2016 Fiscal Year Research-status Report
遺伝性疾患をめぐる病い経験の実態と新たな課題への対応方法に関する検討
Project/Area Number |
16K12034
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
西村 ユミ 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (00257271)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 泰樹 東海大学, 現代教養センター, 教授 (00338740)
西垣 昌和 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20466741)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 遺伝性疾患 / ADPKD / 病い経験 / 患者会 / 生活 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年、医学的管理方法が確立されつつある遺伝性疾患の患者とその家族、及び医療者が、新たな治療薬の臨床試験とその認可、さらには難病の患者に対する医療等に関する法律の成立と施行等を受けて、いかなる病い経験をしているのかを、常染色体優性多発性嚢胞腎(以下、ADPKD)に注目して、その実態と新たな課題を第1段階:量的手法、及び第2段階:質的手法を用いて明らかにする。さらに、第1段階及び第2段階の調査結果をもとに、患者、家族、医療従事者が活用可能な「暮らしのヒント」を作成することを目的とした。 平成28年度は、第1段階調査として、患者の病い経験や病気を子どもに伝えること、疾患・治療・生活にかかわる情報等の課題の実態を探求するための質問紙を作成し、無記名自己記入式質問紙およびwebアンケートを用いた横断研究、第2段階調査への研究依頼を行った。なお、本調査は、研究代表者が所属する施設の倫理委員会の審査を受け、承認された。 調査用紙は、国内の2患者会およびPKD関連の講演会等で配布し、webアンケートは患者会のウェブサイトからリンクにより実施した。280名から有効回答を得た。回答者は、男性よりも女性が多く、首都圏在住の者が多かった。全般的QOLは基準値と比較して同等からやや低値であった。一方、腎疾患による負担感は強く、睡眠に関するQOLが低いことが示唆された。子どもがいる対象者の81%は子に疾患のことを伝えており,そのうち7割の患者が伝えてよかったと感じていた。子に疾患のことを伝えるうえで最も重要であったのは子の年齢、伝えることによってメリットがあるかどうかであった。 現在、回答の詳細な分析を進めている。さらに、自由記載欄の分析を進めるとともに、分析結果を踏まえて、第2段階調査の質的手法による調査内容、および調査方法を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に計画していた調査用紙の検討と作成、研究計画の倫理審査委員会への申請と承認、第1段階調査の全てを実施し、第2段階調査の検討に着手することができた。 第2段階調査ヘは、予測を上回る数の患者が研究対象者となることを申し出ており、全ての対象者に調査ができるよう、研究計画を修正すると共に、共同研究者を1名追加して研究に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、第2段階調査として、質的手法による調査を実施する。研究対象者は、既に、第1段階調査時に承諾が得られた約70名とする。調査方法は、対象者全員に対する電話インタビュー(約30分)および、約20名を対象とする対面式インタビュー(約60分)を実施する。調査内容は、病い経験、病気を他者に伝えることに関する経験、生活の中で困っていることとそれへの対処等の経験などとするが、第1段階調査の自由記載も参照して決定する。 平成30年度は、対面式インタビューを継続すると共に、インタビュー調査の内容から「暮らしのヒント」にかかわる情報を抜粋し、ヒント事例を作成する。
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Causes of Carryover |
予定よりも低額の印刷費の業者に委託することができた。また、入力作業の時間が、予定よりも少なかった。さらに、集まって行う会議を減らし、メール等を用いて複数回にわたって議論をしたため、交通費および会議費を削減できた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
第2段階調査(インタビュー)の対象者数が予定を大幅に上回っているため、インタビューの音声データの文字起こし代として、計画する。60分の音声データの文字起こしを13,500円で委託するため、約8件分に充当させる。
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Research Products
(1 results)