2018 Fiscal Year Research-status Report
染色体置換マウスを用いた唾液分泌能の個体差と齲蝕感受性に関与する遺伝因子の探索
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16K11814
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
清水 邦彦 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (30328760)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 齲蝕感受性 / コンジェニックマウス / 刺激時唾液分泌量 |
Outline of Annual Research Achievements |
齲蝕感受性に影響するマウス第2番染色体上の領域を明らかにすることを目的にB6-Chr.2C3HとC57BL/6(B6)の交配によりコンジェニックマウスを作製し,齲蝕誘発実験と刺激時唾液分泌量測定および解析を行った。B6とB6-Chr.2C3Hの計画的に交配から,下記のコンジェニックマウス3系統を確立した。またB6,C3H,B6-Chr.2C3Hとコンジェニックマウス3系統を対象に齲蝕感染実験を行い,齲蝕罹患状態をスコア化した。さらにピロカルピン刺激時唾液分泌量は,30分間マウス口腔内から唾液を採取し調査した。その結果マウス第2番染色体の163Mbpと179Mbpの間(congenic1),84Mbpと163Mbpの間(congenic2),84Mbpと106Mbpの間(congenic3)がC3H由来の領域を示すコンジェニックマウス3系統を作製した。またcongenic1~3群の齲蝕スコアは各々B6-Chr.2C3H群より有意に高く,B6より有意に低かった。congenic2群の齲蝕スコアはcongenic1群とcongenic3群より有意に低く,congenic1群とcongenic3群の間では齲蝕スコアに有意差は認められなかった。さらに刺激時唾液分泌量に関してはcongenic 1~3群とB6-Chr.2C3H群の間,またcongenic2群とC3H群の間で有意差が認められなかった。 以上の結果から,congenic2の齲蝕スコアが他のコンジェニック系統と比較し有意に低いことから,齲蝕抵抗性に関連する遺伝子がマウス第2番染色体上の84~163Mbp間に存在する可能性が示唆された。またcongenic2の唾液分泌量はC3Hの唾液分泌量と有意差が認められなかったことから,唾液分泌量に関連性のある遺伝子も同様に84Mbpと163Mbpの間に位置している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までにコンジェニックマスの作成が予定よりも進んでいたため、マウス第2番染色体全体を対象とした遺伝子解析よりコンジェニックマウスの作成を優先して行った結果、すでに動原体付近を除いた大部分の第2番染色体領域を網羅する3系統のコンジェニックマウスが得られている。これら3系統のコンジェニックマウスの齲蝕感染実験および、唾液分泌能の調査は完了しており、その結果から、齲蝕感受性に関与する聴域がマウス第2番染色体上の84Mbpと163Mbp間に存在する可能性が示唆されている。研究計画を立案した当初は第2番染色体全体を対象とした唾液線の遺伝子発現を調査する計画であったが、今回得られたコンソミックマウスのデータから、調査すべき染色体領域が狭い範囲に限定することができ、その結果、今後解析対象となる遺伝子の数が当初の予定より少なくすることができたため、より早い時期に齲蝕感受性に関与する遺伝子の同定が可能になったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果から、齲蝕感受性に関与する遺伝子が存在する領域がマウス第2番染色体上の84Mbpから163Mbpの間の存在する可能性が示唆されているため、この領域に存在する遺伝子をデータベースから検索し、網羅的に遺伝子の抽出を行う。当初の計画よりも解析対象の染色体領域が限定されたが、多くの遺伝子が存在するため、まずは免疫系、カルシウム代謝、硬組織形成に関わる遺伝子に焦点を当てる解析を行う予定であるが、機能が既知の遺伝子でも新しい機能を持った遺伝子の存在も否定できないため、できるだけ多くの遺伝子の解析を行う。遺伝子の解析は、今回作成したコンジェニック系統の親系統であるC3およびB6系統を対象として、リアルタイムRT-PCRにて遺伝子発現状態の確認を行い、発現量に差があった遺伝子についてはコンソミックマウスでの発現量を調べると同時に遺伝子発現の調節領域の遺伝子配列について調査を行う。また齲蝕感受性に関与する宿主要因の1つとしてエナメル質の硬度や結晶密度が挙げられ、ナメル質硬度の測定や結晶構造の解析を施しコンソミック系統およびその親系統であるC3およびB6系統を対象として比較・検討を行う。さらに2番染色体の動原体側の置換が行われたコンジェニック系統が作成できていないため引き続きコンジェニック系統の作成を行い、これまでに行われて齲蝕感染実験および唾液分泌量の調査を行い、2番染色体上に複数の遺伝要因が関与しているかどうかと調査する予定である。
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Research Products
(2 results)