2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K11563
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
荻野 玲奈 (田中玲奈) 昭和大学, 歯学部, 助教 (80585779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 陽 昭和大学, 歯学部, 講師 (30327936)
宮崎 隆 昭和大学, 歯学部, 教授 (40175617)
有本 隆文 昭和大学, 歯学部, 講師 (60407393)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エナメル質 / 初期脱灰病変 / マイクロCT |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,過酸化水素浸透後,光照射したエナメル質に石灰化イオン溶液を浸透させる方法を用いて,エナメル質に耐酸性と抗菌性を与えることである.H28年度はヒト健全歯エナメル質に脱灰液により人工的に初期脱灰病変を作成した.エナメル質を強化する予防的石灰化療法の確立のために最適なイオン供給の方法を検討した. ヒト抜去歯エナメル質に過酸化水素と光照射後を行い,石灰化イオン溶液を浸透させ再石灰化を検証した.石灰化イオン溶液として用いたSurface reaction-type pre-reacted glass-ionomer (S-PRG)を含有した修復物はフッ化物,ストロンチウム,ホウ素などのイオンを放出するため,近接した歯面の脱灰抑制や抗菌性などの効果が報告されている.本研究では初期脱灰病変に過酸化水素と光照射後にS-PRGから抽出したイオン溶液に浸漬したエナメル質のミネラル密度の変化を検討した.ヒトの第三大臼歯をサンプルとして用い,頬側面に被験面としてバーニッシュを行い,直径5mmのエナメル質表面を露出させた.エナメル質被験面に脱灰液を作用させ経時的にマイクロCTによりエナメル質内のミネラル密度の変化を測定した.35%の過酸化水素とハロゲンランプ照射を用いたオフィスブリーチ処理を行い,その後S-PRGから抽出したイオン溶液中で24時間浸漬し,ミネラル密度の変化を解析した.オフィスブリーチでは処理後の後処理によってエナメル質のミネラル密度を回復する必要性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホワイトスポットのような天然の初期脱灰病変は,個体差が大きく未処理群として用いることが難しいため,健全なヒトエナメル質に人工の初期う蝕を作成した.エナメル質に脱灰液を経時的に作用させ,ミネラル密度の変化を測定し脱灰の進行とミネラル密度の変化を解析した.未処理ではエナメル質最表層が最も石灰化度が高いが,初期脱灰病変を作成したエナメル質ではエナメル質は内部でミネラル密度が変化していることがわかった.初期脱灰病変ではエナメル質中層に比べ表層の石灰化度が低くなった.エナメル質初期脱灰病変に過酸化水素および光照射後に石灰化溶液に浸漬したサンプルではエナメル深部で石灰化度が高くなる傾向がみられた.マイクロCTを用いたため,一般的に行われている切断・研磨したサンプルによる評価ではなくエナメル質全体の解析を行い,ミネラル密度の変化を知ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
生体材料としてのエナメル質が人工的な脱灰処理に対する挙動を捉えるため,脱灰から再石灰化におけるミネラル密度の変化をマイクロCTを用いて引き続き解析する.さらにエナメル質の切断試料を作成し,ナノインデンターを用いて未処理,過酸化水素と光照射後にSurface reaction-type pre-reacted glass-ionomerから抽出したイオン溶液に浸漬し改質したエナメル小柱の力学的特性の変化を解析する.さらにマイクロラマンによりエナメル質表層のリン酸基のピークシフトの解析,およびエックス線回折装置による結晶構造解析を行い,エナメル質表層の結晶構造の変化を解析する.また,エネルギー分散型蛍光X線分析装置により,改質エナメル質の表面にホウ素が検出されれば抗菌作用が期待されるため,抗菌試験へと移行する.抗菌試験では改質エナメルサンプル上にStreptococcus mutansを培養し抗菌試験を行う予定である.
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Causes of Carryover |
物品費に関しては,今年度は脱灰病変の作成に取り組んだので,試薬やガラス器具などの購入が見込みよりも少なかった.旅費は,国内学会での発表数が予定よりも少なかった.その他に関しては,今年度主に使用したマイクロCTは研究者が既知のソフトウエアであったのでインストラクション費用などがかからなかったため差額が生じたと考える.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費は,今後様々な再石灰化条件を検証する際に,サンプル数増加に伴い,サンプルや試薬を保存するガラス器具の購入や再石灰化試薬の購入費用,pHメーターの電極購入など消耗器具の購入に充てる予定である.また,マイクロCTおよびマイクロラマンは当初の予定よりもデータの容量が膨大であったため,既存のハードディスクでは不足しており,今後大容量ハードディスクの購入を予定している.
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