2016 Fiscal Year Research-status Report
早期に癌化する白板症を生検時に確実に判定し見逃さない
Project/Area Number |
16K11701
|
Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
恩田 健志 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (30433949)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 口腔白板症 / 口腔扁平上皮癌 / 前癌病変 / 癌化 / バイオマーカー / PDE5 / SIRT1 |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔白板症は、前癌病変であり、その癌化率は、わが国では3.1-16.3%とされる。癌化のメカニズムの詳細は不明である。本研究は、これまでに行ってきた口腔扁平上皮癌のバイオマーカーに関する研究を発展させて、白板症の癌化メカニズムを解明し、白板症の診断、予後の判定と治療方針の決定、治療方法の開発等、臨床へ応用することが目的であった。 口腔白板症症例の生検時切除標本を口腔白板症の確定診断後、5年以上経過観察が可能で、5年間癌化しなかった群(第1グループ(G1))と口腔白板症の確定診断後、5年以内に同部位から癌化が認められた群(第2グループ(G2))の2グループに分けて、これまでに研究代表者がリストアップしてきた口腔扁平上皮癌関連バイオマーカー候補のうちPDE5とSIRT1の2種類のターゲット分子についてモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色を行い、口腔白板症における発現量を解析した。また、G1とG2群におけるそれぞれの発現量と、臨床指標を比較検討した。 正常口腔組織と比較して、G1群のPDE5タンパク質発現量に著変は認められなかったが、G2群の発現量は高発現を示す症例が多い傾向であった。また、口腔扁平上皮癌組織のPDE5発現量は高発現を示す症例が多かった。発現亢進と臨床指標との間に統計学的有意な相関は認められなかった。 一方で、正常口腔組織と比較して、G1群およびG2群のSIRT1発現量に著変は認められなかったが、口腔扁平上皮癌組織のPDE5発現量は低発現を示す症例が多かった。PDE5の解析結果からPDE5タンパク質高発現の白板症は癌化する可能性が示唆された。また、白板症のSIRT1発現低下と癌化との関連が示唆された。今後、候補分子を増やし、また、症例数を増やして継続して解析を行っていく予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究では、これまでに科研費による研究で、研究代表者がリストアップしてきた口腔扁平上皮癌関連バイオマーカー候補についてモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色を行い、口腔白板症における発現量を解析することにより白板症の癌化メカニズムを解明することが目的であった。正常口腔組織(舌)、白板症組織(舌)、口腔扁平上皮癌組織(舌)についてPDE5とSIRT1の2種類の候補タンパク質について免疫組織化学染色法によりそれぞれの発現量と発現状態を解析できた。また、それぞれの組織における発現量と、臨床指標を比較検討し、口腔白板症の癌化に関するリスクファクターの検出を検討できた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、前年度解析した実験内容に引き続き、バイオマーカー候補分子を増やして免疫組織化学染色を行い、生検時の臨床検体を用いた白板症の予後の判定方法の確立と治療方針の決定方法を樹立することを目指す。また、PDE5およびSiRT1については、正常口腔組織(切除マージン部:舌)、白板症組織(舌)、口腔扁平上皮癌組織(舌)に対して施行した免疫組織化学染色法の症例数を増やして検証を行っていく予定である。 その他、今年度からは、5年間癌化しなかった口腔白板症群(G1)と5年以内に同部位から癌化が認められた群(G2A)を蛍光標識二次元電気泳動法(2D-DIGE)を用いて網羅的にタンパク質発現解析を行い、白板症の癌化メカニズムを分子レベルで解明し、白板症の診断、予後の判定と治療方針の決定、治療方法の開発等、臨床応用への発展を試みる。
|
Causes of Carryover |
平成28年度は、これまでに科研費による研究で、研究代表者がリストアップしてきた 167 種類の口腔扁平上皮癌関連バイオマーカー候補の中から、いくつかの候補分子を絞って、モノクローナル抗体を用いた免疫組織化学染色を行い、口腔白板症における発現量を解析する予定であった。正常組織、白板症組織、扁平上皮癌組織における抗体の条件設定に時間を要し、本年度はPDE5とSIRT1の2種類のバイオマーカー候補の発現解析を施行するに留まった。また、免疫組織化学染色法の評価方法について、これまでに我々が行っていた人為的な作業による半定量化から、解析ソフトをもちいて染色された細胞比率と染色強度を測定する定量的な評価を導入したのに際し、時間を要した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度解析した実験内容に引き続き、バイオマーカー候補分子の種類を増やして免疫組織化学染色を行い、生検時の臨床検体を用いた白板症の予後の判定方法の確立と治療方針の決定方法を樹立することを目指す。また、PDE5およびSiRT1については、正常口腔組織(切除マージン部:舌)、白板症組織(舌)、口腔扁平上皮癌組織(舌)に対して施行した免疫組織化学染色法の症例数を増やして検証を行っていく予定である。
|
Research Products
(11 results)