2017 Fiscal Year Research-status Report
占領期GHQ/SCAPの看護改革と布教活動の関連性に迫る歴史的研究
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16K11915
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 公美子 札幌医科大学, 保健医療学部, 准教授 (30324213)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川上 裕子 亀田医療大学, 看護学部, 講師 (20612196)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 占領期 / GHQ/PHW / 看護改革 / 宗教改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,研究目的に沿った史料の探究と蒐集および翻訳作業を行った.また,研究代表者と分担者が所属する日本看護歴史学会第31回学術集会とアメリカ看護歴史学会(America Association for the Nursing History)35th Annual Nursing & Health Care History Conferenceにて,研究成果を発表し意見交換を行った.学術集会終了後も引き続き,これら学会メンバーと共同し研究を進めている. 本研究の課題は,占領期日本における布教活動の事実を,PHWの看護政策実施過程との関連性から探究することにある.今年度の研究成果の一部は次のようである.1945年11月,GHQ/CIE組織に宗教課が設置され,対日占領改革の方針に則って宗教課は政教分離の原則を守るためマッカーサーが強烈に進めようとした日本のキリスト教化に強く抵抗したことを史料から確認した.また,キリスト教宣教師たちの生活はGHQの活動とはほとんど無関係であったことも伺えた.しかしながら,PHW看護課のみならずGHQスタッフの多数が宗派は違うがキリスト教信者である.GHQは,一方ではキリスト教化を勧め,他方では信教の自由を謳い,政教分離の確立を目指していた.CIE宗教課はこの矛盾に気づきながら宗教政策を展開していた.PHW看護課も公式に看護政策と布教活動を関連させて行うことは控えていたと考えられる.筆者らはマッカーサー元帥の指示のもと,PHW看護課の活動の一端にキリスト教団での講演やキリスト教と看護思想を関連させた話題提供があったと仮説立てていたが,その様相を分析史料からは実証できなかった.つまり,看護政策と宗教政策を関連付ける公式な文書は表面的には存在せず,容易に史料を見出だすことは困難であると推察された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度に予定していた国内外学術集会での発表と史料探究など,概ね計画どおりである. 論文作成に向けて,さらにインタビューなどを計画していく.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度はさらに研究を蓄積し,国内外で成果報告を行っていく.また,史料の探求に関しては,GHQ,特にPHW看護課やCIE宗教課のスタッフやその家族が日本の宗教的,教育的,医療・社会福祉的な施設に対して与えた貢献について,史料の方向を変えて探究していく予定である.さらに,キリスト教団体や看護職者へのインタビューも予定していく.また,20世紀メディア情報データベースを活用し,地域ごとや民間の新聞,雑誌,書籍などからも資料を探究していく.
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Causes of Carryover |
今年度は,研究調査のための旅費や史料蒐集に関連する費用(複写費など)が予定より少なく実施できたため,次年度使用額が生じた.次年度は,国際学会への参加費と旅費,および国内外調査のための旅費,複写費などや,国内学会への参加・発表も予定しており,それらに使用する.また,成果報告書作成のための電子機器の購入も検討している.
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Research Products
(3 results)