出現したことから、次年度も動物実験の必要性は慎重に検討することになる。
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