2017 Fiscal Year Research-status Report
歯肉上皮細胞の特殊性に基づいた新規歯周炎治療薬の開発
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16K11843
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山口 洋子 日本大学, 歯学部, 助教 (00239922)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大島 光宏 奥羽大学, 薬学部, 教授 (30194145)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 初代培養細胞 / 3次元培養 / 生体外歯周炎モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、歯周炎罹患歯肉からコラーゲンゲル三次元培養法により、コラーゲンを極度に分解する歯肉線維芽細胞(歯周炎関連線維芽細胞、PAFs)を分離し、「生体外歯周炎モデル」を確立した(J Dent Res 2010)。さらに、マイクロアレイ解析によりFLT1(VEGFR1)が高リスク遺伝子であることを報告した(J Clin Periodontol 2016)。しかしながら、コラーゲン分解の実行役となる遺伝子は、依然として不明のままであった。そこで本研究では、三次元培養ゲルを経日的に回収してマイクロアレイ解析することで、コラーゲン分解に直接かかわる遺伝子をリストアップするとともに、上皮細胞側のPAFsに対する刺激因子を調べることを目的とした。 マイクロアレイ解析の結果、意外なことに肝細胞増殖因子(HGF)の遺伝子発現上昇が著しく、HGFのコラーゲン分解への関与が疑われた。そこで、ゲルにHGF標品または抗ヒトHGF中和抗体を添加する実験を行った。その結果、標品の添加ではコラーゲン分解が著しく促進され、中和抗体の添加ではコラーゲン分解は顕著に抑制された。そこで、この中和抗体を添加したゲルのマイクロアレイ解析を行ったところ、これら因子の発現を顕著に抑制する中和抗体は、歯周炎治療薬となる可能性が見出された。 この仮説をin vivoで試験するために、歯周炎を自然発症したカニクイザルの安楽殺個体から歯肉を採取してコラーゲンゲル三次元培養を行ったところ、サル歯肉にもPAFsが存在することが明らかとなり、かつ抗ヒトHGF中和抗体でコラーゲン分解が顕著に抑制されることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前の申請者らの研究では、HGFが歯周炎局所の歯肉溝滲出液中に多量に検出されるため、歯周炎の特異的マーカーとして位置づけて来た(J Periodontal Res 2002)。さらに、洗口吐出液中のHGFを検出することで、歯周炎患者をスクリーニングする試験紙も開発中である。しかし本研究の進展により、図らずもHGFが歯周炎を進行させる実行役であることが判明したことから、HGFの歯周炎特異的マーカーとしての有用性も揺るぎないものとなった。 これらの事実から、歯周炎治療薬の標的分子をHGFと定め、抗ヒトHGF中和抗体のコラーゲン分解阻害効果を「生体外歯周炎モデル」で試したところ、顕著な効果が確認できた。幸運なことに、歯周炎を自然発症したカニクイザル個体が飼育されている世界的にも貴重なフィールドである霊長類医科学研究センターと出会い、さっそく共同研究を開始した。まず歯周炎に罹患した安楽殺個体の歯肉を採取して線維芽細胞を培養し、コラーゲンゲル三次元培養に供したところ、ヒトと同様にコラーゲンゲルを極度に分解するPAFsの存在が明らかとなった。サルの遺伝子はヒトと非常に近いことから、抗ヒトHGF中和抗体を用いて「生体外歯周炎モデル」でその効果を試したところ、ヒトの場合と同様に顕著なコラーゲン分解阻害効果が見られた。 また、前臨床試験を行うための準備として、霊長類医科学研究センターにおいて、カニクイザルの全頭検査による歯周炎自然発症個体のスクリーニングを目指し、口腔内検診を行っている。もちろん、霊長類医科学研究センターで動物実験を行うための手続きはすでに終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
歯周炎治療薬の標的をHGFと定めたことから、霊長類医科学研究センターにおいて飼育されている歯周炎を自然発症した個体の歯肉に、抗ヒトHGF中和抗体を局所投与(注射)する準備を行っている。In vitroの実験結果から、抗体の濃度は20 μg/mLで充分であることが判明しており、微量の投与が可能となるマイクロシリンジを選定中である。 さらに、中和抗体の治療効果を客観的に知るためには、臨床的パラメータだけでは生物学的な情報が得られないため、歯肉溝滲出液中のHGFもしくはmiRNAの検査が有用と考えており、HGFのELISAによる測定や、申請者らがヒトで確立したmiRNAによる歯周炎の診断方法(FEBS Open Bio 2017)をサルでも行うことができるかどうか検討する。また、抗ヒトHGF中和抗体を投与したサルの歯肉から線維芽細胞を培養し、「生体外歯周炎モデル」でコラーゲン分解が起こるかどうかを経時的に調べることで、抗体の局所投与が有効な期間(反復投与すべき間隔)が判明すると考えている。 さらに、HGFはMCS-Fと同様に骨吸収を促進することが知られている(Histol Histopathol 2009)ので、in vitroの系を構築し、歯槽骨吸収に及ぼす影響も併せて検討したい。 もし可能であれば、比較的高価で扱いの難しい抗体よりも、低分子キナーゼ阻害薬などの低分子薬の効果も試験したいと考えており、サルの実験と並行してヒトのPAFsを用いた「生体外歯周炎モデル」において、低分子薬のスクリーニングも継続していきたい。有用な低分子薬の候補が見つかり次第カニクイザルでの効果を試験すべく、歯周炎を自然発症した個体の更なる確保を目指したい。
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Causes of Carryover |
(理由) 消耗品のキャンペーン価格により、割引が生じたため (使用計画) 29年度に生じた残金は、30年度の消耗品と併せて、培養用試薬等を購入予定。
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[Journal Article] MicroRNA profiling in gingival crevicular fluid of periodontitis - a pilot study2017
Author(s)
Saito A, Horie M, Ejiri K, Aoki A, Katagiri S, Maekawa S, Suzuki S, Kong S, Yamauchi T, Yamaguchi Y, Izumi Y, Ohshima M
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Journal Title
FEBS Open Bio
Volume: 7
Pages: 981-994
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Integrative CAGE and DNA Methylation Profiling Identify Epigenetically Regulated Genes in NSCLC2017
Author(s)
Horie M, Kaczkowski B, Ohshima M, Matsuzaki H, Noguchi S, Mikami Y, Lizio M, Itoh M, Kawaji H, Lassmann T, Carninci P, Hayashizaki Y, Forrest ARR, Takai D, Yamaguchi Y, Micke P, Saito A, Nagase T.
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Journal Title
Mol Cancer Res.
Volume: 15
Pages: 1354-1365
DOI
Peer Reviewed
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