2019 Fiscal Year Research-status Report
高度実践看護師の倫理調整能力強化のための継続教育カリキュラムの開発
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16K12007
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Research Institution | Japanese Red Cross College of Nursing |
Principal Investigator |
吉田 みつ子 日本赤十字看護大学, 看護学部, 教授 (80308288)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 看護倫理 / ナラティヴ学習 / 継続教育 / 専門看護師 / 倫理調整 / ナラティヴ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、専門看護師の倫理調整に関する実践力強化のための継続教育プログラムを開発することである。 2019年度はプログラムの理論的基盤を構築し、プログラムを運用、評価することを目的とした。プログラムの理論的基盤については次の3点を明確化した。(1)「その瞬間で何がなされ、何が善で正義か、何に責任を負うかについての判断を伴うる倫理知」「固有具体的な意図や帰結、行為の変遷を扱うナラティヴ・モードの知」という側面を持つ知の開発が重要である。(2)これらの知は「専門職としてのアイデンティティの構成/再構成の活性化」を伴って開発される。(3)よって専門看護師の倫理調整に関する実践力の開発は、これまでの彼らの経験の問い直し、リフレクション、パースペクティヴの変容を促進することによって育まれる可能性のある実践力である。 本理論的基盤に基づき、全5回のプログラムを作成した。プログラムは、専門看護師の発達段階モデルに基づき、資格取得後2~5年未満の者を対象に構成した。プログラム内容は、組織全体への働きかけやしくみづくりをテーマに、経験豊かな専門看護師の経験の語りを契機としたナラティヴ学習であり、1回のセッションは約3時間である。プログラムの妥当性を評価するための、データは、プログラム前後のアンケート、セッション内容とした。プログラムには5名が応募し、4名が継続的に参加した。セッションへの参加を通して、研究参加者らは他者の経験を聞くこと、自らの経験を語ることによって、これまでの自身の経験を意味付け、自らが規定されている考え方に気づき、変容への動機付けが高まり、具体的な行動に移した者もみられた。本成果を踏まえ、プログラムの理論的基盤、プログラム構成、運営についてさらに検討していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
プログラムの理論的基盤の検討、それに基づくプログラムの作成過程における妥当性の検討、実際のプログラム運用の際の講師選定・交渉、研究参加者条募集に時間を要した。それによって、研究データの詳細な分析を踏まえたプログラムの理論的基盤、プログラム構成、運営の検討を総合的に行い、プログラムを最終的に構築するまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、次の2点に取り組む。 (1)2019年度にプログラムを実施した際に得たデータを詳細に分析する。研究参加者5名のうち連続4回以上の出席があった4名について、本プログラムが意図する「倫理知」「ナラティヴ・モードの知」の開発、「専門職としてのアイデンティティの構成/再構成の活性化」に関してどのような成果がみられるか、既存の教育/学習モデルや方法との違い、課題を明らかにする。 (2)プログラムの理論的基盤、プログラム内容、運営方法、教育効果を総合的に検討し、専門看護師の倫理調整に関する継続教育プログラム・モデルを構築する。
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Causes of Carryover |
2019年度は、教育プログラムの参加者が予定よりも少なかったため、プログラム運用のための研究協力者謝金が不要となった。新型コロナウイルス感染症によって学会発表予定の演題を取り下げることになり、旅費が発生しなかった。以上より、研究期間を1年延長することになり、2020年度の助成金使用計画は次のとおりである。 (1)データ分析の継続のためのPC環境の整備、研究補助者謝金、文献収集・複写費、(2)プログラムの理論的盤の総合的評価のための、専門家へのヒアリング・会議のための旅費、謝金、国内外の学会の旅費に助成金を使用する。
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