2018 Fiscal Year Research-status Report
歯髄光電脈波と抹消血管運動の周期性解析による新たな歯髄診断法に関する研究
Project/Area Number |
16K11800
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
柿野 聡子 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 講師 (30516307)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 祐司 東北大学, 医工学研究科, 教授 (10241530)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ①歯髄診断 / 透過型光電脈波法 / 抹消血管運動 / 非侵襲診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯髄は血管や神経、リンパ管などから構成され、歯に栄養を供給する組織である。歯髄の病態診断は、歯科治療における治療方針の決定、歯髄保存の可否において重要な判断材料となるため、正確な診断が求められる。歯髄の健康度を支配するのは歯髄の循環系であり、現在、LEDの透過光を利用した歯髄血流測定(透過型光電脈波測定 Transmitted-light plethysmography (TLP))により、歯髄の生活反応を非侵襲的に診断することが可能となっている。しかし、小児患者の外傷歯の歯髄脈波より、歯髄血液は存在しても必ずしも健全歯髄と言えないケースも多いことがわかっている。 本研究では、従来行ってきた歯髄光電脈波による歯髄血液の有無の診断に加えて、新たに歯髄の「抹消血管運動(Vasomotion)」の周期性に着目し、歯髄の生理機能の評価法の確立を最終目標としている。血管運動は、心肺の活動とは関係なく、中枢または抹消の神経支配によって周期的に血管自体が弛緩・収縮するもので、容積脈波とは異なる周期性を持つ。歯髄の「機能」や「病態」を「周期性」という相対値により定量評価できる可能性がある。 初年度はデータ採得に先立ち、解析に必要な歯髄脈波を効率よく取得するための汎用プローブの作製を試みたが、被験者の動きによるアーチファクトが生じると微小な血液循環を検出することが困難であり、従来歯髄光電脈波の検出に使用してきたしたアダプター(即時重合レジンで作製)により、光源のLEDと受光素子Photodiodeを固定することとした。 2年次は、血管運動を取得するため、周波数解析において低周波成分も検出できる電気回路の試作を行った。3年次以降はデータの取得を本格的に行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
抹消血管運動は、容積脈波とは異なる周波数を有し、文献によると0.009~0.2Hzという報告がある。低周波数の測定を可能にするため電気回路や受光素子を工夫し、装置の受光感度やS/N比を向上させることで、低周波成分も測定が可能な装置(試作機)の作製を行った。しかし、臨床での測定の簡便性を追求するため、従来とは異なる反射型を採用しており、被験者の測定に至るまでに時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、ヒト歯髄からの信号を取得し、解析方法を決定する。測定の際は、心電図、指尖脈波、歯髄脈波をそれぞれ測定する。過去の報告によると、抹消血管運動の周波数解析のアルゴリズムには、自己回帰式法、FFT法、最大エントロピー法など複数存在する。歯髄を対象とした研究は非常に少ないため、歯髄に適した信号解析方法を選択し、心電図および歯髄光電脈波の周波数解析により、心拍由来成分、自律神経系に由来する成分、末梢の血管運動に由来する成分について区別できるかどうかを検証する。 今回新たに導入する血管運動の解析では、心機能とは独立した生理的機能の解明を目的とするが、本来、歯髄の健康度を支配している心拍由来の血流を同時計測することで、歯髄の血流循環と抹消の生理的機能の両面に裏打ちされた歯髄診断法の可能性を探る。
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Causes of Carryover |
理由:当初の計画ではデータレコーダーを購入する予定であったが、測定装置の開発を優先したため予定を変更し、主に測定のための消耗品を購入した。 使用計画:次年度は、測定に必要な消耗品購入や研究成果発表のために使用する予定である。
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