2017 Fiscal Year Research-status Report
顎骨骨髄炎における分子イメージングと炎症性サイトカインによる革新的診断・治療戦略
Project/Area Number |
16K11671
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Research Institution | Hokkaido Cancer Center(Department of Clinical Research) |
Principal Investigator |
秦 浩信 独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター(臨床研究部), 臨床研究部, 歯科口腔外科医師 (70450830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北川 善政 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (00224957)
大賀 則孝 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (40548202)
佐藤 淳 北海道大学, 歯学研究院, 講師 (60319069)
宮腰 昌明 北海道大学, 大学病院, 助教 (90614933)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 顎骨骨髄炎 / 骨シンチグラフィ / SPECT解析 / 炎症性サイトカイン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、顎骨骨髄炎の炎症像を、複数のパラメーターを用いてモニタリングし、総合的かつダイナミックに局所の状態を判断することで、客観的かつ普遍的な状態の病期(stage)判定基準を確立することであり、①3phase骨シンチグラフィの定量的評価、②FDG-PET、③唾液を用いた炎症性サイトカイン評価、という三位一体研究である。当研究グループの平成28年度から2年間の研究実績を報告する。 株式会社AZE製の骨SPECTシンチグラフィ解析ソフトウェアである、GI-BONEを購入し、顎骨骨髄炎患者のTc集積値について定量解析をおこなった。対象は2008年7月~2014年9月に北海道大学口腔診断内科を受診した骨髄炎患者であり、全例高気圧酸素療法の前後に骨SPECTシンチグラフィを撮像した15例である。これまでの研究成果は、第71回日本口腔科学会学術集会、第27回日本口腔内科学会/第30回日本口腔診断学会学術集会(ランチョンセミナー)、第33回日本診療放射線技師学術大会(ランチョンセミナー)にて発表した。またゾレドロン酸長期使用の前立腺癌の右下顎骨髄炎患者の消炎治療効果を3時点でSPECT骨シンチグラフィーを撮像し、GI-BONEで解析した結果を「骨SPECT定量解析ソフトウェアにより顎骨骨髄炎のモニタリングを行った1例」として症例報告を現在論文投稿中(日本口腔科学会誌)である。共同研究者の大賀らは歯周ポケット4mm以上の歯周炎に罹患しておらず、口腔粘膜疾患を有していない健常者10名における血清と唾液中サンプルの解析を行い、サイトカイン量を測定し現在論文投稿中である(Oral Science in Japan)た。またMRONJのstage3の患者で、下顎骨区域切除+プレート再建術前後でCBA法により炎症性サイトカインを経時的に測定した。結果として、唾液中のIL-6が手術後に減少する傾向がみられた。現在骨髄炎患者のサンプルについても解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北海道大学病院の症例15例について後方視的研究により高気圧酸素療法20回の前後(概ね1か月)という短期間においても骨SPECTシンチグラフィ解析ソフウェアを用いることで集積強度や集積範囲の変化を比較することが可能な事が判明した。また、本研究の副次的な知見として、骨吸収抑制剤の使用期間と正常骨(頭頂骨)の集積値に相関性示唆する結果が得られ解析を進めている。また、北海道がんセンターではゾレドロン酸長期使用の前立腺癌の右下顎骨髄炎患者の消炎治療効果を3時点で骨SPECTシンチグラフィを撮像し、GI-BONEにて解析を行ったところ、SUVmaxが漸減し、なおかつMBVも測定不能になるまでTcの集積変化を追跡することができた。(日本口腔科学会誌に投稿中である)また骨髄炎の治療効果評価方法として炎症強度のみならず炎症範囲としてMBV(Metabolic Bone Volume)集積体積(cm3)を測定するための閾値の設定について、検討を行った結果絶対値法による閾値設定よりも相対値法による閾値設定がより臨床に則していることが判明した。 炎症性サイトカイン測定にあたっては50 μlの唾液から同時に7種類の分子を検索できるBD社製のCytometric bead array kitを使用し、 健常者10名における血清と唾液中サンプルを用いてIFN-γ、 TNF-α、 IL-4、5、6、10、17Aを計測した。サンプルの蛍光強度をフローサイトメーターFACS Aria-2を用いて計測した。濃度既知のstandard希釈液から算出したstandard curveをもとに、 FCAP Array softwareにてサイトカインの濃度を算出した。小量の唾液・血液中からCBA法でサイトカインが検出できることが判明し、健常者の血液と唾液のサイトカインの解析方法を確立した。
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Strategy for Future Research Activity |
我々の研究は、これまで客観的な指標がなかった顎骨骨髄炎に対する診断、評価、モニタリング方法に新たな方向性を示すものである。これまでの研究結果をまとめ第58回日本核医学会学術総会にて発表を行うと同時に、現在英語論文での投稿準備を進めている。また、SPECT骨シンチグラフィは我々が設定したGI-BONEによる顎骨髄炎の評価方法の普遍性及び汎用性を明らかにするために、SPECT骨シンチグラフィを所有する他施設との共同研究をすすめていく必要がある。共同研究が可能な施設について調査を行っている。また骨シンチグラフィが顎骨骨髄炎の診断、評価、モニタリングのゴールドスタンダードとなり得るのか、炎症性サイトカインと詳細な比較検討を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
昨年度、学会発表は道内で開催された学会が多かったため 当初計上していた 予算よりも旅費の支出が少なくて済んだため次年度使用額が生じた。最終年度は国際学会並びに英語論文発表のために予算を計上している。
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