2017 Fiscal Year Research-status Report
顎関節炎症におけるインフラマソームと分子プロセス研究
Project/Area Number |
16K11704
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
近藤 壽郎 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (70178416)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小倉 直美 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (10152448)
伊藤 耕 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (20419758)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 顎関節滑膜細胞 / 顎関節内障 / フィブロネクチン分解産物 / DNA microarray / シグナリングパスウェイ解析 / シグナル伝達経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
培養ヒト顎関節滑膜細胞(滑膜細胞)にフィブロネクチン分解産物を作用させるとIL-6等の炎症性サイトカイン発現が上昇すること,フィブロネクチン分解産物のうち120kDaが最も作用が強いことを明らかにした。本年度は,滑膜細胞に120kDaフィブロネクチン分解産物を作用させ,網羅的遺伝子発現解析を行うとともに,シグナル伝達経路の検討も行った。【方法】本学倫理委員会の指針に従い,顎関節内障患者滑膜から out growth法で滑膜細胞を得た.滑膜細胞に120 kDaのフィブロネクチン分解産物を作用させた。RNeasy Mini kitを用いてtotal RNAを抽出した。網羅的遺伝子発現解析は,Agilent SurePrint G3 HG Expression 8x60K v2 Microarrayおよび発現解析ソフトGeneSpringを用いた。また,遺伝子発現量はreal time-PCR法で測定した。タンパク質量は ELISA kitで測定した。シグナル伝達経路はキナーゼ阻害薬を用いて検討した。【結果および考察】滑膜細胞のマイクロアレイ解析の結果,測定した約45,000遺伝子中120 kDaのフィブロネクチン分解産物のよって発現変動したのは約1,200遺伝子であった。発現上昇した遺伝子群の上位には,IL-6の他にケモカイン遺伝子群が多く認められた。キナーゼ阻害薬を用いた実験から,120 kDaのフィブロネクチン分解産物は,滑膜細胞のインテグリンレセプターやToll like receptorを介して,NFκBを活性化することによってIL-6発現を上昇させることが示唆された。顎関節の炎症亢進には,細胞外基質分解酵素によって分解されたフィブロネクチン分解産物が滑膜細胞を刺激し,刺激を受けた滑膜細胞が炎症性サイトカイン産生を上昇することが関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
十数名の患者から顎関節滑膜組織を採取し,滑膜細胞の分離・培養を行っており,実験に使用可能な滑膜細胞の例数は増えている。昨年度,滑膜細胞に30 kDa, 45 kDaおよび120 kDaのフィブロネクチン分解産物を作用させ,IL-6およびIL-8遺伝子発現およびタンパク質産生が上昇することを明らかにした。今年度は,最もIL-6 およびIL-8発現を上昇させた120 kDaの分解産物を選択し,滑膜細胞に作用させてtotal RNAを抽出し,このtotal RNAを用いて網羅的な発現解析を進めている。また,滑膜細胞における120 kDaフィブロネクチン分解産物によるシグナリングパスウェイ解析を行うとともに,シグナル伝達経路のキナーゼ阻害剤を用いて,滑膜細胞における120 kDaフィブロネクチンシグナル伝達経路の検討も行っている。さらに,30kDaフィブロネクチン分解産物も滑膜細胞のIL-6やIL-8の遺伝子発現およびタンパク質産生を上昇させる。そこで,30kDaフィブロネクチン分解産物のレセプターやシグナル伝達経路についても検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
顎関節においては感染性関節症は稀であり,顎関節の炎症病態は非感染性であると考えられる。代謝された組織物質や壊死細胞由来の物質が炎症を引き起こす可能性が示唆されている.本申請の今までの研究結果から,滑膜組織の細胞外基質の1つであるフィブロネクチンの分解産物が滑膜細胞の炎症性因子産生上昇を引き起すことが明らかとなった。今後は,フィブロネクチン分解産物によって引き起された炎症がどのような経過をたどるのかを検討することを計画している。120 kDaフィブロネクチン分解産物を滑膜細胞に作用させ,経時的にtotal RNAを抽出してDNA microarrayを行う。滑膜細胞が長時間120 kDaのフィブロネクチン分解産物にさらされることによって,どのような因子が発現変動するかを検討する。また,フィブロネクチン分解産物以外の内在性の起炎物質,インフラマソーム活性化因子の検討も引き続き行う。 一方,顎関節滑膜炎では,滑膜細胞とマクロファージ等の免疫担当細胞間での相互作用も重要と考えられる。そこで,炎症性シグナル・クロストークおよび分子プロセスを明らかにする一環として,滑膜細胞とマクロファージの共培養系で遺伝子発現解析およびシグナリングパスウェイ解析を行う。 以上の実験から,滑膜炎の分子プロセスを構築することによって,顎関節の慢性炎症機序を明らかにすることを目的とする。さらに,病態関連因子を標的とした治療薬の検討も行う。 一方,顎関節滑膜炎では,滑膜細胞とマクロファージ等の免疫担当細胞間での相互作用も重要と考えられる。そこで,炎症性シグナル・クロストークおよび分子プロセスを明らかにする一環として,滑膜細胞とマクロファージの共培養系で遺伝子発現解析およびシグナリングパスウェイ解析を行う。 以上の実験から,滑膜炎の分子プロセスを構築するとともに,病態関連因子を標的とした治療薬の検討を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)本年度は,120 kDaフィブロネクチン分解産物を作用させた顎関節滑膜細胞のDNAマイクロアレイ解析は,作用時間が4時間のみであり,DNAマイクロアレイを行ったサンプル数が少なかったため。 (使用計画)DNAマイクロアレイ解析結果をもとに,注目した炎症性因子の遺伝子発現測定のためのreal time-PCR用試薬や,タンパク質量測定のためのELISA kit購入に使用する。また,顎関節滑膜細胞の培養器具および培地の購入に使用する。
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Research Products
(5 results)