2017 Fiscal Year Research-status Report
新たな病原因子に着目した口腔カンジダ症発症・進行メカニズムの解明と治療法への展開
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16K11702
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
柴山 和子 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (60408317)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 和幸 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (00212910)
柴原 孝彦 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (50178919)
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Project Period (FY) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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Keywords | Candida albicans / 病原性 / バイオフィルム形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
Candida albicans は通常酵母形で存在しているが、環境に適応して菌糸形になり菌糸を伸ばすことによって強い病原性を発揮し、粘膜下組織まで達し重篤化する。カンジダの病原性発揮には菌糸型増殖がキーとなる。 病原真菌 Candida albicans に新規に見出した細胞表層タンパクをノックアウトした欠損株と野生株および補完株を用いて研究を進めた。本タンパクは、C. albicans の菌糸形増殖における栄養素獲得ネットワークに働く一連のタンパク群のファミリーメンバーであり、固有のモチーフ配列を共通して有するが、モチーフ自体の役割はいずれのタンパクにおいても解明されていない。 37℃における血清存在下での酵母形から菌糸形への形態スイッチングを経時的に評価した。菌糸形成誘導開始 1、3、5時間において、野生株と比較し欠損株ではスイッチングが各々約50、70、85%に留まっていたが、補完株では野生株と同様のスイッチング率に回復することを明らかにした。欠損株は血清を含む寒天番地上での増殖観察においても野生株および補完株と比較してコロニー径が小さく、襞が疎な形状を呈した。また、24時間培養時のバイオフィルム形成を XTT assay にて評価した。野生株と比較し欠損株ではバイオフィルム形成量が約50%であったが、補完株では野生株と同程度に回復した。 生体環境に類似した血清誘導条件における上記の実験から、細胞表層タンパクが C. albicans の菌糸形増殖へのスイッチングに重要な役割を担い、病原性発揮に関与することが裏付けられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
血清誘導下で C. albicans が酵母形から菌糸形へのスイッチングを経時的に評価したことにより、細胞表層タンパクが寄与する段階が明らかになった。C. albicans が病原性の強い菌糸形へ増殖形態を変える際のシグナル経路の探索途上である。 バイオフィルム形成への関与も明らかとなり、細胞表層タンパクの病原性への関与を強く裏付けるデータとなった。 本タンパクの固有モチーフ配列の欠損株構築については、引き続き、新たな選択マーカーやPCR技術の利用を試みる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
C. albicans の菌糸型へのスイッチングにおけるシグナル経路の解明を目指す。併せて、バイオフィルム形成に着目し、経時的な評価と共焦点レーザー顕微鏡を用いた形態的な観察を行う。さらに、口腔カンジダ症患者の臨床サンプルを用いた研究を加えることにより、口腔カンジダ症発症進行メカニズムの理解を、菌と宿主の両面へと展開する。
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Causes of Carryover |
効率的なサンプル調整のため冷却式細胞破砕装置の購入を初年度に予定していたが、次年度の購入とした。 (使用計画) 冷却式細胞破砕装置の購入および本年度から構築を試みている欠損株の作製に必要な物品費に充てる。
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