2016 Fiscal Year Research-status Report
Er:YAGレーザーデポジション法による歯質上へのアパタイト膜形成条件の確立
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16K11576
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
本津 茂樹 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (40157102)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エナメル質修復 / ハイドロキシアパタイト / 口腔内レーザーデポジション / 象牙質知覚過敏症 |
Outline of Annual Research Achievements |
レーザー加工とレーザー成膜とが表裏一体の関係にあることに着目し、Er:YAGレーザーによる歯質の切削や歯石の除去を加工と見なし、このレーザーを歯質上でハイドロキシアパタイト(HAp)のバルク体(ターゲット)に照射すれば、歯質上にHAp膜が成膜できると考え、Er:YAGパルスレーザーデポジション(Er:YAG-PLD)法を発案した。そしてこの手法を用いて、エナメル質や象牙質上にHAp膜を形成できることを確認した。しかしながら、レーザーのコンタクトチップやターゲットの種類、レーザーパワーや繰り返し速度、ターゲットや歯質への水の供給法などの最適成膜条件は未だ確立されていない。本研究では、ミスト供給式小型Er:YAG-PLDユニットを試作し、それを用いて歯質上に固着性に優れ、知覚過敏治療にも適応できるHAp膜の最適作製条件の確立を目指す。 平成28年度は、(a)臨床用小型Er:YAG-PLDユニットの試作とその成膜条件の検討、さらに(b)得られた膜評価に必要な評価項目の一部について研究を実施した。(a)では、ネブライザーをミスト供給源としたミストアシストEr:YAGレーザーアブレーション装置を作製し、最適成膜条件として① アブレーションアシストミスト量、② コンタクトチップおよびターゲット、③ レーザーパワー、繰り返し速度、④ 照射角度、照射距離、照射時間について検討した。また、(b)では、⑤ XRD回折による結晶構造測定、⑥ SEMによる堆積膜の粒子サイズの評価を行うことで最適成膜条件の決定に対してフィードバックした。その結果、ほぼ成膜条件を確定することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
XRD回折による堆積膜のHAp化への時間経過観察、SEMによる堆積膜の粒子サイズの評価より、当初の計画の① アブレーションアシストミスト量、② コンタクトチップおよびターゲット、③ レーザーパワー、繰り返し速度、④ 照射角度、照射距離、照射時間等の成膜条件がほぼ確立できた。成膜効率から評価した最適ミスト噴出量は0.41 ml/minであった。また、Er:YAGレーザの出力・繰り返し周波数を変化させた時の堆積膜の平均粒子径から決定した最適レーザ出力は300mJ、繰り返し周波数は10Hzであった。さらに、レーザーの照射角度は30°から45°で、レーザー先端とターゲット距離は0.5mm、ミスト噴出口とターゲットの距離は10mmが最適であることがわかった。ただ、当初の予定であったEDXによる堆積膜の組成評価を現在行っているため、進捗状況は「おおむね順調」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針として、H29年度では現在実施中の堆積膜のEDXによる組成評価から始める。続けて堆積膜の固着特性の評価を、引っ張り試験機による引っ張り試験および、200g重さの150 rpm、20 strokeのブラッシング試験、および1分間の超音波洗浄剥離試験によって実施する。 また、象牙細管の封鎖性の評価をPashleyらが報告している象牙質透過抑制率測定装置を用いて行う。さらに、堆積膜をもつ象牙質試料をレジンで包埋し、その後基板面に垂直に切断して、堆積膜-象牙質界面を露出させ、低真空SEMにより象牙細管の封鎖状況を観察することで固着状況を確認する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が「0」より大きくなった理由として、ミストアシスト小型Er:YAG-PLDユニットの作製費が当初予定の半額で作製できたこと、評価のために必要していた試薬・薬品、評価膜作製用基板等が当初の予定より少なくてすんだこと、またこれに関連して各種分析用機器の消耗品費も少なくすんだこと、さらには固着強度特性の測定を研究連携者が行ったため、実験補助者への謝金が必要でなくなったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、申請時に上げなかったミストアシスト小型Er:YAG-PLDユニットの堆積膜の生体親和性の評価を行う必要性が出てきたので、この評価をヒト由来間葉系幹細胞を用いた細胞培養とラットを用いた動物実験によって行っている。特に動物実験の非脱灰研磨標本の作製は非常に難しいため、外部に依頼しており、この標本の作製代に使用する。また、Er:YAGレーザー堆積膜は、象牙質知覚過敏症以外の歯科審美にも使用可能と思われるので、この評価を行うために歯科用分光測色計の消耗費として使用予定である。
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Research Products
(7 results)