2016 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネティック機構の破綻が顎顔面発生過程に与える影響
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16K11780
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
東堀 紀尚 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (50585221)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 起穂 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (20596233)
門田 千穂 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 日本学術振興会特別研究員 (30736658)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | エピジェネティック / ヒストンメチル化酵素 / 顎顔面発生 / メッケル軟骨 |
Outline of Annual Research Achievements |
質的変化がダイナミックに生じる発生過程ではエピジェネティックな変化が頻繁に起きており、エピジェネティックな破綻が与える生命への影響は多大である。我々は、エピジェネティクス機構を司るヒストンメチル化酵素の一つであるESETの顎顔面発生過程への影響を調べるため、神経堤細胞特的にノックダウンさせたマウス(ESET CKO) を作製したところ、口蓋、歯胚、メッケル軟骨、前頭骨の形成に異常を認めた。中でも平成28年度はメッケル軟骨におけるESETの役割について詳細に検討した。 メッケル軟骨は通常発生過程が進行するにつれて消失していくが、ESET CKOでは軟骨細胞の肥大化を伴うメッケル軟骨の増大を認めた。さらに胎生16.5日と18.5日ではメッケル軟骨の軟骨膜の一部が消失し、胎生18.5日においてはメッケル軟骨の一部に野生型では生じることない石灰化物の沈着が認められた。ESET CKOのメッケル軟骨での増殖能を検討した所、有意に亢進していた。これは、siRNAによりESETをノックダウンさせたマウス前軟骨芽細胞 ATDC5においても同様な結果が得られた。ESETをノックダウンさせたATDC5では、軟骨分化マーカーであるSox9, Mmp13, Collagen II, Aggrecanが有意に減少した。 また、過剰なBMPシグナルがメッケル軟骨を肥大化することが報告されている。ESET CKOにおいても同様な現象が生じているのではないかと推察されたため解析を行った所、SMAD依存性のBMPシグナルはSetdb1 CKOのメッケル軟骨、siSetdb1 ATDC5においてともに有意に増加した。 以上のことより、ESETによるエピジェネティクス機構がメッケル軟骨の発生に必須である可能性が示された。今後は、他の顎顔面組織でのESETの役割を解明することとする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画目標の一つである時空間での表現型・形態解析は概ね終了し、表現型が認められるステージが確立された。中でもメッケル軟骨に関しては、その表現型が稀有であるため詳細に解析を行った。また、細胞増殖能およびアポトーシスについても表現型が生じている部分に対し行った。部位によって増殖能への反応が異なっていた。 当初、ESET CKOから細胞を採取し網羅的に標的遺伝子を検索する予定であったが、部位によって細胞増殖が異なっていることよりも、組織間によってESETの役割が異なっていると考えられたため、予定を一時保留にした。現在は、各組織から十分量のRNAが抽出できるかの検討を行っている。また、並行して未分化なESETノックダウン細胞の確立を行い、その細胞に対し分化誘導をかけ、検討を行う予定である。 本年は、表現型が稀有であるメッケル軟骨に着目し、その発症理由にBMPシグナルの関与があることを示すことができた。この内容はすでに掲載済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初、ESET CKOから細胞を採取し網羅的に標的遺伝子を検索する予定であったが、部位によって細胞増殖が異なっていることよりも、組織間によってESETの役割が異なっていると考えられたため、予定を一時保留にした。その代案として、各組織からサンプルを採取しマイクロアレイ法を行うことが可能かどうか、各組織からのRNA採取量の検定を行うこととした。また、前述の方法でRNAのn抽出が困難である場合、タモキシフェンを用い未分化なESETノックダウン細胞を作製し、分化誘導させた細胞を用いて遺伝子解析を行う予定である。 標的遺伝子が特定された後、ESETによる標的遺伝子の転写制御の解明を行う予定である。また、メッケル軟骨においてBMPシグナル関与が示唆されたため、当初の予定には入っていなかったが、こちらへの関与も詳細に検討を行う予定である。 最終的には、ESETは一般的に発現を抑制する働きを持っているので、ESET CKOにおいて発現が上昇している標的遺伝子のsiRNAを分化誘導させたESETノックダウン細胞に導入させ、表現型・遺伝子発現が正常細胞のものへと近似するか、改善されるかどうかの検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初行う予定であったマイクロアレイ法を行わなかったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度にマイクロアレイ法を行う予定である。
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