2017 Fiscal Year Research-status Report
長期間時系列解析に基づいた看護師の過労死予防のための簡便なチェックリストの開発
Project/Area Number |
16K12017
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Research Institution | The Ohara Memorial Institute for Science of Labour |
Principal Investigator |
佐々木 司 公益財団法人大原記念労働科学研究所, 研究部, 上席主任研究員 (10260134)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 過労死 / 過労自死 / 睡眠 / 夜勤・交代勤務 / チェックリスト |
Outline of Annual Research Achievements |
過労死モデルの長期測定と看護師の過労死事例等のヒアリングから,脳・心臓疾患のり患には,睡眠状況が重要であることが抽出された。そこで,現時点での過労死発症メカニズムに関して,これまで蓄積してきた睡眠と脳・心臓疾患に係る文献に最新の知見を加えてまとめた。その結果,脳・心臓疾患発症のメカニズムは,先行覚醒時間の延長による睡眠時間の短縮,それにともなう睡眠の質の変化が重要であった。とりわけ,睡眠短縮時時には,恒常性のある徐波睡眠が優先的に出現し,レム睡眠が抑制されやすいことも明らかになった。レム睡眠は,自律神経系の亢進がなされるところ,徐波睡眠によるレム睡眠の抑制転換から,レム睡眠圧の亢進が惹起され,それによって一層のレム睡眠時の自律神経亢進が生じるとした。そこで血管内皮機能の脆弱性が高い夜勤・交代勤務に就く看護師では,このメカニズムが睡眠時の脳・心臓疾患り患に寄与すると結論づけた。一方,脳・心臓疾患は覚醒時にも生じるが,それはBasic Rest Activity Cycle(Kleitman,1963)によって説明できることを示唆した。同時に,過労自死の前駆症状のうつ病へのり患と睡眠時間の関係は,脳・心臓疾患と睡眠時間の関係と同様,U字カーブを示すことから,過労自死についても睡眠の質の転換が関与していることが推測された。とくにレム睡眠時は,情動ストレスの解消過程であることから有力な寄与因子である。しかしながら,最近の研究では,レム睡眠の消長において,過労自死の前駆状態であるうつ病とPTSDでは,その出現様式が異なるという知見も報告されている(Habukawaら,2018)。また過労自死した看護師の関係者へのヒアリングでは,看護師の感情労働としての業務負担の影響が大きく関与していることが推認され,とくにレム睡眠の消長関係を明らかにする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの長期時系列解析と同時に,看護師の過労の進展状況と感情労働による労働負担条件の関係を明らかにするために看護師1000名に対してストレス要因をバーンアウトから捉えた質問紙調査を行った。また同じ夜勤・交代勤務の形態をとり,高労働負担だが,労働のサービス性が高くない運航乗務員の労働負担特性を明らかにするために,500名にわたる質問紙調査を追加で行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在,取り残している看護師の質問紙調査の分析を行うとともに,縦断的時系列データ,文献,横断的質問紙調査,看護師ヒアリング・質問紙調査,他業種の質問紙調査の結果を総合し,簡便なチェックリストの作成のための項目選定を行う予定である。その際,主観的指標はとりわけ夜勤においては客観的指標よりも過小評価される傾向があるとされるから(Zhouら,2012),この点も考慮してチェックリストを作成する計画である。
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