2018 Fiscal Year Annual Research Report
Theory development for organizational management in hospitals following the earthquake-triggered nuclear accident: multiple organizational case study method for nursing administration
Project/Area Number |
16K11983
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
武村 雪絵 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (70361467)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 看護管理 / 組織運営 / 研究手法開発 / 事例研究 / 看護師 / 東日本大震災 / 原発事故 / 自主的避難 |
Outline of Annual Research Achievements |
少数事例や固有事例を詳細に分析し有用な知見を抽出・蓄積することは、看護管理学の発展に不可欠である。本研究は、看護管理学分野に特化した事例研究手法を開発すること、及び、この手法を用いて東日本大震災に起因する原発事故後に避難指示隣接地区で稼働を続けた病院の看護組織を分析し、新たな理論を構築することを目的とした。 本研究では、実際に研究を進めながら研究手法を開発した。2016年6月~2018年11月、発災時に福島第一原発30~80キロ圏の7病院に所属していた看護職39名に平均87分のインタビューを実施した。同意撤回1名を除く38名のデータを分析に使用したが、理論構築には共通する現象を描けると判断した原発40~50キロ圏の5病院のデータ(看護師長8名、看護師23名)を用いた。勤務表や文献等の資料も収集した。個人の語りから職場の現象を描く方法を見出すため、さまざまな視点や手法で分析を行い、各方法で描き出された現象が何かを確認することを繰り返した。なお、本研究は東京大学大学院医学系研究科倫理委員会の承認(No. 11176)を得たが、研究遂行中も研究者間で倫理的課題を検討した。 本研究により、個人の語りから個人を超えて存在する職場の現象を描く「複数組織事例研究手法」を開発した。この手法は、個人や施設の匿名性を保ちながら、複数の組織に共通するダイナミクスを詳細に描くことができるため、他の場にも転用しやすい理論を生成できる。本研究では実際にこの手法を用いて、原発事故後に福島県内避難指示隣接地区で稼働を続けた病院で看護師長及び看護師が経験した現象を、個人や施設を超えて共通する職場のダイナミクスとして多角的かつ詳細に描いた。また、この手法を用いて研究を遂行・公表する際に必要な倫理的配慮も明らかにした。本研究で開発した「複数組織事例研究手法」は看護管理学の発展に寄与するものと期待される。
|