2016 Fiscal Year Research-status Report
交感神経活動の変化が慢性咀嚼筋障害の治療効果や筋病理・筋活動に及ぼす影響
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16K11669
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
佐藤 淳 北海道大学, 歯学研究科, 講師 (60319069)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 善政 北海道大学, 歯学研究科, 教授 (00224957)
大賀 則孝 北海道大学, 歯学研究科, 助教 (40548202)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 咀嚼筋 / 自律神経 / 交感神経 / 副交感神経 / 口腔顎顔面痛 / 慢性疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔顎顔面疼痛 (Oro-Facial Pain; OFP) 患者さんの数は増加している。顔面の疼痛が慢性化すると様々な心身的障害を訴え、QOLの低下、個人Identityの喪失に繋がり対応に苦慮する。OFPが慢性化して増悪するメカニズムには感覚神経・中枢神経系のみならず交感・副交感神経活動や心因的要因の関与が示唆されているが、充分解明されていない。 臨床での自律神経活動の評価方法には血中ストレスホルモンの測定、サ-モグラフィ-による皮膚温の測定などがあるが再現性に乏しく評価方法も難しい。当施設では「心拍のゆらぎ」を利用した周波数解析により歯科外来で患者さんに負担をかけることなく、交感神経活動の評価を行う方法を確立している。 1年間以上持続する舌痛症、非定型歯痛、非定型顔面痛などの慢性顎顔面疼痛を有する外来患者さん(OFP群;5例)および外来に勤務する慢性の顎顔面疼痛を有さない医療従事者(コントロ-ル群;10例)の自律神経活動を測定した。性別は男性;10例、女性;5例、年齢は28歳~69歳(中央値;51歳)であった。心拍数は65-105 (中央値;77)、低周波数帯域;(Low Frequency; LF, 0.04-0.15Hz)は19.0-1474.0(中央値;215.5)、高周波数帯域;(High Frequency; HF, 0.15-0.5HHz)は4.3-566.9,(中央値;88.5)であった。OFP群とコントロ-ル群とで比較すると、副交感神経活動の指標であるHF値の中央値はOFP群がコントロ-ル群より有意に低く(215.7 vs,25.2, P = 0.005)、OFP群では副交感神経活動が低下している可能性が示された。一方交感神経活動の指標であるL/Hの中央値はOFP群:6.3, コントロ-ル群:2.1であったが、有意差はなかった(P = 0.07)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
自律神経活動の計測がボランティアおよび少数の慢性顎顔面疼痛を有する外来患者さんにとどまっている。自律神経活動の測定には心電図を用いるが、当施設で開発した測定機器は胸部をあけることなく、左右の上肢にセンサ-クリップを取り付けるのみの簡便な機器・方法である。自律神経活動の測定自体は患者さんの負担はほとんどないと考えられ、数分間で行えるものである。しかし時間的・空間的の制限が予想以上に存在した。また自律神経活動は日内変動があり、測定時間を一定の時刻に限定することが望ましいと考えるが、外来診療の中で決められた時刻に研究目的の測定を行う困難さを感じた。しかし少数例ながら測定方法や評価の方法は安定して行えることは確認できた。また少数例にもかかわらず、「慢性疼痛患者さんでは副交感神経活動が抑制されている可能性がある」という仮説を裏付ける結果が得られたことは研究の方向性の正しさを示すものと考えている。 今年度の初めに周波数解析との比較として、サ-モグラフィ-による顔面皮膚温の測定による自律神経活動の測定を繰り返し試みた。しかし画像解像度が低く、比較・評価に値する画像が得られず断念した。
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Strategy for Future Research Activity |
外来診療における時間およびスペ-スが予想以上にタイトであることがわかり、患者さんへの本研究内容の説明や研究参加への同意を得る時間が十分に確保できなかった。結果として、当初の予想以上に慢性顎顔面患者さんの本研究への組み入れができなかった。今年度に行えた少数例のみの自律神経活動測定でも慢性の顎顔面疼痛患者さんにおいては「副交感神経活動が低下している可能性がある」という仮説を裏付ける結果が得られた。しかし計測のデ-タをみると、年齢や個人でのHF値, LF値 などの自律神経活動の指標デ-タにばらつきが大きかった。まずは症例数を増加することにより、その測定間の「ばらつき」の影響を少なくする必要がある。来年度は1週間に1-2日の午前中に「自律神経測定」のための診療枠を設定して、確実に症例数を増加させるように工夫する。また研究分担者にも患者さんのリクル-トを積極的に呼びかけてもらうようにする。 OFP患者さんとコントロ-ル群の比較のみでなく、個人における治療効果を考慮した経時的な自律神経活動の変化の評価も加えて行っていく。 症例の積み重ねにより生じた結果を積極的に国内・国外学会で発表するとともに、論文発表の準備を開始する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究計画に挙げていた慢性顎顔面疼痛患者さんおよびコントロ-ル群の唾液採取を行い一部を冷凍保存している。サイトカイン、ストレスタンパクなどの唾液分析に使用する消耗品、試薬などの購入を次年度に回すことになり、使用額の一部を繰り越した。 自律神経活動測定の用いる機器のメインテナンスが必要となり次年度以降に使用できるように予算の一部を繰り越した。 また、周波数解析のデ-タの解釈における研究資料の採集や打ち合わせ、論文作成にあたる英文校正、掲載料の確保目的に一部の使用額を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き、自律神経活動の測定を行う症例数を増加させ、唾液分析などにかかわる試薬、器材、消耗品などの購入に使用する。 自律神経活動に使用している心電図、センサ-、PC,解析ソフトのメインテナンス、更新に使用する。 次年度の前~中期に出ると考えている研究の途中経過および結果について国内、国外学会で発表して、今後の研究方向の指南を再確認する。
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[Presentation] Relationships between FMISO- and FDG-PET parameters including hypoxic volume of the tumor and prognosis in patients with oral squamous cell carcinoma after surgery2016
Author(s)
Sato, J, Kitagawa, Y, Watanabe, S, Kenji H, Okamoto, S, Noritaka, O, Asaka, T, Miyakoshi, M, Hata, H, Shiga T, Shindoh M, Tamaki N
Organizer
Annual Congress of the European Association of Nuclear Medicine
Place of Presentation
バルセロナ・コンベンションセンタ-、スペイン,
Year and Date
2016-10-18 – 2016-10-19
Int'l Joint Research
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