2016 Fiscal Year Research-status Report
咀嚼による記憶機能維持のメカニズム解明についての研究
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16K11608
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
豊下 祥史 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (20399900)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
會田 英紀 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (10301011)
川西 克弥 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (10438377)
佐々木 みづほ 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (70638410)
越野 寿 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (90186669)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 学習記憶機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで、咀嚼が学習記憶機能を向上または維持させる現象は、動物、ヒトを問わず多数報告されており、fMRIやPETを用いた研究により、咀嚼が、一次感覚運動野等の血流や細胞代謝を増加させることが知られている。本研究では、これまでの研究結果を元に、咀嚼による三叉神経の求心性シグナルが神経細胞の発火を促し、シナプス形成促進物質を産生することによって、シナプス形成の促進が起こり、その結果として記憶機能の維持、向上が起こっているとの仮説を立てた。そこでCa2+プローブの利用により神経細胞の発火を可視化し、咀嚼が記憶機能の維持・向上にあたえる影響についてより詳細なメカニズムを明らかにすることを目的とした。一定時間、絶食をさせた後、給餌させ、咀嚼を行ったことを確認したモデル動物を、できるだけ早く頸椎脱臼により安楽死させ、脳を頭蓋より一塊として取り出し、Ca2+プローブであるCaTM-2と反応をさせ、共焦点レーザー顕微鏡にて、画像の取り込みを行った。その結果、Ca2+プローブの発色が微弱であったことから、フォルマリンによる固定方法から、固定を行わず、凍結切片を作製し、細胞透過性のあるCa2+プローブと反応させた。その結果、神経細胞の発色を認めたものの、神経の活性化部位に一定の規則性は認められず、再現性のある結果は得られなかった。安楽死を行う際の刺激も脳の活性に影響を与えるため、飼育瓶の中で、咀嚼中に麻酔ガス濃度を上昇させ安楽死させる方法など、実験条件を工夫してみたが、やはり脳内の活性化を検出ことは可能であったが、その部位に一定の規則性は見出すことは出来なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験設備、試薬等、実験に必要な物資の入手はスムーズであったが、次の2つの点により、当初の予定よりも実験の進行に時間を要した。 1.咀嚼を終えたモデル動物の脳を摘出し、Ca2+プローブと反応させ、発色に至るまでの実験条件の調整に時間を要した。Ca2+プローブは培養細胞にはよく用いられている試薬で、培養細胞用のプロトコールは充実しているのに対し、組織染色のプロトコールも存在しているものの、その詳細が分かりにくく、試適濃度や反応時間の検索を行った。さらに細胞膜の透過性が亢進するような処理を行うと反応が悪かった。そのため、細胞膜を透過するCa2+プローブに切り替えることによって発色の問題は解決することができた。 2.試薬と細胞内のCa2+が反応し、発光が起こった部位を検索した。発光部位は動物個体によって相違があり、一定の規則性を見出すことができなかった。この結果から、咀嚼から、安楽死させるまでのプロセスによって反応を起こす部位に規則性がないのか、そもそも咀嚼による脳の活性化部位はラットでは個体によって違いがあり、規則性がないものなのかについて鑑別する必要が生じた。そのため、咀嚼から安楽死の間にできるだけ刺激をしない実験条件を設定し、再現性のある結果を模索するのに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
最大800文字(1600バイト)、改行は5回まで入力可。 実験計画ではCa2+の細胞内への流入が多く認められた領域において、シナプス形成を促進するタンパクの検証を行う予定であった。しかしながらCa2+の上昇部位に一定の傾向は認められなかったため、脳をブロックに分け、部位ごとのシナプス形成を促進するタンパクの検出を行う予定である。固形飼料飼育によって通常通り咀嚼を行う群と液体飼料飼育によって一定期間咀嚼を行わない群を設定し、脳の部位別にタンパク発現の比較を行う。同定するタンパクは、これまでもターゲットとしてきたBDNF(brain derived neurotrophic factor; 脳由来神経栄養因子)およびCREB (cAMP response element binding protein)について細胞内のmRNA量を比較検討する。 BDNFは神経細胞の発生,成長,維持,修復に働き、シナプスの可塑性にも関与しており、学習・記憶と関係が深いとされている。CREBは様々な外的刺激によって活性化される転写因子で、学習・記憶に関わるタンパクをコードすることが知られており、BDNFとの相乗作用でその効果が増強されることが報告されている。またCREBはリン酸化により活性化されるため、リン酸化CREB抗体を用いたELIZA法により、リン酸化CREBのタンパク量を検討する。一方、BDNFはタンパクとして産生されるまでには時間を要するため、その前段階であるmRNA量をreal time RT-PCRで検討する。
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Research Products
(1 results)