2017 Fiscal Year Research-status Report
温度制御式反復温熱刺激による効率的かつ汎用的な神経細胞分化誘導法の開発
Project/Area Number |
16K11643
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
工藤 忠明 東北大学, 歯学研究科, 助教 (50431606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
望月 研太郎 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (20633499) [Withdrawn]
野口 拓也 東北大学, 薬学研究科, 准教授 (20431893)
出江 紳一 東北大学, 医工学研究科, 教授 (80176239)
金高 弘恭 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (50292222) [Withdrawn]
高木 敏行 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (20197065) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | PC12細胞 / N2A細胞 / SH-SY5Y細胞 / 温熱刺激 / 神経細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は温度制御式反復温熱刺激(TRTS)依存性にラットPC12細胞の神経突起伸長を誘導する方法を見出した(工藤ら、2015年)が、TRTSによる分化率には改善余地がありその汎用性の検討も充分ではない。本年度研究では前年度のマウスNeuro2A(N2A)細胞による研究結果を踏まえ主に次の2点を検討した。(1)TRTSを新たに神経分化モデル・ヒトSH-SY5Y(SH)細胞に負荷し、神経細胞分化誘導効果の有無を検討した。(2)TRTSにより神経突起が伸長するPC12細胞の分化率向上に向けTRTSにより活性化する新規シグナル経路を検討した。 [方法](1)増殖または分化誘導培地に播種したSH細胞に、TRTS処理(3時間×6回/日、6~7日間)を実施し(加熱プレート温度:39.5及び42℃)、細胞増殖や神経突起形成を評価した。(2) PC12細胞では、シグナル阻害剤を用いTRTS依存性分化誘導に関わる新たなシグナル経路を検討した。 [成果]SH細胞における39.5℃のTRTS処理は、N2A細胞と同様、細胞増殖率に影響を与えなかった。42℃のTRTS処理では、N2A細胞やPC12細胞と同様、負荷開始後著しい細胞毒性を認めた。更にSH細胞は、PC12細胞と違い、39.5℃のTRTS単独処理では神経突起形成が誘導されなかった。この点はN2A細胞の結果と同様であったが、SH細胞では、N2A細胞と違い、TRTSはレチノイン酸依存性神経突起伸長も促進しなかった。以上よりTRTSに対する感受性は細胞により異なり、TRTSの感受性を調節する分子的機序の存在が示唆された。一方TRTSがPC12細胞に神経突起を伸長させるシグナル経路に関し、各種阻害剤により、新たにTAK1-p38経路及びMEK5-ERK5経路が神経突起伸長に必須であることやJNK阻害剤自体が分化に促進的に作用することを示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度研究では、温度制御式反復性温熱刺激(TRTS)を適用して、前年度のNeuro2A細胞に続き、SH-SY5Y細胞における神経細胞分化誘導を試み、TRTSの汎用性について一定の知見を得ることができた。また、PC12細胞においては、TRTSによる神経細胞分化誘導を調節する役割を担うと考えられる複数のシグナル伝達経路を新たに特定することができた。これらの結果を受け、今後は得られた知見に関してさらに実験的検討を重ねるとともに、予定している他の項目の検討も実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、前年度までに実施した実験により得られた成果を踏まえ、実験系におけるTRTSの負荷条件を必要に応じてさらに改善しつつも、本研究課題の研究計画に則り以下の検討を実施する。 (1)細胞によりTRTSの感受性が大きく異なる結果が得られたことから、その要因について優先して検討する。この目的のため、特にTRTSにより神経細胞分化誘導が可能なPC12細胞において、TRTSにより活性化され神経突起伸長を誘導するシグナル経路についての検討を継続する。TRTS依存的なシグナル伝達経路を明らかにすることを通じて、TRTS依存性神経細胞分化における分化誘導効率の向上やそれに伴うTRTSの実用性の向上にも役立てる。 (2)これまでに検討したPC12細胞、Neuro2A細胞およびSH-SY5Y細胞の他に、順次他の神経細胞分化モデルを用いて、引き続きTRTSにより神経細胞分化可能な条件の検討を行い、TRTSによる神経細胞分化誘導技術の汎用性を検討する。
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