2017 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病関連歯周炎のIL-6動態に着目したマクロファージ・線維芽細胞クロストーク
Project/Area Number |
16K11832
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
成石 浩司 徳島大学, 病院, 講師 (00346446)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木戸 淳一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 准教授 (10195315)
梶浦 由加里 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 特任助教 (40758869) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 歯肉線維芽細胞 / マクロファージ / 糖尿病 / 歯周病 |
Outline of Annual Research Achievements |
歯周病細菌P.gingivalis由来リポポリサッカライド(LPS)が高血糖条件下で培養したTHP-1単球の炎症性サイトカインIL-6およびMCP-1産生を有意に亢進することを見出し,糖尿病患者における歯周病組織由来のマイクロインフラメーション(微弱炎症)の細胞学的機序の一端を明らかにした。さらに,この微弱炎症はカロテノイドの一種であるベータカロテンによって有意に抑制されることも示した。望ましい栄養摂取のあり方については,今後の研究発展のために重要なキーワードであると考えている。 次に,糖尿病患者における歯周病の重症化機序を想定して,THP-1単球をマクロファージに分化させた後,高血糖条件下で培養するとIL-6アゴニストである可溶性IL-6レセプター(sIL-6R)の産生が有意に誘導されることを明らかにした。また,このsIL-6R産生はTaceの作用によるものであることも示すことが出来た(論文作成中)。 一方,高血糖条件下で培養した歯肉線維芽細胞をIL-1やIL-6で刺激すると,NF-kB系あるいはMAPK系を介してタンパク分解酵素MMP-1の産生が有意に亢進することも見出した。MMP-1レベルの上昇は直接的な歯周組織破壊につながる。またIL-1は歯肉線維芽細胞のIL-6産生を劇的に誘導することも見出した。 上記で得られた知見をまとめると,IL-6ネットワークを中心としたマクロファージと線維芽細胞のクロストークはIL-1の存在が重要であることが示唆され,このことによって糖尿病患者における歯周病の重症化機序の一端が説明できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,糖尿病患者に見られる歯周病の重症化機序を探索するため,歯肉線維芽細胞とマクロファージの細胞間クロストークを検討するものである。また研究の前提をクリアするために必須であったマクロファージの前駆細胞である単球を高血糖条件下で培養した時の細胞反応を検討すると,様々な炎症性サイトカインの産生を誘導することが分かった。これによって,歯周病によるマイクロインフラメーションの機序の一端を明らかにできたと考える(Cell Biol Int. 42(1):105-111, 2018.に掲載)。さらに,マクロファージは高血糖条件下で培養するとIL-6アゴニストであるsIL-6Rの産生を誘導することから,糖尿病患者の歯周組織ではIL-6ネットワークが増強し得る環境に変貌している可能性が示唆された。このことは,全くの新規の知見・病態概念であり,今後の研究進捗によって非常にインパクトの大きい内容に発展することが期待されると考えている。 したがって,現在までの研究の進捗は概ね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
IL-6ネットワークに着目した細胞間のクロストークについて,種々の細胞実験を丁寧に行うことで,その信憑性をさらに高じる必要があると考えている。したがって,これまでの研究成果によって得られた知見を念頭に,タンパクレベルあるいは遺伝子レベルなど,あらゆる角度から,今回得られつつある新規知見の妥当性を検証していく。一方で,今回の新規細胞生物学的知見が糖尿病を併発した歯周病患者の歯周組織の炎症反応と合致するかどうかは非常に重要な視点であるので,臨床面から実際の患者試料を用いて研究成果の整合性を検討することが欠かせないと考えている。これは新たな臨床研究として実施する必要があるものの,次の研究発展を見据えて本研究の最終年度に行うべき重要なプロセスであろうと思われる。 以上のように,研究期間の最終年度ということを念頭にして,有益な研究成果を挙げる最大限の努力をする心づもりである。
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Causes of Carryover |
本研究で得られた細胞実験の結果は劇的な細胞を捉えることができたので,最少限の実験実施によって明らかな有意差のある研究成果が得られた。すなわち,実験に用いる消耗品の購入について,予想以上の経費削減につながった。さらに,研究成果を公表するための論文執筆にも時間を費やしたことも研究経費の縮減につながったと思われる。 一方,最終年度ついては,さらに高度水準の細胞研究を実施する必要があると考えている。とりわけ,細胞実験によって得られたデータの臨床的有用性を提唱するためにも,臨床試料を用いることで,これまでに見出した歯周病の病態形成における種々の炎症反応の正当性を評価することが重要であると考えている。これまでに節約できた研究経費を元に,あらゆる角度から本研究結果の信憑性の向上に努めたいと考えている。
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