2017 Fiscal Year Research-status Report
口腔内神経堤幹細胞の採取部位別生物学的共通点と相違点を解明する次世代再生医学研究
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16K11644
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
阿部 成宏 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (00510364)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経堤幹細胞 / 歯乳頭幹細胞 / 歯髄幹細胞 / 口腔粘膜幹細胞 / 細胞分化 / Neurosphere法 |
Outline of Annual Research Achievements |
再生医療に用いる幹細胞は、簡単に大量の細胞を単離することが重要である。歯の発生には神経堤由来の細胞が大きく関与している。現在までに報告されている神経堤幹細胞の分離方法は非常に複雑であり、非常に高額な機器を用いなければならないのが現状であった。以前の報告で神経幹細胞と同様に皮膚由来、骨髄由来の神経堤幹細胞でも無血清培地下にb-FGFとEGFを添加させ、浮遊培養することでNeurosphare形成を認め、幹細胞が濃縮されることが示唆されている。 われわれはこのsphere分離法を用いてヒト歯髄および口腔粘膜から、神経堤幹細胞を単離することに成功した。本手法は、高額機器や煩雑な分離操作なくして簡便に幹細胞集団を単離できる非常に有用な手法である。歯髄および口腔粘膜由来sphere 形成細胞は一見同じ表現型を示すが、分化能に違いがあることが明らかとなった。再生医療においては、同系統の組織幹細胞であっても、ターゲットとする組織に適切に分化しやすい細胞でなければならない。現在までに各口腔組織のsphere 分離法で単離された細胞集団の共通点と相違点を詳細に解析した報告はない。 そこで本研究では、同一患者の智歯抜歯時に採取される歯乳頭組織、歯根膜組織および口腔粘膜組織を用いて、幹細胞生物学的に検討を行い、sphere分離法によって単離される各種ヒト口腔組織幹細胞の違いを明らかにし、それぞれの最適な再生組織が何であるのかを明らかにすることを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト抜去歯より採取した歯乳頭組織、歯根膜、口腔粘膜組織よりRNAを抽出してRT-PCRを行っところ、Nestin, CD44, Slug, Snail, Msx1の発現を認めた。また、組織学的評価では、NestinとCD44の共陽性領域を確認した。したがって、すべての組織には神経堤幹細胞用細胞が存在していることが示唆された。それらの組織から、初代培養を行い、すべてのサンプルから効率よく細胞を得ることに成功した。それらの増殖曲線ならびにコロニー形成能を検討し、それぞれの特徴を見出した。歯乳頭組織由来、歯根膜由来および口腔粘膜由来細胞は、Nestin, CD44共陽性細胞の存在を確認し、これらは間葉系幹細胞マーカーであるCD29, CD73, CD90は陽性、造血細胞マーカーであるCD34, CD45は陰性であった。これらの細胞を、われわれが確立した顎口腔領域の神経堤幹細胞用細胞の分離方法である無血清培地下にb-FGFとEGFを添加させ、浮遊培養するNeurosphare法を用いてSphere形成細胞を得た。3種類の組織由来のSphere形成細胞は細胞形態、Sphere細胞塊は肉眼的には区別することはできなかった。マイクロアレイ解析の結果、それぞれに特徴的な遺伝子の発現を見出した。3種類のSphere形成細胞を神経堤細胞系統である骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞、平滑筋細胞および神経細胞系統へと分化誘導し、すべての系統への分化能を確認した。3組織間で発現の異なる遺伝子はそれぞれの組織を決定できる鍵となる可能性があるため、今後これらの遺伝子の発現に関して詳細に検討する予定である。さらに、分化誘導の結果、それぞれの組織において分化しやすい系統があることが判明し、分化能に関しても定量解析を行っていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成29年度で明らかになった各組織由来のSphere形成細胞の発現遺伝子の違いを明らかにする。また、in vitroでの分化能の定量解析を行う。さらに、各組織由来のsphere形成細胞のin vivo組織再生能を評価する。
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Causes of Carryover |
年度内で効率的な実験遂行を行ったが、一部で平成29年度内に行うことができなかった実験があり、次年度使用額に相当する。したがって、平成30年度に充てることにより計画通り、効率的に研究が遂行できると考えたため。
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