2016 Fiscal Year Research-status Report
温度制御式反復温熱刺激による効率的かつ汎用的な神経細胞分化誘導法の開発
Project/Area Number |
16K11643
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
工藤 忠明 東北大学, 歯学研究科, 助教 (50431606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
望月 研太郎 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (20633499)
出江 紳一 東北大学, 医工学研究科, 教授 (80176239)
金高 弘恭 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (50292222) [Withdrawn]
高木 敏行 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (20197065) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | PC12細胞 / N2A細胞 / 温熱刺激 / 神経細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は温度制御式反復温熱刺激(TRTS)依存的にラットPC12細胞の神経突起伸長を誘導する方法を見出した(工藤ら、2015年)が、TRTSにより得られる分化率には改善の余地があり、またその汎用性の検討も充分ではない。本年度研究では、TRTSによる神経突起形成の促進における、培地温度上昇/下降相とその反復回数の重要度についてPC12細胞を用い検討した。第2段階としてTRTSのマウスN2A細胞への影響も検討した。 [方法](1)複数の条件のTRTSで6日間分化誘導した。その際、現行法(3時間加熱×6回/日)を対照とした。(2)N2A細胞では2つの異なる温度にてTRTS処理をした(39.5℃と42℃)。その後細胞傷害性や神経突起形成を評価した。分化誘導因子の併用試験も行った。 [成果]現行のTRTS法に比べ、総加熱時間は等しいものの休止時間(1時間)を入れずに加熱する新TRTS法(18時間加熱×1回/日)でも、ほぼ同じ程度に神経突起形成がPC12細胞において誘導された。また、N2A細胞では、(1)細胞増殖試験において現行のTRTSでは影響がなかったものの、TRTS(42℃)ではPC12細胞と同様著明に細胞が傷害された。PC12細胞と異なり、現行TRTS法ではN2A細胞において著明には神経突起伸長が促進されなかったが、BMP2やレチノン酸とTRTSを併用した場合では、液性因子単独処理時に比べ、神経突起形成が有意に促進された。これらの結果は、TRTS(39.5℃)を用いた神経突起伸長誘導において、培地温度の上昇相/温度下降相における細胞温度刺激やその反復回数よりも、平衡相における細胞への温度刺激の方が、分化誘導には重要な因子として作用することを示唆する。またN2A細胞の結果から、TRTSへの感受性は細胞の種類にも依存し、その感受性は液性因子等の環境濃度により調節できる可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度研究では、温度制御式反復性温熱刺激(TRTS)を用いてPC12細胞における神経細胞分化を誘導する際に、分化率を効率的に向上させるために有効な因子やプログラム制御法の検討を実施する中で、いくつかのTRTS設定条件に着目し、一定の知見を得ることができた。またPC12細胞以外の細胞に初めてTRTSを適用し、TRTSが当該細胞に与える作用様式を一部解明し、TRTSの汎用性についてもいくつかの新たな知見を得ることができた。これらの結果を受け、今後はさらに予定している他の項目の検討に入る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、平成28年度に実施した実験より得られた成果を踏まえ、実験系におけるTRTS条件を必要に応じてさらに改善しつつ、以下の検討を実施する。 (1)本研究課題の研究計画に則り、PC12細胞やN2A細胞の他に、SH-SY5Y神経芽細胞もしくはヒトiPS細胞由来細胞等、順次他の神経細胞分化モデルを用いて、引き続きTRTSにより神経細胞分化誘導が可能な条件の検討を行い、TRTSによる神経細胞分化誘導技術の汎用性を検討する。 (2)また、(1)を実施する際、神経細胞分化誘導に必要なTRTS設定条件の最適化を通じ、TRTS依存性神経細胞分化において分化誘導率向上につながる要因の検討を随時実施し、TRTS技術の実用性の向上に役立てる。
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