2017 Fiscal Year Research-status Report
血管内皮層を覆うグリコカリックスの機能分析と周術期管理への応用
Project/Area Number |
16K11762
|
Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
飯島 毅彦 昭和大学, 歯学部, 教授 (10193129)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | グリコカリックス / 血管透過性 / TRALI / 抗白血球抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、グリコカリックス(GCX)の血管透過性の制御に関する検討を3つのアプローチにより遂行した。1)GCX消化酵素による血管透過性の検討:マウスにGCX消化酵素を投与し、肺における血管透過性の変化をFITCデキストランを用いて評価した。その結果、敗血症モデルでは観察されたFITCの透過性の亢進が、GCX消化のみでは観察されなかった。血管上皮培養系であるHUVECを用いて血管透過性を評価するEndohmによる測定でもGCXの消化のみでは透過性の亢進がみられないことが確認された。2)抗白血球抗体によるTRALI(輸血関連急性肺障害)モデルによる肺血管透過性亢進とGCXの検討:マウスに抗白血球抗体を投与し、TRALIモデルを作成した。白血球の集積とともに肺血管外水分量の増加、間質の浮腫を肺組織の生体内観察により確認した。3)抗白血球抗体によるTRALI(輸血関連急性肺障害)モデルを用いた超微構造の変化の観察:前項と同様のモデルを用いてGCX層の変化を電子顕微鏡で観察した。その結果、GCXの崩壊と肺血管外水分量の増加が同時に見られ、TRALIでみられる肺水腫はGCXの崩壊が関与していることが示唆された。さらにマクロファージを除いた実験系を設定し、観察したところ、肺血管外水分量の増加が抑えられることが示された。以上のそれぞれの結果をまとめるとGCXの崩壊は血管透過性亢進のための必要条件ではあるが、十分条件ではない。GCX崩壊に加えて血球系などからのシグナルが血管内皮細胞に伝わることにより血管透過性亢進につながるものと考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
順調に進んでおり、今後の成果も十分に期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在の研究を推進していき、以下の点を明らかにしたい。1)GCXの崩壊のみでは血管透過性亢進が起こらないことから、何らかのシグナルの入力が必要である。そのシグナルの候補を検討する。2)前項へのアプローチをするためGCX崩壊モデルと敗血症モデルの両者で遺伝子解析を行い、血管透過性亢進のための責任遺伝子を明らかにする。3)肺血管の生体内観察のモデルが確立しつつあるので安定した画像が得られるように改良し、定量解析ができるようにしていく。以上の方針でさらに研究を推進していきたい。
|
Causes of Carryover |
本年度では遺伝子解析も行う予定であったが、実際には次年度に行うことになった。そのため次年度使用額が生じた。
|
Research Products
(7 results)