2018 Fiscal Year Research-status Report
天然生理活性ペプチドのヒト歯髄由来幹細胞培養・移植による骨再生能の解析
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16K11557
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
山田 志津香 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (00363458)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 魚コラーゲンペプチド / ヒト歯髄由来幹細胞 / 骨芽細胞 / 石灰化 |
Outline of Annual Research Achievements |
我が国では、2007年に65歳以上の人口の割合が21%を超え、諸外国に先駆けて超高齢社会に突入した。それに伴い、総人口の10%である約1,300万人が骨粗鬆症であるといわれている。QOLの維持・向上のため、骨折の予防・治療薬の開発は急務である。研究代表者はこれまで、牛海綿状脳症や口蹄疫などの人畜共通感染症のない魚の皮、骨、鱗から抽出精製された魚コラーゲンペプチド(FCP)を用いて骨再生に関する研究を行ってきた。昨年度の研究では、石灰化の三次元的テンプレートであり、骨質を評価する指標となるコラーゲンに着目し、ヒト歯髄由来幹細胞(HDPSCs)を用いて、コラーゲン架橋関連酵素であるリシルヒドロキシラーゼ(LH)1,2の遺伝子発現を検討した。その結果、0.2mg/mLという低濃度のFCPはLH2の遺伝子発現を増加させ、HDPSCsを骨芽細胞に分化させる能力を有する可能性を示唆した。今回は、さらにFCPのタンパクレベルでの骨芽細胞誘導能について、アリザリンレッドS染色により検討した。 本実験ではこれまで同様、株式会社ニッピから供与されたFCPを使用した。智歯周囲炎により抜歯された第三大臼歯の歯髄から分離されたHDPSCsは長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の倫理委員会により使用が承認された(許可番号;1286-7)。FCP不含のDMEMで培養したHDPSCsを対照群とし、TaKaRa Clontech社から販売されている石灰化誘導(OI)培地で培養したHDPSCsをポジティブコントロールとした。6well皿に5×10^4個のHDPSCsを播種し、培養28日目に、各群の細胞をホルマリン液で固定後、25分間染色液に浸漬した。その結果、OI添加群が最も強く赤く染色され、FCP添加群、対照群と続いた。この結果から、低濃度FCPは、石灰化誘導培地には及ばないものの、単独で間葉系幹細胞を骨芽細胞に誘導する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト歯髄由来幹細胞の増殖能が低下しているため、骨芽細胞分化段階までの期間が長くかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
魚コラーゲンペプチドによるヒト歯髄由来幹細胞の骨芽細胞分化への方向性をさらに証明するため、軟骨細胞や脂肪細胞などの他の細胞に誘導されていないことをアグリカンやリポタンパク質リパーゼなどの遺伝子発現の有無により確認する。
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Causes of Carryover |
ヒト歯髄由来幹細胞の増殖能の低下により、予定より実験遂行が遅れたため、次年度使用額が生じた。今後は凍結している同細胞の中で比較的継代数の若い細胞を解凍し、実験を進めていく予定である。それでも細胞増殖が遅い場合は、当院口腔外科で抜歯された第三大臼歯を供与いただき、歯髄から幹細胞を分離精製することも考慮する。
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