2016 Fiscal Year Research-status Report
マイクロクラックの進行機序解析に基づくTooth wear予防法の確立
Project/Area Number |
16K11565
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
高見澤 俊樹 日本大学, 歯学部, 講師 (60373007)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | Tooth wear / マイクロクラック / 光干渉断層撮影 |
Outline of Annual Research Achievements |
Tooth wearは,化学的因子の酸蝕による歯質の脱灰および機械的因子である摩耗,咬耗によって生じるマイクロクラックなどが相互に作用することで進行するものとされている。しかし,Tooth wearの進行抑制あるいは予防法に関する知見は少なく,臨床手法も確立していない。そこで,実験室環境でTooth wearモデルを構築することでTooth wearへの酸蝕因子および機械的因子の影響を検討するとともにTooth wearの進行抑制および効果的予防法の確立を目的とした。 実験室環境においてtooth wearモデルの構築を試みた。すなわち,ウシ下顎前歯のエナメル質を10x10x4 mmのブロックとして切り出し,これを衝突摩耗試験用試片とした。衝突摩耗試験機の治具に試片を装着し,ステンレスロッドをアンタゴニストとして,落下距離5 mm,水平往復距離2 mm,荷重2.5 kgfの条件で,1回の落下と1回の水平往復を1サイクルとする衝突摩耗試験を0,500,1,000回行った。衝突摩耗試験中の試片の浸漬溶液は,500回毎に37℃の人工唾液(pH 7.0)と0.1 M乳酸緩衝液(pH 4.75)あるいはpH 2.5に調整したリン酸水溶液を使用したpHサイクルを設定した。得られた試片をTooth wearモデル試片とした。所定の衝突摩耗回数を施した試片についてレーザー顕微鏡を用いて歯質に生じた状態変化を表面粗さ,最大摩耗深),摩耗量および表面性状のプロファイルから解析した。また,試片に生じたマイクロクラックは,荷重に対する亀裂の伝播方向,亀裂深度および幅などの特徴について光干渉断層装置を用いて観察した。 その結果,クラックの発生は衝突摩耗の初期段階で発生し回数の増加とともにエナメル質の実質欠損が増加することが明らかとなった。また,浸漬溶液のpHにその摩耗量は依存することも判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験室環境におけるtooth wearモデルの構築に関しては,衝突摩耗時の荷重および衝突回数などの条件を規定することでtooth wearモデルの構築が可能となった。また,摩耗量や表面性状のプロフィリングからtooth wearの進行過程およびマイクロクラックの発生頻度,伝播方向についての解析が可能となった。特に,浸漬溶液のpHによってtooth wear の進行は異なり,pH 4.75の乳酸緩衝液においてはその摩耗量は蒸留水と比較して5倍の値を示した。また,光干渉断層装置による観察から,マイクロクラックの進展深さの探知に関しては限界があったものの,その表面性状における光の反射,散乱の違いから異なるシグナルとして確認できた。 また,tooth wearモデルの構築にあたり,pHを調整した試片浸漬溶液を変更することで酸蝕歯を考慮に入れたモデルの構築が可能となった点については当初の計画以上と言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた知見を基に,tooth wear予防に有効と考えられる修復材料について28年度に行った実験系から検討を行う。特に,CPP-ACP溶液,SPR-Gフィラー溶出液の歯質強化材および機能性モノマー含有ボンディング材を応用した際の状態変化を検討する。すなわち,Tooth wearモデルに対して上記の予防材を応用した後,摩耗量測定,マイクロクラック分析およびSEM観察からマイクロクラックの状態変化,Tooth wear進行抑制および予防効果を検討する。 また,マイクロクラックの進行抑制およびクラックの発生を予防するために浸透性を高めるとともに歯質のハイドキシアパタイトと化学的接着能を有する機能性モノマー含有コーティング材の開発を行い,評価する。すなわち,人工的に製作したマイクロクラックに対しての浸透性をレーザー顕微鏡あるいは電子顕微鏡観察から測定する。また,可能であればこれらのtooth wear 進行抑制材の効果について,再度衝突摩耗試験を行いその耐久性についても検討を行う。
|
Research Products
(4 results)