2018 Fiscal Year Research-status Report
歯根端切除後の周囲組織の治癒を促す神経ペプチドの同定
Project/Area Number |
16K11556
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
橋口 勇 九州大学, 歯学研究院, 准助教 (10150476)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 英史 九州大学, 歯学研究院, 教授 (10284514)
濱野 さゆり 九州大学, 歯学研究院, 助教 (40757978)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 歯根切除 / 神経線維 / 歯根膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
処置後3日では歯槽骨や象牙質削片周囲を取り囲むように肉芽組織が認められた。周囲の肉芽組織内にはラミニン陽性の筒状の構造物が多くみられ、また、PCNA陽性細胞が数多く出現していた。神経線維は骨窩洞の下方より発芽しており、骨窩洞に向けて伸長していたが、骨窩洞周囲の肉芽組織中には認められなかった。処置後5日では、歯根断端を被覆している破折象牙質の周囲には既存の歯根膜由来と思われるやや立方形の細胞が散在性に認められた。歯槽骨や象牙質削片周囲にもラミニン陽性の筒状の構造物が出現していた。骨窩洞内はほぼ肉芽組織で満たされており、PCNA陽性細胞が数多く出現していたが、神経線維は骨窩洞の中央部には観察されず、肉芽組織の周囲に分岐していた。処置後1週では、骨窩洞内には幼弱な骨組織が形成されており、歯根断端との間に繊維成分の少ない結合組織が観察された。ラミニン陽性の筒状構造物は骨窩洞内の新生骨組織中にはほとんど見られず、新生骨組織と既存の歯槽骨あるいは歯根周囲の歯根膜組織や新生結合組織中に多くみられた。同様に、神経線維も新生骨を迂回するように伸長していた。PCNA陽性細胞は歯根断端周囲の歯根膜や新生結合組織中で数が増加していた。処置後2週目では、骨窩洞に形成された骨組織は成熟していた。ラミニン陽性の筒状構造物は新生結合組織と歯根断端周囲の既存の歯根膜組織では多いままであったが、神経線維はその数が減少しており、主として歯槽骨に近接した歯根膜中に観察された。これらの結果から、骨窩洞の骨添加や新生結合組織の形成には、血管の再生が重要であることが示唆された。ヒト歯根膜由来の細胞を用いてCGRPのレセプター(CGRPレセプター1、CGRPレセプター2)の有無を免疫染色で検討したが、レセプターは観察されなかった。また、オステオポンチン等の骨芽細胞関連蛋白の発現にも有意な差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
神経線維由来のペプチドは骨形成や組織修復に関与していることが報告されているが、本研究では骨窩洞形成後の組織修復や骨形成との間に時間的ならびに空間的な関連を認めることができなかった。また、歯根膜由来細胞を用いた系において神経ペプチドであるCGRPレセプターの発現ならびに骨芽細胞関連タンパクの有意な発現の確認できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivoの系において骨窩洞形成後の組織修復や骨形成に新生血管が重要な役割を担っていることが示唆された。低酸素症は破骨細胞を活性化すること、ヒト歯根膜細胞は低酸素の環境ではアルカリフォスファターゼ活性や細胞増殖が抑制されることが報告されていることから、血管新生に関与する血管内皮増殖因子や線維芽細胞増殖因子との関連を調べる。
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Causes of Carryover |
骨窩洞形成後の組織修復過程における神経線維の動態を検討したin vivoの系あるいは歯根膜細胞を用いた培養系においてレセプター発現や骨芽細胞関連タンパクの発現を検討したin vitroの系において、当初想定していた神経線維あるいは神経ペプチドが骨修復に関与していることを示唆する所見が得られなかった。しかし、骨窩洞周囲の増殖細胞周囲に血管と思われるラミニン陽性の筒状構造物がみられた。低酸素症は破骨細胞を活性化すること、ヒト歯根膜細胞は低酸素の環境ではアルカリフォスファターゼ活性や細胞増殖が抑制されることが報告されていることから、血管新生に関与する血管内皮増殖因子や線維芽細胞増殖因子との関連を調べる。
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