2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K11633
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
片岡 有 昭和大学, 歯学部, 助教 (90527300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 陽 昭和大学, 歯学部, 講師 (30327936)
宮崎 隆 昭和大学, 歯学部, 教授 (40175617)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 骨質 / オッセオインテグレーション / チタン / ナノインデンテーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、チタンインプラント最表層での生体反応を明らかにし、超高齢社会に適した骨質改善を視野に入れたインプラント治療を可能にすることである。インプラント治療の成功は、オッセオインテグレーションの獲得と維持であり、チタン最表層での生体反応向上による早期の石灰化をめざし様々な表面処理技術が応用されている。石灰化組織はコラーゲンとアパタイト結晶のナノコンポジット組織であり、器質小胞性石灰化モデルで示される。しかし、チタン最表層での石灰化メカニズムはすべて明らかにされていない。超微小領域の分析が可能であるナノインデンテーション、顕微ラマン分光分析、および顕微エックス線回折などの最先端分析法を用いることで、チタン最表層超微小領域の石灰化メカニズムの解明に挑戦することである。 その中でまず最初に注目しているのは、骨質を明らかにすることである。今までの我々の報告においても、機械加工表面よりラフサーフェス、そして、超親水性に代表される表面エネルギーの高い表面が、早期にオッセオインテグレーションを獲得することを明らかにしてきた。チタン最表層での生体反応は、器質小胞性石灰化モデルで考えることができ、最終的に石灰化組織は、コラーゲンとアパタイト結晶のナノコンポジット組織となり、この生成反応はチタン最表層で生じる。平成28年度は市販されている様々なインプラント体表面を模して表面改質を行い、適切な「骨質」であるかを考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
各種表面処理を行ったJIS2種チタン板を実験に供した。ワイヤ放電加工表面を施したEDSurface、サンドブラスト処理面、エッチング面とコントロールとして機械加工表面を用いた。分化誘導培地を用い間葉系骨髄細胞の培養をし、4週間にわたり培地交換をする。アリザリンレッド染色により石灰化組織が確認されたら細胞動態試験および分析に用いた。また、通法に従い、試料をレジン樹脂に包埋し、試料を割断し研磨したものを分析に用いた。それらに対し、顕微ラマン分光分析およびナノインデンテーションを用い、骨質の評価を行ったところ、酸化膜を有するEDSurfaceが弾性係数および硬さ共に高い値を示し、酸化膜を有する表面がインプラントの早期オッセオインテグレーション獲得に有用であることを示唆することができた。 本来は、平成28年度はさらに顕微エックス線回折により、チタン最表層石灰化組織のハイドロキシアパタイト結晶の異方性を求め、顕微ラマン分光分析およびナノインデンテーションとあわせて骨質の評価を総合的に行うことが目的であった。さらに、ラジカルの供与によるアパタイト結晶の異方性に与える影響と、LOXなどによるコラーゲン架橋を促進する酵素を人為的に付与することで、チタン最表層微小領域で基質小胞性石灰化のメカニズムが明らかになる予定であったが、予備実験等を含む段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度および平成30年度は、現在までの結果と、顕微エックス線回折装置を合わせて利用することで微小領域の結晶構造の結果を得ることを最優先とする。さらに、X線回折用標準試料(SRM640e、シリカ)を用い検出結晶の結晶子サイズの決定、結晶方位評価(配向性評価)を行い、チタン最表層に形成された石灰化組織およびチタン最表層の分析を行いたい。これらのナノインデンテーションおよび顕微ラマン分光分析と合わせて考察することで、基質小胞性石灰化のメカニズムが網羅的に解明することに主眼を置く。 さらに、昭和大学動物実験実施規定に従い動物実験実施のための承認番号を取得し、当大学の動物実験施設で実験を行う。Wister系ラットを適当数用意し、麻酔下で、ワイヤ放電加工で作製した動物用ミニインプラント体を埋入し、1週間(初期)、2週間(オッセオインテグレーション獲得期)、8週間、12週間(リモデリング期)後に、マイクロCT撮影を行い画像処理ソフトで三次元画像を得る。得られた像から骨形成の3次元的な解析を行い、骨形成量を評価する。また、骨質評価については取り出した組織を今まで同様の方針で、試料作製し、チタン最表層微小領域をナノインデンテーション、顕微ラマン分光分析、および顕微エックス線回折を行い、力学的特性、コラーゲン架橋およびアパタイト結晶の異方性を求め、in vitroで得られた結果との整合性を解析したい。継時的に結晶配列を明らかにすることで、リモデリング期におけるチタン最表層石灰化メカニズムも明らかにできるのではないかと考える。
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Causes of Carryover |
各種表面処理を行ったJIS2種チタン板を実験に供した系では、細胞分析にかかる費用等で賄うことができた。また、ナノインデンテーション等の利用は当大学保有の分析機器であるために特段の準備を必要としなかった。また、平成28年度に予定していた顕微エックス線回折分析によりチタン最表層石灰化組織のハイドロキシアパタイト結晶の異方性を求め、顕微ラマン分光分析およびナノインデンテーションとあわせて骨質の評価を総合的に行うことに関しては準備途中段階で行われなかったために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画通りであれば、平成28年度に予定していた顕微エックス線回折を平成29年度に行うので次年度使用額が必要になり、チタン最表層石灰化組織のハイドロキシアパタイト結晶の異方性を求めることとなる。その際にはコンロールとしての結晶などが必要であり、当初平成28年度に予定した額よりも予算がかかるものと思われる。
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Research Products
(2 results)