2017 Fiscal Year Research-status Report
自己組織化機能を有するヒト由来iPS細胞を用いた歯髄組織再生の具現
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16K11558
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
池田 毅 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (90244079)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 志津香 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (00363458)
松裏 貴史 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (10721037)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 歯髄再生 / 歯髄幹細胞 / 魚コラーゲン / 根管内無菌化 |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会において歯の健康はQOL向上のために必須である。歯を長持ちさせるために、深いウ蝕や歯髄炎で一旦歯髄を完全に除去しても、もう一度歯髄を再生させ元通りにする新しいウ蝕・歯髄炎治療法の開発を行ってきた。まず本研究では、本法を用いてGMPに準拠した施設内(アイソレーター内)でヒト中高齢歯髄幹細胞を分取し、老化誘導機構を解明することにより老化回避法を開発し、安全で安定的に高効率に増幅する方法を確立する。また、非臨床研究において、中高齢のイヌ全部性歯髄炎あるいは根尖性歯周炎モデルで、根管拡大清掃後、再生根管充填材(遊走因子およびscaffold) および自家歯髄幹細胞を移植し、歯髄再生の安全性および有効性を確定する。また、歯髄再生に最適な、安全で高効率な根管内無菌化法とその薬剤を開発する。ついで、非臨床研究の結果を基に歯髄再生の臨床研究を行う。これにより、歯の根管を人工物により充填する従来の歯内治療技術を新規の歯髄再生法により高性能化することを目指すものでる。本年度はヒト中高齢歯髄幹細胞の安全性・安定性が確認でき、非臨床試験での中高齢の抜髄後および感染根管治療後の歯髄再生の安全性・有効性が確認できた。さらに、ヒト中高齢抜髄後の歯髄再生の臨床研究が開始できる。また、動物に由来しないアテロ化魚コラーゲンが試作することができた。歯髄再生に必須の、最適な根管内無菌化法とその薬剤として超音波ナノバブル薬剤導入法が検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)アイソレーター内(GMPに準拠)で、ヒト中高齢者の抜去歯歯髄をコラーゲナーゼ処理により分散させ、H28年度に確立したイヌ中高齢歯髄幹細胞分取・増幅法のSOPに従って、DMEMと自己血清にて培養させ、2代目で膜遊走分離法にて歯髄幹細胞を分取し、さらに増幅させることができた。 2)ヒト中高齢歯髄幹細胞の安全性の確認:1)の培養各段階において、形態観察、無菌試験、エンドトキシン試験、マイコプラズマ否定試験を行い、感染症の否定や細胞の形態変化、生存率を検討したところ、特に問題となることはなかった。また ヒト中高齢歯髄幹細胞の有効性の確認:幹細胞表面抗原、歯髄分子マーカー発現、老化マーカー発現、細胞遊走能、血管・神経誘導能、神経栄養因子・血管誘導因子発現などの解析により、品質を評価中である。ヒト中高齢歯髄幹細胞のガン化リスク評価:免疫不全動物への移植後16週まで病理組織学的検討を行ったところ、ガン化に対する問題点はみられなかった。 3)再生根管充填材に適したアテロ化魚コラーゲンの開発:キトサンの生体親和性、生分解能に関する弱点を改善することを目的に、魚コラーゲンについて、再生足場材としての細胞・組織への影響および組織内での吸収状況を検討したところ、十分有用性が確認できた。 超音波ナノバブル薬剤導入法による根管無菌化の証明法の確立:イヌ抜去歯あるいはin vivoにてイヌ感染根管モデル歯を用いて、象牙細管内あるいは副根管・側枝に深く感染させ、抗生剤と超音波ナノバブル導入前後の根管側壁の象牙質削片を用いた細菌培養検査法を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)イヌ中高齢の非臨床研究による抜髄後の歯髄再生の安全性および有効性の確認:形態学的解析(再生歯髄の根管に対する体積比、血管新生密度、神経再生密度)、歯髄分子マーカーの遺伝子・蛋白質発現解析を行う。またイヌ中高齢の歯髄幹細胞をイヌ歯髄に単回移植する幹細胞歯髄内単回埋移植試験を実施し、4週間の観察期間に一般状態、体重眼科的検査、尿検査、血液学的検査、血液生化学的検査、剖検、期間重量、病理組織学的検査などの検査を行い、歯髄幹細胞の毒性を調べる 2)ヒト中高齢歯髄幹細胞の継代による染色体異常・核型異常:M期細胞に対するQ-band核型解析を行う 3)アテロ化魚コラーゲンの有効性試験:成長因子の徐放性および細胞増殖能検討する
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Causes of Carryover |
(理由) 予定していた物品が充足したため、一部残存した。 (使用計画) H30年度における研究実施予定に合わせて使用する。
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