2017 Fiscal Year Research-status Report
感染管理に強い精神科病院を目指して-感染管理体制の確立と戦略的活動を中心に-
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16K12012
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Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
長尾 多美子 四国大学, 看護学部, 助教 (40716049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 茂 四国大学, 看護学部, 教授 (60552099) [Withdrawn]
桑原 知巳 香川大学, 医学部, 教授 (60263810)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 療養環境 / 精神科病院 / 感染管理 / アウトブレイク |
Outline of Annual Research Achievements |
中小規模精神科病院の特徴および精神科患者の特性を踏まえ、限られた人材と予算の中で実行可能な効果的で効率的な感染対策として優先度の高い取り組みについては、次の4点が挙がった。①感染症の専門家が不在の施設は、確定診断に至るまでの初期対応が迅速に開始できるシステム構築が必要である。②患者は長期入院が大多数で外出や外泊も少ない。アウトブレイクはデイサービスや外来患者等が感染源である場合が多く、外部からの感染源の持ち込み防止が重要である。③インフルエンザ流行期などは国内および周辺地域における流行情報を把握し、状況に応じた感染対策を段階別に講じる必要がある。④環境培養調査を実施した結果、デイルームや集合治療室など交差感染のリスクが高い場所の汚染が顕著で、ナースステーションは清潔・不潔のエリア分けができていなかった。一律の方法で環境整備を行うのではなく、時期や目的に応じた環境整備を行い、医療関連感染防止および衛生的な療養環境を維持する必要がある。 上記の課題について、初期対応の充実およびアウトブレイク対策としては『中小規模精神科病院インフルエンザフェーズ別(流行段階別)感染対策』を作成した。本研究独自の項目として、環境に散在しているウイルスを消毒する為ための「環境整備」と、交差感染のリスクを重要視し「動線管理」を追加した。また、デイサービスや外来では、少ないスタッフが多くの患者を短時間でトリアージできるよう非接触型体温計を試用した。その結果、インフルエンザ感染者数は47名(平成28年度)から23名(平成29年度)に減少した。加えて、アウトブレイク発生時には、保健所など関係機関との連携をスムーズに図るためのマニュアルやフローチャートを検討し作成した。これらの成果は療養環境や患者特性で共通部分が多い障害者施設や老健施設の感染対策としても有用であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究協力病院の感染対策マニュアルの見直しを行った。前年度までの取り組みから、中小規模精神科病院において優先順位が高いと考えられたアウトブレイク対策や希少な感染症発生時の初期対応について、『中小規模精神科病院インフルエンザフェーズ別(流行段階別)感染対策』や関係機関と速やかに初動連携ができるような『アウトブレイク発生時フロー』を作成した。また環境培養調査から明らかになった、医療関連感染のリスクが高い環境や衛生管理が困難な環境について、効果的かつ効率的な環境整備方法について検討した。職員全体研修やサーベイランスは継続して実施している。 アンケート結果や環境培養調査結果、作成した手順書やマニュアルについて学会などで情報発信し、多くの感染管理専門家からの意見や情報などを参考に、PDCAサイクルを回している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度に作成した『中小規模精神科病院フェーズ別(流行段階別)感染対策』や『アウトブレイク発生時フロー』の継続使用、『時期・目的別の環境整備手順(仮称)』の実施によって、ブラッシュアップを図る。平成28年に実施したアンケート調査から、アウトブレイクの対象はインフルエンザだけという認識の職員が多かったことから、職員教育を継続的に行い、結核や麻疹など空気感染する感染症のほか、薬剤耐性菌などもアウトブレイクの対象となることなどを周知し、感染対策・安全管理意識の向上を図る。感染対策マニュアルは、中小規模精神科病院の感染管理・安全管理的視点から内容の再検討を行い、効果的・効率的な感染管理体制の確立を目指す。 また、優先順位の高い取り組みに対し、全病院的に継続して取り組むと同時に、現場で実働部隊となる「感染対策リンクナース(感染対策委員会と各部署との橋渡し的存在」について、中小規模精神科病院だからこそ必要な役割を抽出・検討する。 平成30年度は3年計画の最終年度となるため、初年度に実施した「職員の感染対策に関する認識を把握するためのアンケート調査」および感染対策の実際を把握するための「感染対策ラウンド・環境培養調査」を再度実施し、その結果の変化、並びに「インフルエンザ・アルコール手指消毒剤のサーベイランス」の結果から、取り組みの成果を評価する。 最終的な目標は、感染管理専門家が不在の中小規模精神科病院施設でも、療養環境の特徴や患者特性を踏まえた効果的で効率的な感染対策を実施することができる統一的な基準・マニュアルの作成である。なお、本研究は、療養環境や患者特性で共通部分が多い障害者施設や老健施設などにおいても有用であると考えている。
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Causes of Carryover |
(理由) 第87回日本感染症学会西日本地方会学術集会で研究成果を発表する予定で、研究代表者及び研究分担者の2名での参加を計上していたが、やむを得ない事情により1名での参加・発表になったため。 (使用計画) 精神科病院感染管理セミナーや研修会への参加、療養環境培養調査を追加する予定であり、旅費と消耗品を中心に使用する。備品購入の予定はない。
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Research Products
(13 results)