2016 Fiscal Year Research-status Report
硬組織再生療法を併用した新規接着システムの臨床応用に向けた基礎的研究
Project/Area Number |
16K11645
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
大竹 志保 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (50549946)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野崎 浩佑 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (00507767)
吉田 恵一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (60240280)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 接着 / 歯科用接着材 / サンドブラスト / マイクロテンサイル |
Outline of Annual Research Achievements |
歯科治療の多くは,う蝕や歯周疾患など,口腔内の細菌感染により生じる硬組織(歯・歯槽骨)疾患を対象とする.う蝕は歯の構成要素であるエナメル質や象牙質が,口腔内細菌により産生された酸により脱灰され,さらに象牙質ではTypeIコラーゲンに代表される有機成分が分解されることにより,歯牙の形態が保持できず,顎口腔機能や全身機能の低下を引き起こす.近年,高度に崩壊した象牙質の治療には,有機-無機複合材料を歯質に接着させることにより歯牙と生体材料を一体化させる支台築造法が幅広く臨床応用されているが,その接着力は基板となる象牙質の機械的物性や化学的組成などに依存することが報告されている.臨床上,口腔内細菌に感染したう蝕象牙質は回転切削器具を用いて除去するが,健全な象牙質の過剰な切削を予防する為に,う蝕検知液を用いてう蝕象牙質を染色し,染色状況をランドマークとして切削を行う.しかしながら,う蝕検知液による方法は,象牙質に感染は認められないが,脱灰された非感染の象牙質は除去しないため,象牙質の機械的物性の低下が危惧される.我々は,強固な接着を確実にする臨床手法の確立を目的とし,基板となる象牙質の硬さに注目し,その接着に及ぼす影響を検討したところ,う蝕検知液をランドマークとした際には,有意に接着力が低下するが,脱灰象牙質を除去することにより健全象牙質と同等の接着力が発揮された.また,接着力の評価には引張り試験が幅広く用いられいているが,象牙質の象牙細管による部位特異的な影響を考慮する為に,評価用試料を角柱状に加工し評価するマイクロテンサイル法が有効とされている.本年度はマイクロテンサイル法による試料評価方法の確立と,接着強さの評価を行った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CAD/CAM用レジンブロックに対する試作プライマーK5D-01を用いた新規レジンセメントシステムの引張接着強さの検討、およびサンドブラスト処理後の経時変化がCAD/CAM用レジンブロックとレジンセメントの接着強さに与える影響について検討した。被着体にはCAD/CAM用レジンブロックであるエステライトブロック(トクヤマデンタル、ES)とHCブロック(松風、HC)を用い、 接着性レジンセメントはエステセム(トクヤマデンタル)、 表面処理材はユニバーサルプライマー(トクヤマデンタル、UP)、試作プライマーK5D-01(トクヤマデンタル、EP)を使用した。 接着表面はサンドブラスト処理(0。1MPa、10秒)を行い、 サンドブラスト後の時間条件(サンドブラスト直後、 または一週間後)と重合条件(光重合、 または化学重合)にてセメント条件毎に4群に分けて接着処理を行い、37℃24時間水中保管後に引張接着強さを測定した。その結果サンドブラスト処理後の時間経過に伴いCAD/CAM用レジンブロックの接着強さは化学重合において低下することが示された。 新規加圧成形型セラミックスに対する接着性レジンセメントの引張接着強さについて比較検討を行った。被着体には新たに開発されたプレス用リチウムシリケートガラスセラミックス(イニシャル LiSi プレス、ジーシー)を使用し、接着性レジンセメントとして、Panavia V5(クラレノリタケデンタル、以下PV)、リライエックスアルティメットセメント(3M ESPE、以下RU)、ジーセムリンクフォース(ジーシー、以下GL)を用いた。PV、GLはRUと比較して有意に高い値を示した。以上のように今年度は,機械的物性の評価方法を確立することができた.
|
Strategy for Future Research Activity |
あ近年,ナノ構造のリン酸カルシウムを用いたエナメル質の再石灰化の有効性が注目されているが(,う蝕象牙質への応用しその接着に及ぼす影響は明らかとなっていない.また,ナノリン酸カルシウムは,再石灰化能だけでなく,ドラッグデリバリーシステム(DDS)の臨床応用も期待されている.DDSは体内の薬物分布を量的・空間的・時間的に制御する薬物伝達システムであり,ナノリン酸カルシウムに各種薬剤を担持し適応部位に集約・徐放することが可能である.ナノリン酸カルシウムに機能性薬剤を担持させ,う蝕象牙質に応用することにより,抗菌効果の発現や接着機能の向上が期待されている.リン酸カルシウムの中でも象牙質やエナメル質の無機主成分とされている炭酸含有アパタイト(CA)の作製を次年度以降行う.CAの作製は,出発物質としてリン酸二ナトリウム,硝酸カルシウム,炭酸ナトリウムを用いる.カルシウム/(リン+炭素)比が1.67になるように調整した後に,混合,撹拌,熟成し乾燥させる.リン/炭素比を調整することにより炭酸含有量を調整することが可能であり,我々は予備的研究によりCA粉末を得ている(図3).作製したHApおよびCA粉末は,結晶構造をX線回折(XRD)(図3),炭酸含有量をフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)(図4,次ページ),形態を走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM),粒子径および分布を粒度分布計にて解析を行う.また,被験歯の評価を以下のとおり行う.すなわち,象牙質に齲蝕検知液を用いながら感染象牙質、もしくは非感染の脱灰象牙質を除去する。その後,各ステージの象牙質の無機成分の結晶構造(XRD)や機械的強度(ビッカース硬さ試験),有機成分の変性(FT-IR),表面微細構造(SEM),残存するMMPの定量(Western-blot),MMPの局在(組織学的解析)などの解析を行う.
|
Causes of Carryover |
未使用額が生じた理由は,天然歯を用いた実験が一部出来なかったため、残額が生じた.次年度は,天然歯を用いた実験が開始されるため未使用額については次年度研究費と併せて使用する計画である.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額と次年度使用額を併せて以下の項目に関して使用する予定である.①研究成果発表のための旅費(国内会議,国際会議)②試料作製に必要な薬品,消耗品の購入
|
Research Products
(5 results)