2016 Fiscal Year Research-status Report
生体モデル膜および培養細胞における全身麻酔薬の作用部位に関する研究
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16K11740
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
渋谷 真希子 北海道大学, 歯学研究科, 助教 (30399951)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 幸文 北海道大学, 大学病院, 講師 (00292037)
長谷 由理 北海道大学, 大学病院, 助教 (20626121)
藤澤 俊明 北海道大学, 歯学研究科, 教授 (30190028)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生体モデル膜 / 全身麻酔薬 / 作用機序 / 核磁気共鳴 / リポソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、全身麻酔薬は生体膜の脂質の構造変化を引き起こし、その結果として、生体膜に存在するタンパク質の構造や機能が変化して麻酔作用が発現するという申請者らの仮説を検証することであり、過去の研究成果をベースに、1)リポソームを生体膜モデルとした系でイソフルランを用いて得られた結果が吸入麻酔薬全般に適用可能なのかの検討、2)電子スピン共鳴スペクトルに対する作用から得られた吸入麻酔薬と静脈麻酔薬のリポソームに対する作用の相違に関して、核磁気共鳴スペクトルの測定及びNa,K-ATPaseに対する作用からの検証、3)神経系細胞において重要な機能を担うNa,K-ATPaseをモデルとして、その分子構造やイオン輸送機能に及ぼす麻酔薬の影響の検証、4)培養細胞を用いた、膜タンパクの機能に対する麻酔薬の作用の検証、を行うことである。本年度は1)を確認するにあたり、生体膜モデルとしてより生体に近い単層のリポソーム(LUV)と、作製が容易な多重層のリポソーム(MLV)で測定結果に相違があるか確認した。過去の研究で実績のあるイソフルランを用いたところ、LUVとMLVで結果に相違なく、モデル膜が多重層である弊害はないと考えられた。そこで、MLVをモデル膜として上記2)の検討を行った。麻酔薬としてセボフルランを用い、リポソーム中に組み込んだスピンラベル剤5-DSAと16-DSAに対するセボフルランの影響を調べた。19F-NMRスペクトルの1/T1および1/T2値はスピンラベル剤との相互作用によって著しく大きくなり、その程度は5-DSAの方が大きかった。これは、麻酔薬分子とモデル膜の比較的表層にある5-DSA中のラジカルの位置が、深部に位置する16-DSA中のラジカルより近接していることを示しており、セボフルランも「麻酔薬はモデル膜の表層に位置する」という従来の研究代表者らの結果を裏付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
実験計画当初、研究室にドラフトチャンバーを導入する予定であったが、排気経路を構築するために、予測を大幅に上回る予算が必要との試算がでた。排気経路を当初の予定と変更させ、施設内で使用していなかった排気経路を活用するなどの策を講じようとしたが、予算内に収めることが出来ず、さらに吸収剤が付属し、有害物質を含まない気体のみを排気する装置設置を検討したが、学内の了承を得ることが出来ず、最終的には断念することになった。以上の件につき予想を遥かに上回る労力を必要としたため、本来の研究時間を削減せざるを得ず、研究着手まで時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
ドラフトチャンバーに関しては、排気を必要としない装置が開発されたとの情報を得たので、詳細を確認し、設置を検討すると同時に、施設内の他部署の実験スペースを借用することや揮発性の薬剤を使用しない静脈麻酔での実験を優先させるなどして遅れを取り戻す予定である。
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Causes of Carryover |
実験室環境整備に予想外の時間が取られ、本来の実験に着手する時間が十分に確保できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後は実験室環境整備も継続しつつ、当初の研究計画書に沿って実験計画を進めていく所存である。
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