2017 Fiscal Year Research-status Report
咽頭刺激を応用した新しい嚥下訓練法に関する臨床的研究
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16K11904
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
中川 量晴 藤田保健衛生大学, 医学部, 講師 (60585719)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 浩一郎 藤田保健衛生大学, 医学部, 教授 (90507675)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 摂食嚥下障害 / 咽頭微小電気刺激 / 嚥下訓練法 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で,健康成人(男性・女性)の咽頭領域に微小電気刺激をしたときの有効な嚥下誘発条件と誘発された嚥下動態を超音波エコー法(US)で非侵襲的にモニター上で観察することができるか検討してきた。健常成人を対象とした研究では,被験者の顎下部に超音波プローブ(コンベックスタイプ)を当て,同時に経鼻的に径3mm程度の内視鏡を挿入し,USと内視鏡の画像を同期させることで,被験者が唾液を嚥下するときの咽頭領域の描出に成功した。すなわち,US画像上で刺激電極を陰影として観察し,咽頭における電極先端の位置決めと刺激を与える手法を確立した。 対象者を若年健常者男女,高齢健常者として,中咽頭後壁をさまざまなパラメータで刺激し,嚥下を誘発できるか検討した。刺激を感知した刺激強度を知覚閾値(Pe-Th),飲み込みたくなった刺激強度を嚥下閾値(Dsw-Th),痛みを感じた刺激強度を痛覚閾値(Pa-Th)と定義し,嚥下誘発条件(刺激の強度や頻度)が性差と年齢の影響を受けるか解析した。Pe-Th,Dsw-ThおよびPa-Thは男女間で有意差を認めなかった。これまでの報告で咽頭腔の体積は男女間で異なり,男性の方が咽頭腔体積が広いとされていたが,飲み込みたくなる咽頭刺激の条件は性別の影響を受けないことが示された。若年健常者と高齢健常者の嚥下誘発条件を比較したところ,高齢者の方が刺激強度が高くなり,加齢により咽頭感覚閾値が高くなることが示された。しかしながら高齢者であっても嚥下を誘発することが明らかとなった。 脳卒中後などの有病者に対する有効な咽頭微小電気刺激パラメータの解析を継続している。摂食嚥下障害が発現しうる脳卒中患者の嚥下誘発ができれば,新しい嚥下訓練法として用いることが可能になる。現時点で脳卒中患者の有効な嚥下誘発刺激条件は被験者による応答が多様であり,刺激部位や強度を工夫する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は,中咽頭後壁領域を電気刺激し,反射的な唾液嚥下を誘発することが新しい嚥下訓練法として有意義であるか明らかにすることである。この方法で嚥下誘発が可能になれば,胃ろう等を使用している重度嚥下障害患者の一日の嚥下頻度を増やすことができる。自己による嚥下回数が増えると,咽頭貯留した唾液処理や食道蠕動運動機能の維持,活性化が期待できると考える。 これまでの研究で,咽頭を刺激する装置のセットアップや健常者を対象とした刺激条件の基礎的データの蓄積は進んでいる。しかしながら,脳卒中後の嚥下障害患者を対象としたデータが不足している。現時点で,脳卒中患者の咽頭を刺激しても反射的な嚥下が誘発されない,強度などの刺激条件にばらつきがある等,データ収集の段階で再検討が必要となっている。対象者の選定条件は,脳血管疾患発症からの期間,全身状態の安定度,誤嚥性肺炎の既往などが同様もしくは同程度の経過をたどった者のうち,研究の同意を得られた者としているが,より経度な嚥下障害患者を対象とするなど,被験者の選定条件を含め見直し,対象者を増やしてデータ解析を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
嚥下障害が生じた脳卒中後の患者を対象に,有効な咽頭刺激条件の解析を続ける。刺激装置と刺激パラメータはこれまでと同様に用いる。咽頭の観察方法についても,US画像をもとに刺激位置,刺激強度,頻度,持続時間の調整,嚥下の有無を評価する。データ解析方法についてもこれまでと同様に行う予定である。刺激を感知した刺激強度を知覚閾値(Pe-Th),飲み込みたくなった刺激強度を嚥下閾値(Dsw-Th),痛みを感じた刺激強度を痛覚閾値(Pa-Th)として,健常若年者,健常高齢者,嚥下障害患者の3群間で閾値に差があるか比較する予定である。
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Causes of Carryover |
(理由)当該年度の旅費について,研究の遂行,進捗状況を考慮し,国内学会および国際学会とも当初の学会参加予定よりも少なくした。また当該年度の物品費について,前年度から使用していた備品の継続使用が可能であったため,比較的高額な設備備品を申請せずに研究遂行が可能であった。以上のことから,当該年度に計上していた予算と差額が生じ,次年度使用とした。
(使用計画)次年度は所属研究機関が変更になることから,新たな設備備品を計上する予定である。また研究計画最終年度であるため,研究データのまとめ,論文作成の校正等の予算を計上する予定である。
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