2017 Fiscal Year Research-status Report
三叉神経領域の痛覚日内変動機構の解明 ‐効果的な時間薬物療法の確立に向けて‐
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16K11749
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
杉村 光隆 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (90244954)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真鍋 庸三 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 講師 (90248550)
遠矢 明菜 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (80593649)
是枝 清孝 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (20760614) [Withdrawn]
山下 薫 鹿児島大学, 附属病院, 医員 (50762613)
大野 幸 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, その他 (00535693)
岐部 俊郎 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 助教 (50635480)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 概日リズム / 三叉神経系 / 痛覚日内変動 / Cry1/Cry2 ノックアウトマウス |
Outline of Annual Research Achievements |
1990 年代以降、体内時計機構の研究の進歩とともに、痛覚の日内変動に関する報告がなされてきた。しかし、繊細な感覚機能が集積している口腔顔面領域を支配する三叉神経系に関するものは認められない。また、臨床上、当該領域における炎症性侵害受容性疼痛や神経障害性疼痛に対する薬物療法で、効果が十分得られない場合が散見される。そこで本研究「三叉神経領域の痛覚日内変動の解明-効果的な時間薬物療法の確立に向けて-」では、急性持続性疼痛の動物モデルを用いて、三叉神経支配領域の疼痛関連行動および侵害受容に関わるタンパク質の発現の日内変動を解析し、さらには日内変動を考慮した鎮痛剤の投与法(時間治療学的投与法)開発の可能性について検索することを目的としている。昨年度は、本研究を実施責任者の異動先で展開するための準備期間として要したが、今年度からは本格的に研究を開始した。 まず、時間生物学的な実験を行う上で、当研究室のみで単独使用できる動物室を確保し、厳密な光・温度・湿度条件の管理下にて、Cry1/Cry2 ノックアウトマウスを含む実験用マウスを維持できる環境を整備した。マウスを飼育する際の些細な環境の変化やイベント(暗期における光暴露や餌・水切れなど)が、マウスの生命活動全般にわたるリズムに影響を与えうるため、定時に疼痛評価を行う上で、これらの条件を厳密に管理することが実験の第一歩として必須だからである。その上で、学内研究会において「急性持続性疼痛の動物モデルを用いた、三叉神経支配領域における痛みの日内変動の解析」のタイトルで、今年度の研究成果発表を行った。さらに、関連する研究として、「三叉神経節における時計遺伝子発現」について解析後、三叉神経系における痛覚との関連を検討し、その成果を日本歯科麻酔学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は研究実施責任者の異動に伴い研究準備期間として要したため、研究開始が約1年遅れたが、今年度は本格的に研究を開始し、下記の成果について報告を行った。 1.「急性持続性疼痛の動物モデルを用いた、三叉神経支配領域における痛みの日内変動の解析」:まず、三叉神経第二枝領域における、侵害受容性疼痛モデルの作製、及び痛覚を定量化する測定系の確立を行った。10 週齢の雄性マウス(C57BL/6J Jms Slc、日本SLC)を実験ケージに1匹ずつ入れてしばらく馴らした後、用手的に左側上口唇(三叉神経第二枝領域)にホルマリン(5%、10μl)を皮下注射し、薬剤投与後45 分間、疼痛関連行動(PRB;pain-related behavior; lifting、biting、guarding、など)の行動回数や持続時間を評価した。また、そのマウスを灌流固定し、脳を取り出した後、凍結スライス切片を作成し、免疫組織化学染色によりターゲットタンパク(c-Fos)の発現動態を観察した。その結果、明期においてはホルマリン注射によって、疼痛関連行動が認められ、三叉神経脊髄路核尾側亜核において疼痛関連タンパクのc-Fosの発現を観察することができた。さらに、現在は同実験を暗期(マウスの活動期)で行うための環境設定を行っている最中である。 2.「三叉神経節における時計遺伝子の発現について」:時計遺伝子の1つであるPer2遺伝子の発現を、発光強度にて評価する方法がある。今回はこの手法を用い、三叉神経節における時計遺伝子発現の日内変動を検討し、三叉神経系における痛覚との関連を検討した。その結果マウスの三叉神経節において、時計蛋白PER2の発現には明瞭な日内変動が観察された。また、免疫組織化学法により、このPER2を発現しているニューロンは痛覚の伝達に関与するとされるCGRPと共存することも明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.暗期(マウスの活動期)における行動実験環境の確立:暗期における行動実験では、その遂行中に一切光暴露がない状態で行わないといけないため、暗視スコープ下でホルマリン注射を行う手技の確立や、赤外線照射下でのビデオ撮影が必要となる。そのため、まずは暗期における行動実験環境を整備し、手技を確立する。 2.対照マウスの痛覚日内変動の測定:データ採取は活動期(暗期)の0 時と休息期(明期)の12 時の2 点とし、ホルマリン(5%、10μl)またはホルマリン(0%、10μl)の2群に分け、各群8匹ずつとする。ホルマリン注射後、疼痛関連行動の総回数およびそれに要した総時間を、2 相(acute phase;0-10 分、tonic phase;10-45 分)に分けて記録する。その後、免疫組織化学染色によりc-Fos の同定および定量を行う。 3.時計遺伝子Cry1/Cry2ノックアウトマウスを用いた、痛覚日内変動の測定:Cry1/Cry2ノックアウトマウスを用いて、2.と同様の方法で行う。 4.対照マウス及びCry1/Cry2ノックアウトマウスから得られた結果を比較検討する。 5.以上の結果をまとめ、学会報告及び論文発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
【理由】今年度は、本研究に関連する学会参加のため、旅費の計上が多くなったが、これと並行して遺伝子組換えマウスの維持管理費や、遺伝型判定のための測定機器一式、免疫組織化学染色法によるタンパク同定および定量関連試薬、一般試薬、外科用処置セット、暗期での行動実験のための赤外線装置などを購入した。しかし、次年度も実験継続のために今年度と同等の維持費がかかると予想されるため、大型の機器は別予算から計上し、当該研究費は次年度分の実験継続のための資金として予算配分をしたことにより、次年度使用額が生じた。 【使用計画】今年度と同様、遺伝子組み換えマウスの維持管理費用の他、遺伝型判定のための測定機器一式、免疫組織化学染色法によるタンパク同定および定量関連試薬、一般試薬などを購入予定である。これらに加え、共同研究先との研究打ち合わせ、関連学会、勉強会などへの参加、さらには論文投稿料として使用する計画である。
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Research Products
(2 results)