2018 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍による顎骨吸収の分子機序:RANKL遺伝子発現調節を軸とした解析
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16K11682
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
相川 友直 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (00362674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮川 和晃 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (50635381) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 破骨細胞 / RANKL / TGF-beta / 顎骨吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍による骨吸収の分子メカニズム明らかにするために、腫瘍細胞が産生するサイトカインと間質線維芽細胞の相互作用に焦点をあて、破骨細胞活性化因子RANKLの発現調節機構と破骨細胞活性化機序を検討した。 顎骨歯原性腫瘍において、1)腫瘍でのTGF-bとIL-1aの発現と間質線維芽細胞でのRANKL発現を観察した。2)TGF-bとIL-1aは間質線維芽細胞のRANKL発現を相乗的に誘導した。3)TGF-bはIL-1aによる間質線維芽細胞のCOX2発現とPGE2合成を促進し、RANKL発現誘導に関与したが、 IL-1aはTGF-bシグナル伝達の活性化に影響しなかった。4)ヒトRANKL遺伝子のプロモーター領域を含むレポーターアッセイで転写制御を検討した結果、間質線維芽細胞でTGF-b刺激はRANKLプロモーター活性を促進したが、骨芽細胞での刺激は抑制した。細胞種によってRANKL遺伝子発現調節が異なる可能性が示唆された。 扁平上皮癌による骨浸潤・骨吸収での間質線維芽細胞とRANKL発現を検討するためにマウス骨吸収モデルを作成した。マウス扁平上皮癌細胞株 SCCVIIから二つの亜株を選択し、腫瘍を頭蓋骨に移植するマウスモデルを作成した。その結果、一方の細胞株は著明な破骨細胞形成と骨破壊をきたし、もう一方は破骨細胞形成に乏しく圧迫型の骨吸収と骨形成をきたす異なる2種類の骨吸収像を模倣した。この二つの細胞株の遺伝子発現、細胞特性を比較した結果、著しい破骨細胞形成をきたす細胞株の有意にTGF-b, IL-6, RANKL発現は高かった。TGF- bはIL-6と相加的に間質線維芽細胞株 ST-2細胞のRANKL発現を上昇させた。また、マウスモデルでの破骨細胞形成と骨破壊はTGF-b阻害剤で抑制された。腫瘍による骨破壊・骨吸収にTGF-bを軸としたRANKL誘導機序があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年6月の大阪府北部地震により、当該研究室の研究機器(CO2インキュベーター)の破損が起こり、実験中の細胞を全て失った。施設と設備復旧後、細胞株を用いた実験に関しては凍結保存細胞を用いて再開できたが、細胞株以外の初代細胞株に関しては再実験が必要となり研究の再開と遂行に時間を要した。このため、成果発表の論文投稿、学会発表が次年度にずれ込むことになった。 研究補助金をより合目的に使用するために、研究期間の延長が必要となったものの、上記の中断期間に扁平上皮癌細胞株を用いた実験とマウス実験モデルの作成に時間を使用することができたため、全体としてはおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
RNAKL遺伝子の発現調節の分子機序の解析、腫瘍細胞、間質線維芽細胞およびHEK293細胞を用いて、TGF-b刺激によるRANKL遺伝子プロモーター活性化を指標に、RANKL遺伝子発現調整の解析を予定している。 腫瘍、とくに扁平上皮癌による骨吸収と骨破壊は複雑な腫瘍・宿主応答で成り立っている。本研究期間内に作成したマウス実験モデルは同一由来細胞株の二つの細胞株をマウス頭蓋骨上に移植することで骨吸収・骨破壊を検討できる。一方の細胞株は著しい骨破壊をきたし、もう一方の細胞株は圧迫型骨吸収をきたす、つまり、臨床で見られる二つのタイプの骨吸収像を模倣できるモデルである。このマウス実験モデルを組織学的に、生化学的に病態を解析することで、in vitroで得られた知見とin vivoでの現象の妥当性を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
2018年6月の大阪府北部地震により、当該研究室の研究機器(CO2インキュベーター)の破損が起こり、実験中の細胞を失った。設備復旧後に細胞株を用いた実験に関しては、凍結保存細胞を用いて再開できたが、細胞株以外の初代細胞株に関しては再実験が必要となり研究遂行に時間を要したため、余剰金が発生した。研究資金を合目的に使用するために、追加実験を待って成果発表の論文投稿、学会発表を2019年度に行うことに計画変更した。
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[Journal Article] Tumor budding and adjacent tissue at the invasive front correlate with delayed neck metastasis in clinical early-stage tongue squamous cell carcinoma.2019
Author(s)
Yamakawa N, Kirita T, Umeda M, Yanamoto S, Ota Y, Otsuru M, Okura M, Kurita H, Yamada SI, Hasegawa T, Aikawa T, Komori T, Ueda M
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Journal Title
J Surg Oncol.
Volume: 119
Pages: 370-378
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] A Multicenter Retrospective Study of Elective Neck Dissection for T1-2N0M0 Tongue Squamous Cell Carcinoma: Analysis Using Propensity Score-Matching.2019
Author(s)
Otsuru M, Ota Y, Yanamoto S, Okura M, Umeda M, Kirita T, Kurita H, Ueda M, Komori T, Yamakawa N, Kamata T, Hasegawa T, Shibahara T, Ohiro Y, Yamashita Y, Noguchi K, Noguchi T, Karakida K, Naito H, Aikawa T, Yamashita T, Kabata D, Shintani A.
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Journal Title
Ann Surg Oncol.
Volume: 26
Pages: 555-563
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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