2016 Fiscal Year Research-status Report
ポリマイクロバイアルバイオフィルムモデルを用いた根面齲蝕研究モデルの開発と応用
Project/Area Number |
16K11567
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
向井 義晴 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 教授 (40247317)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜田 信城 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 教授 (20247315)
富山 潔 神奈川歯科大学, 大学院歯学研究科, 講師 (90237131)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | バイオフィルム / 根面齲蝕 / 細菌叢 |
Outline of Annual Research Achievements |
多菌種から構成されるバイオフィルムを形成することが可能なポリマイクロバイアル(PM)バイオフィルムモデルをベースとして使用し,培養液中のミネラル量,スクロースの添加・非添加により口腔内に極めて近似した環境下における活動性・非活動性根面象牙質齲蝕ならびに再発齲を再現できるモデルの開発を目指している.今回,一連の研究の第一段階として,PMバイオフィルムモデルと抗菌剤による次世代シーケンス・アンプリコン解析を行うとともに,口腔内を模倣した環境下における活動性・非活動性齲蝕病原細菌を形成することを目的とし,糖代謝後のpHの相違と,PMバイオフィルム菌叢の関係について検討を行なった.48時間培養ポリマイクロバイアルバイオフィルムに対し0.2% sucrose含有(A)および非含有(B)のMcBain培養液を用いて96時間まで嫌気培養を行った.測定は培養液のpHと次世代シーケンス・アンプリコン解析を行なうことによるPMバイオフィルムサンプルに由来する菌群の帰属分類群を推定した.また,バイオフィルム中の生菌数も算定した.A群では,菌叢のほとんどがStreptococcus属で構成され,B群ではStreptococcus属のほかVeillonella属の割合が上昇した.またA群の使用済み培養液のpHは4.6~4.1で推移し,B群のpHは6.4~6.8で推移した.生菌数は,B群が1.42×10 8,A群は1.77×10 7であり,両群間に顕著な差を認めた.本結果はPMバイオフィルムモデルを用いて,スクロースの有無により異なる細菌叢のバイオフィルムを形成することができたことを意味している.また糖代謝の条件を変えることによりin vitroで,齲蝕活動性を反映するバイオフィルムを形成できることが示された。今後,培養条件を精査し,検討を重ねて,より口腔内に近い齲蝕モデルを開発していく所存である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の28年度の研究計画では以下の2項目を挙げていた.すなわち1.一被験者から採取した唾液をMcbain2005液体培地に添加し,ガラス円板または歯根象牙質円板を基質として口腔内多種細菌を含むポリマイクロバイアルバイオフィルムを形成する.2.形成されたバイオフィルムの生菌数,乳酸産生量、構成細菌叢の分析を行う.また,象牙質円板は薄切後,TMR撮影し病巣ミネラルプロファイル形態,病巣深度ならびにミネラル喪失量を測定する.3.一定期間,スクロース非含有のMcbain2005培地で培養を継続し,バイオフィルム中の細菌の増殖状態ならびに酸産生能を生菌数、乳酸産生量測定ならびに構成細菌叢を分析することにより検討する.象牙質円板を用いた場合には,その期間における表層下脱灰病巣の進行停止をTMRで検討する.本年度は象牙質円板を使用した実験結果の取得までには至らなかったが,次世代シークエンサー(MiSeqTM, Illumina, USA)を用いて,各サンプル由来の16S rDNAからシーケンスデータを得て,部分塩基配列を決定し,次世代シーケンス・アンプリコン解析を行なうことにより,PMバイオフィルムサンプルに由来する菌群の帰属分類群を推定したり、サンプル間の比較解析には,主成分分析およびクラスター解析(クラスタリング手法: 群平均法, 距離関数: ピアソンの相関係数)を用いるなど詳細な検討ができたものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はスクロース含有・非含有の培地を用いることにより異なる細菌叢を有するバイオフィルムを作製することができた.特に非スクロース含有培地で作製したバイオフィルムのpHは象牙質の臨界pHを上回ることから停止性(非活動性)齲蝕のモデルにもなり得ると考えられる.今後,同実験を象牙質円板を基質として用いTMRによる評価を行うとともに,再びスクロース含有培地に移して培養を続けた場合に齲蝕活動性の高いバイオフィルムが再度形成されるか否かを検討する.またStreptococcus mutansの多い被験者,少ない被験者を使用した実験を行うことにより,結果の違いを検討することも重要と考えられる。
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