2016 Fiscal Year Research-status Report
生体活性ガラスによる象牙質補填材及び象牙質-歯髄複合体再生用スキャホールドの開発
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16K11559
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
諸冨 孝彦 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (10347677)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生体活性ガラス / 生体親和性 / 抜髄 / 直接覆髄 / 歯周組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は我々の開発した生体活性ガラスを基材としたセメントを用い、スキャホールド材として不可欠な生体親和性を確認するためin vitroおよびin vivoにおける歯髄細胞、歯髄組織および歯周組織に対する生体活性ガラスの生体親和性を確認した。加えて、歯や歯周組織の開放創面封鎖に用いるための材料についても検索を行った。 1)in vitro: 生体活性ガラスは歯髄由来細胞に対して細胞毒性を示さず細胞増殖能の低下も来すことはなかった。また、象牙芽細胞への分化および象牙質基質形成を阻害しないことが確認された。 2)in vivo: ratを用いた動物実験において上顎第一臼歯の直接覆髄に生体活性ガラス含有セメントを用いた際には、従来より直接覆髄材として用いられている水酸化カルシウム製剤およびMTA (mineral trioxide aggregate)と比較しても同等の硬組織形成能を有することが確認された。さらに下顎第一臼歯根尖孔を越えた過剰な根管形成を行った後に過剰な根管充填を行い歯周組織への影響を確認したところ、臨床の場において現在広く使用されている根管充填用シーラーとして組織親和性が高いとされている酸化亜鉛非ユージノール系シーラーと比較しても惹起される炎症応答に差は無く、その一方で根尖部周囲のセメント質の肥厚が有意に増加していることが確認された。この結果より、生体活性ガラスの高い硬組織形成誘導能が示唆された。 3)歯や歯周組織の再生治療を行う際に創面の封鎖に用いる材料として候補に挙げている4META-MMA/TBBレジンセメントの歯周組織への影響を確認するため、歯肉上皮細胞および骨芽細胞への影響についても確認した。その結果、硬組織との高い接着性を有するこの材料は歯周組織を構成する上皮細胞や骨芽細胞への影響は穏やかであり、処置の際に用いることができる有用性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初ストロンチウムの含有量を主眼とする研究も予定していたが、本研究で開発を目指すスキャホールド材は歯および歯周組織の各種細胞に直接的に接するため、歯髄および歯周組織へのin vitroおよびin vivoにおける生体親和性の確認実験を多方面から詳細に検討することとした。その結果、生体活性ガラスはin vitroおよびin vivo研究において、歯髄由来細胞に対して細胞毒性を示さず、また象牙芽細胞への分化および象牙質基質形成を阻害しないこと、またrat上顎第一臼歯の直接覆髄でも生体親和性と硬組織形成能を有することが確認された。さらに下顎第一臼歯での歯周組織への影響も一過性であり、治癒に有効とされる根尖部周囲のセメント質の肥厚が有意に増加していることが確認された。この結果より、生体活性ガラスの高い硬組織形成誘導能が示唆された。また、臨床応用に目を向けた再生治療時の歯および歯周組織の開放創面被覆保護材・仮封材として4META-MMA/TBBレジンの適用についても有用性を示すことができ、研究の遂行に不可欠な基礎的知見を得ることができた。以上から、研究所年度として研究計画はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
生体活性ガラスの主要な構成因子の一つである酸化カルシウムを様々な割合(10, 20, 50および100%)で酸化ストロンチウムに置換したSr-BAGを象牙質形成誘導能を有する新規の象牙質補填材及び象牙質-歯髄複合体再生療法用スキャホールド材に応用するため、各Sr-BAGディスクおよび粒子を用いて歯髄由来細胞の増殖能や象牙芽細胞分化能、石灰化誘導能を確認し、最適なストロンチウムの含有割合を詳細に確認する。in vitroおよびin vivoによる両研究によって検討していく。次に、最適な酸化ストロンチウムの置換割合を有するSr-BAGのうち、細胞の遊走および接着、分化、硬組織形成により十分に咬合圧に耐え歯髄を保護する能力を有するSr-BAGー象牙質様硬組織ハイブリット構造体を誘導するための粒子径について確認を行う。これもin vitro実験に引き続き実際に動物実験を行い、その効果を確認する。その後、象牙質再生用スキャホールドとして応用するSr-BAG多孔性スポンジの作製について検討していく。Sr-BAGをスキャホールド材として応用するには補填材としての細胞接着性や硬組織形成誘導能に加えて、硬組織の形成速度に合わせて徐々に分解し、最終的には形成された再生象牙質様硬組織に置き換わる性質が求められる。そのためSr-BAGを粒子から多孔性スポンジ状構造とすることで、細胞の足場となる構造を維持しながら分解する性質を与えることが可能となる。さらに操作性の向上も期待できる。多孔性スポンジは、凍結乾燥法を適用することで、孔径や気孔率がほぼ自由に制御された多孔性スポンジ材料を得ることができると思われる。
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Causes of Carryover |
納入業者より伝票処理上の請求金額の訂正があったため、端数が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究用に使用する消耗品を購入予定。
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