2017 Fiscal Year Research-status Report
red complex細菌の網羅的な遺伝子解析による歯周病診断マーカーの検索
Project/Area Number |
16K11842
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
平塚 浩一 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (80246917)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 歯周病 / 診断 / マイクロアレイ / Red complex |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は現行の歯周病が未治療のままでいると,将来的に歯周疾患が重篤化する可能性が高いか否かを予測する診断法の開発である。臨床試料から分離される細菌RNA の分解レベルが著しい場合があるため,翻訳に関連するmRNAのみならず,サイズが小さく分解を受けにくいnon-coding RNA をバイオマーカーの候補として新たに加え,主要な病原細菌での次世代シークエンス解析を行ない,両者のデータの構築が完了している。特に将来的に重篤化する可能性が高い歯周疾患か否かを,生息する細菌の病原性に着目して予測するマイクロアレイ技術を基盤とした診断法の開発を考えた場合,歯周病に深い関わり合いを持つとされるred complex細菌 (P.gingivalis: Pg, T. forsythia: Tf, T. denticola: Td)に加え,侵襲性歯周炎の原因細菌,A. actinomycetemcomitans (A.a)を対象として研究を進めた。4菌種に対して様々な刺激を加えたのちに次世代シークエンス解析を行い、RNA発現が変動する遺伝子群を決定した。さらに病原性遺伝子を含む全遺伝子とnon-coding RNAs を対象に、同様の様々Stress負荷実験で発現する遺伝子のマイクロアレイ解析を進め,特に病原性因子のバイオマーカーの候補として調査を行った。このデータを元に病態マーカーとしてのエビデンスを取得するために,健常者,慢性歯周炎(軽度・中等度・重度),侵襲性歯周炎患者から歯肉溝滲出液を採取し,RNA 抽出後,考案した独自の手法でRNA増幅を施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
診断用アレイの開発には,歯周病の各病態での歯肉溝滲出液中の細菌RNAの採取が不可欠である。健常者,慢性歯周炎(軽度・中等度・重度),侵襲性歯周炎患者から歯肉溝滲出液を採取等の臨床サンプルを取得するために,倫理委員会での承認をすでに頂き,研究協力者にも臨床サンプルの採取をすでにお願い済みであるが,付属病院でのシステム変更や協力者の諸事情により,未だ解析するに充分と言える試料が揃っていない。1枚のアレイで8検体可能であり,また病態グループごとの差を解析するにはそれなりの数を揃えて同時に行うことが基本であることによる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度から収集している様々な歯周病の病態からの資料の採取を進めて,極微量RNAサンプルを申請者が開発した増幅法 [基盤研究(C),研究代表者,「歯周ポケット内生息細菌の病原性を直接モニタリング可能な診断法の開発」平成16年度-平成18年度]にて,RNAを1~2μg相当まで増幅させる。cDNA化後,蛍光標識を施し,作成したカスタムアレイと反応させ,蛍光スキャナーにてシグナル強度を検出する。次にアレイ上の各probeに対するシグナル強度のデータを遺伝子発現ソフトに移行させ,各probeにおけるシグナル強度が,病態間で統計学的に有意な差異を示す遺伝子やnon-coding RNAを見出し,各病態における病態マーカーを見出す。これはできるだけ多くのサンプルを同時に行う方が効率的かつ実験誤差が少ないので,この様な方略で今後推進していく予定である。
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Causes of Carryover |
病態の異なる歯周病患者からの臨床サンプルの採取は,付属病院で診療を施している研究協力者に依存している。病院内での臨床システムの変化や,それに伴う研究協力者の診療科の移行等により,サンプル採取が計画通りにいかず滞ってしまったため,実験計画に遅れが生じた。1枚のアレイに8種の患者試料を反応させられるため,8の倍数での試料採取を単位としている。コントロールを含めた各病態の解析には16試料ずつを予定している。また,できるだけ一度にアレイ実験を行う方が実験誤差が出ない。別の実験の解析をしながら待機している状態である。アレイに使用するキットや試薬には期限があるため,あらかじめ購入してしまうことは今回避けた次第である。今後,アレイ解析に使用する試薬類・キットの購入に対する補充に当てていきたいと考えている。
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