2016 Fiscal Year Research-status Report
バソプレシン局所投与による血管収縮作用とリドカインの局在延長効果の検討
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16K11768
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
砂田 勝久 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (50171286)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | バソプレシン / 血管収縮薬 / リドカイン / 局所麻酔薬 / 歯科麻酔 / レーザードップラー血流計 / テイルカフ法 / 体性感覚誘発電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
循環器疾患を有する患者に安全に歯科治療を行うために、血管収縮作用を有するが心機能に影響を与えないバソプレシンをアドレナリンに変えて添加した局所麻酔薬の有用性について検討している。平成28年度はバソプレシンを局所投与した場合の血管収縮作用と血圧、心拍数に対する影響を測定し、次年度以降に行う麻酔増強作用の測定に適した濃度を決定する予定であった。そこでラットの口唇粘膜に0.01、0.02、0.03単位/mlのバソプレシンを投与し、レーザードップラー血流計を用いて口唇の血流量を測定した。また尾部に血圧測定用のカフを巻き、同被験薬を投与した場合の血圧と脈拍の変化を測定した。その結果0.03単位/mlバソプレシンおよび0.03単位/mlバソプレシン含有2%リドカインでは口唇血流量の有意な低下が認められた。一方、血圧と脈拍には有意な変化が生じなかった。そこで循環動態に影響を与えずリドカインの麻酔作用を増強するには0.03単位/mlのバソプレシンが適していると判断し、同被験薬を投与した場合の麻酔作用についての予備実験を行った。第一臼歯歯髄と口唇に刺激電極、三叉神経支配領域の第一次体性感覚野に相当する側頭骨骨膜下に測定電極を埋入し、2%リドカイン、0.03単位/mlバソプレシン含有2%リドカインを第一臼歯の口蓋に投与して体性感覚誘発電位を60分間測定した。その結果、0.03単位/mlバソプレシン含有2%リドカインは2%リドカインと比較して測定期間を通じて、有意に麻酔作用が低下していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では平成28年度はバソプレシンを局所投与した場合の血管収縮作用発現の有無、ならびに血管収縮作用を発揮するバソプレシン濃度が血圧と脈拍に与える影響について測定する予定であった。しかし同測定に用いる手技、手法をすでに当講座の別テーマの研究において経験済みであったことから、予想以上に順調にデータの取得が行えた。その結果、循環動態に影響を与えず麻酔作用を増強すると予想されるバソプレシン濃度は0.03単位/mlであると考えられた。そこで平成29年度以降に行う予定であった麻酔作用の測定の一部を、平成28年度中に行うことが可能となった。 以上より本研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
0.03単位/mlバソプレシン含有2%リドカインの麻酔作用は2%リドカインと比較して投与60分後も有意に低下していた。そこで同手技を用いて有意差が消失するまで測定を続け、0.03単位/mlバソプレシンを加えた場合の麻酔作用時間を正確に決定する。次に放射性同位元素でラベリングしたリドカインにバソプレシンを添加してラット口腔内に投与し、放射能量の変化から組織中のリドカイン動態にバソプレシンが与える影響を測定する。さらにオートラジオグラムを用いてリドカイン分布の継時的変化を視覚的にも明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
予想以上に研究が進み、当初の予定より多くのラットを使用することになった。そこで平成28年度に計上していた旅費、翻訳代などの経費を可能な限り削減した。その結果13,001円残となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度はラット購入費用に多くの経費が必要となり、平成29年度も同様の事態が生じる可能性が高い。そこで次年度使用額の13,001円はラット購入費用に充てる予定である。
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