2017 Fiscal Year Research-status Report
3Dプリンターを用いた歯内治療シミュレーションシステムの創出
Project/Area Number |
16K11555
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
後藤 康治 九州大学, 歯学研究院, 准助教 (00170473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 英史 九州大学, 歯学研究院, 教授 (10284514)
友清 淳 九州大学, 大学病院, 講師 (20507777)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 3Dプリンター / シミュレーションモデル / 歯内治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
難治性根尖性歯周炎の原因の一つとして、複雑な根管の解剖学的形態があげられる。これまでは術者の経験に頼ることが多かった歯内治療であるが、本研究では、コーンビームCT(以下CBCT)画像データから3Dプリンターによる立体造形モデル(以下3Dモデル)を作製し、これを用いて実用性の高い歯内治療シミュレーションシステムを創出し、精緻な治療を行うためのトレーニング方法を確立することを目的とした。本研究で使用する3Dプリンターは、どの診療室でも容易に使用できるように、低価格化が進み家庭用として普及し始めた熱溶解積層方式(以下FDM方式)を選択した。このFDM方式の3Dプリンターで、根管を単純化した3Dモデルを造形し、長軸に垂直な方向に切断して断面を実体顕微鏡で観察し、3Dモデルの内部に形成された根管の形態を確認したところ、この3Dモデルでは、研究計画当初、歯内治療シミュレーションモデルに必須と考えていた微細な根管系の再現が非常に困難であることが明らかとなった。特に、狭窄した彎曲根管の再現は全く不可能であった。この微細な根管系の再現のためには、精密な造形が可能な3Dプリンターを用いて3Dモデルを作製する外注業者の利用が必要と考え、初年度の研究の中で、FDM方式の3Dプリンターで使用されるABS樹脂やPLA樹脂では得られない、象牙質に近い手用根管切削器具の切削感が得られることが判明した光硬化性樹脂を用いた、マテリアルジェッティング方式の3Dプリンターによる造形を行っている業者を選択した。外注業者へ3Dデータを送り、3Dモデルを作製する場合、3Dデータの送信から3Dモデルの入手までかなりの時間がかかり、本研究の目的のひとつである「実用性の高さ」という点から問題がある。今後、現有のFDM方式の3Dプリンターで、どこまで微細な根管系が再現できるかを検討する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の研究実施計画では、早い段階でFDM方式の3Dプリンターを導入し、3Dモデルを作製することになっていたが、現在の機種を選定するまでに多くの時間がかかってしまった。また、3Dモデル造形に使用する樹脂の選定でも、FDM方式の3Dプリンターが指定しているABS樹脂とPLA樹脂によって作製した3Dモデルでは、手用根管切削器具の切削感のシミュレーションに問題があり、厳密な切削感のシミュレーションには、光硬化性樹脂を用いたマテリアルジェッティング方式の3Dプリンターで作製した3Dモデルを外注して使用する必要があることが判明した。さらに、研究計画立案当時、造形方向の工夫である程度再現が可能と予想された微細な根管系の形態が、FDM方式の3Dプリンターで造形された3Dモデルの内部に形成された根管系を観察した結果、樹脂の積層段階での変形によりほとんど再現出来ていないことが明らかとなった。「実用性の高さ」で選択したFDM方式の3Dプリンターの造形能力の限界が、歯内治療シミュレーションモデルに必須と考えていた微細な根管系の再現に制限を与えていると考えられるが、現有のFDM方式の3Dプリンターの能力がまだ100%発揮されていない可能性もあるため、FDM方式の3Dプリンターに使用可能な、メーカー指定以外の樹脂の使用や、造形パラメーターの修正等を今後行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度での研究の中で、初年度である平成28年度に導入したFDM方式の3Dプリンターで造形された3Dモデルでは、研究計画当初歯内治療シミュレーションモデルに必須と考えていた微細な根管系の再現が非常に困難であることが判明した。そこで、微細な根管系の再現のため、マテリアルジェッティング方式の3Dプリンターによる造形を行っている業者へ3Dデータを送り、光硬化性樹脂を用いた3Dモデルを作製することを検討したが、3Dデータの送信から3Dモデルの入手までかなりの時間がかかり、「実用性の高さ」という点から問題があることが明らかとなった。このような点を踏まえて、本研究の最終年度である平成30年度では、現有する比較的安価なFDM方式の3Dプリンターを用いて造形された3Dモデルで実現可能な、実用性のあるシミュレーションシステムの創出を検討することとした。具体的には、現有のFDM方式の3Dプリンターの能力を100%発揮させるための工夫として、メーカー指定以外の樹脂の選択や造形パラメーターの修正等を行い、これらの工夫により3Dモデル内に形成された微細な根管形態を利用した歯内治療シミュレーションの方法を考案することをあげることができる。
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Causes of Carryover |
理由 3Dモデルを歯内治療シミュレーションに使用する際、本研究の初年度で導入したFDM方式の3Dプリンターで造形した3Dモデルでは、切削感のシミュレーションと微細な根管形態の再現で問題があることが判明している。これらの問題を解決する一つの方法が、マテリアルジェッティング方式の3Dプリンターで、光硬化性樹脂を用いて造形を行う外注業者に3Dデータを送り3Dモデル造形の外注を行うことである。この外注費用の確保が次年度も必要となった。また、性能向上が著しいFDM方式の3Dプリンターの最新モデルをレンタルで導入し、微細な根管形態の再現能力を確認するために、レンタル費用の確保も必要である。 使用計画 本研究の初年度で導入したFDM方式の3Dプリンター、レンタルで導入する最新のFDM方式の3Dプリンター、および外注業者の光硬化性樹脂を用いたマテリアルジェッティング方式の3Dプリンターで造形した3Dモデル内に形成された微細な根管形態の解析を行い、歯内治療シミュレーションモデルへの応用の検討を行う。
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