2017 Fiscal Year Research-status Report
不正咬合に起因する“顎口腔サルコペニア”の実態と内分泌・免疫系因子との関連
Project/Area Number |
16K11791
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
前田 綾 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (10457666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
八木 孝和 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 講師 (10346166)
植田 紘貴 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 助教 (10583445)
宮脇 正一 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (80295807)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 握力 / 四肢骨格筋力 / 顎顔面形態 / 不正咬合 / 最大咬合力 |
Outline of Annual Research Achievements |
サルコペニアは、老化に伴う四肢骨格筋の筋肉量と筋力の低下を特徴とする症候群で、近年では、若年者における筋肉量や筋力の低下についても、予防の観点から注目されている。これまで、不正咬合患者では、咀嚼筋活動や咬合力の低下が報告されているが、“顎口腔サルコペニア”については未解明である。本研究では、重度不正咬合患者の顎口腔サルコペニアの実態を調査し、四肢骨格筋のサルコペニアとの関連を解明する。臨床研究では、筋委縮との関連が深い内分泌・免疫系の因子と不正咬合との関連を明らかにし、基礎研究では、不正咬合の改善による影響も検証する。これらが明らかとなれば、矯正治療による咬合改善や標的バイオマーカーを用いた薬物療法により、顎口腔サルコペニアの発症、ひいては四肢骨格筋のサルコペニアの予防に繋ることができると考える。H29年度は臨床研究として、矯正歯科治療患者について、四肢骨格筋筋力の指標の一つである握力と顎顔面形態と不正咬合および最大咬合力の関連を明らかにすることとした。成人女性において、筋力として握力を測定し、身体測定値、顎顔面形態、不正咬合および最大咬合力との関連を検討した。回帰分析の結果では、握力の有意な説明変数は上顎骨体長(前後的)、身長、BMI、および最大咬合力であった。上顎骨長は身長と相関していたことから、身長の影響を排除するために、身長が平均±1SD以内の対象者において、顎顔面形態が平均値より高い群と低い群の2群に分け、握力を比較した。下顎角の値が平均値よりも高い群は、低い群よりも有意に握力が弱く、また、最大咬合力も小さく、オーバージェットは大きく、臼歯部の交叉咬合や反対咬合の程度も大きかった。以上のことから、顎顔面形態や不正咬合および咬合力は、握力と関連している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H29年度は臨床研究として、矯正歯科治療患者について、四肢骨格筋筋力の指標の一つである握力と顎顔面形態と不正咬合および最大咬合力の関連を明らかにすることとした。 85名の成人女性において、筋力として握力を測定し、身体測定値として身長とBMIを、セファロ分析による顎顔面形態と平行模型による不正咬合について解析し、最大咬合力を測定した後、これらの関係について統計学的に検討した。回帰分析の結果では、握力の有意な説明変数は上顎骨体長(前後的)、身長、BMI、および最大咬合力であった。上顎骨長は身長と相関していたことから、身長の影響を排除するために、身長が平均±1SD以内の対象者において、顎顔面形態が平均値より高い群と低い群の2群に分け、握力を比較した。下顎角の値が平均値よりも高い群は、低い群よりも有意に握力が弱く、また、最大咬合力も小さく、オーバージェットは大きく、臼歯部の交叉咬合や反対咬合の程度も大きかった。以上のことから、顎顔面形態や不正咬合および咬合力は、握力と関連している可能性が示唆された。以上の結果について、論文執筆した後、現在投稿中である。 また、H28年度の実績報告で記載したように、CLP患者について調査していたところ、CLP患者の顎顔面形態と矯正治療による歯の移動が歯根長や歯根吸収と関連することが明らかとなったため、結果をまとめて投稿し、掲載中である。
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Strategy for Future Research Activity |
臨床研究について、論文掲載をめざす。また、臨床研究と基礎研究を行う。
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Causes of Carryover |
研究計画では、筋肉量について、MRIを撮影して咀嚼筋・舌筋・四肢骨格筋量を算出すること、また、内分泌・免疫系に関する因子:唾液を採取し、GCやGHなどを、ELISA法で解析する予定であった。しかし、これらを調査する前に、疫学調査を行い、不正咬合や顎顔面形態および顎口腔機能顎が四肢筋と関連しているか調べる必要があった。疫学研究には、当初予定していた謝金や検査費用が必要なかったが、疫学研究によって、関連が明らかとなったため、次年度に被験者を十分検討した上で、今後当初予定していたMRI検査や唾液検査を行う予定である。
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