2017 Fiscal Year Research-status Report
看護教育におけるインシビリティー(incivility)尺度の開発
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16K11925
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Research Institution | Okinawa Prefectural College of Nursing |
Principal Investigator |
金城 芳秀 沖縄県立看護大学, 保健看護学研究科, 教授 (40291140)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 浩昭 静岡県立大学, 看護学部, 教授 (30208160)
佐伯 圭一郎 大分県立看護科学大学, 看護学部, 教授 (50215521)
李 廷秀 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任准教授 (60292728)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | civility / incivility / concept analysis / nursing education |
Outline of Annual Research Achievements |
シビリティー(civility)の概念分析を扱った重要な論文は2つである。ClarkとCarnosso (2008)は、「不一致, 相違, または異論を表すとき,シビリティーは他者に対する心からの敬意として特徴づけられる.この敬意には, 時間, 存在, 真に話し合う意欲, そして共通点を探る誠実な意図が含まれる.」と操作的に定義している。そして、「個人はそれぞれのパーソナルレンズを通してシビリティーを認識する.そのレンズは文化, 経験, 立場および期待の影響を受けている.」と分析した。 一方、Woodworth(2016)は「シビリティーとは、積極的な行動と属性の複合である.これは, コミュニケーション, 対人関係, 学習, 患者アウトカムに影響を与える.」とした。その際、シビリティーの「属性」は道徳的原則(徳、信頼、尊厳・尊敬)と専門職性(ロールモデル、説明責任、コミュニケーション、共同)から構成されていると分析した。そして、看護教育者は、学習環境において社会的に受け入れられる行動的期待を設定し、学生との良好な対人関係を確立し、道徳的および学術的な完全性(integrity)を維持し、ロールモデルでありシビリティーである行動を示さなければならないと結論している。例えば、クラスルールは行動的期待の一つであり、これを学生と教員が積極的に維持すること、教員自らクラスルールに従った行動を示すこと、そのコンピテンシーが必要であることである。しかしこれまで国内の教育現場におけるシビリティーの実証研究はほとんどない。 本研究は、シビリティーの理解によるインシビリティー(incivility)の尺度開発を目指して、関連文献の批判的吟味、グループインタビューデータの分析、教員間の討議を行ってきた。その結果、シビリティーにはもちろんのこと、インシビリティーにもシビリティーで答え続ける教員と学習環境が重要と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学生が認識する教員のシビリティー(civility)、インシビリティー(incivility)を明らかにするために、看護系大学4年生5名を対象にグループインタビューを追加し、計3校分のデータを質的帰納的に分析した。シビリティーにおいては、32個の(コード)から、11個の<サブカテゴリー>、さらに4個の[カテゴリー]が得られた。具体的には[学べる環境の具備]において、ロールモデル的な教員、学習意欲を高めるシミュレーション実習が含まれた。教員の声掛けやフィードバックには教員と学生間のコミュニケーションにおける[成長過程の共有]があり、教員の配慮や助言が[関係性の拡充]につながり、[意思や価値観の尊重]に学生が敏感であることが分かった。 一方、インシビリティーにおいては、37個の(コード)から、11個の<サブカテゴリー>、さらに3個の[カテゴリー]が得られた。具体的には[否定的な言動]は、<他者に不満や批判的意見を漏らす>、<見下した言動をとる>、<具体的な助言がない>、<一方的に決めつける>、<質問したいときに不在である>から構成された。[一貫性が無い言動]では、<相手や状況に応じて言動を変える>と<居眠りをする>があり、学生にも教員にも共通してみられた。また、[コンピテンシーの不足]は<特定の学生のフォローを依頼する>、<質問したいときに不在である>、<具体的な助言がない>、<ルールを守らない>から構成された。すなわち、学生、教員を問わず学習環境を損ねる内容が含まれることが分かった。 次年度は、グループインタビューデータの質的帰納的分析と並行して進めているテキスト分析(テキストマイニング)の成果、海外研究者との集中討議で得た知見も加え、下位尺度の概念構成を明確化する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
第82回日本健康学会・学会長講演の機会を捉えて、教育環境におけるインシビリティーの流行とその健康影響、不足と言わざるを得ない現状認識を問題提起した。今後、学会での発信だけでなく、インターネットのSNS等も活用して、シビリティー/インシビリティーの議論の場を創出することにより、多くの研究者の参入を希求する計画である。
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Causes of Carryover |
予定していた研究者会議が実施できず、延期となった。次年度の研究者会議を1回増やし、研究の推進を図る計画である。
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Research Products
(3 results)