2016 Fiscal Year Research-status Report
妊婦の腹部を介した胎児へのタッチングと胎児愛着との関連~オキシトシンの推移から~
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16K12096
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
永橋 美幸 (荒木美幸) 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (10304974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大石 和代 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 教授 (00194069)
高村 恒人 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 脳病態統合イメージングセンター, 流動研究員 (90773888)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | タッチング / 妊婦 / 胎児愛着 / オキシトシン |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題の1つである「妊婦の腹部を介した胎児へのタッチングは産後のオキシトシン、胎児愛着との関連」について明らかにする目的で研究を行った。妊娠中期の妊婦36名を対象に,妊婦が自覚した胎動数,腹部へのタッチング回数,胎児への声かけ回数を1週間記録してもらい,胎児へのかかわりの記録が,妊婦の胎児愛着および唾液中OXT濃度,胎児存在意識づけに効果があるかについて明らかにすることを目的とした. そのうち他院へ転院した2名と対象年齢外の1名を除外し,有効回答33名(介入群15名,対照群18名)を分析対象とした(有効回答率100%).対象者の属性に関しては,両群に有意な差は認められなかった.2時点のPAIの平均値を比較したところ,2回目のPAIは対照群に比べ介入群の平均値が高く有意な差が認められた(p=0.042).各群のPAIの平均値の経時的変化を比較したところ,介入群の1回目と2回目との間に有意な増加が認められた(p=0.016)(表1). 2時点のOXT濃度の平均値を2群で比較したところ,2回目のOXT濃度は対照群に比べ,介入群の中央値および平均値が高く,有意な差が認められた(p=0.016).OXT濃度の経時的変化を2群で比較したところ,有意な差は認められなかった.胎児への意識の変化について2群で比較したところ,介入群では対照群に比べて胎児を意識する人数が多かった (p=0.03) .記録を1週間つけることで,胎児の反応やかかわりを振り返ることができ,胎児の存在意識が高まり,胎児愛着や唾液中OXT濃度が高くなったと考えられる.したがって,助産師は記録を促すなど,妊婦が日常生活の中で胎児の反応の知覚やかかわりを振り返り,胎児への意識を高めるような支援が必要である.これらの介入により,胎児を意識することは,妊婦の母親役割獲得の促進,胎児への愛着形成へとつながる可能性が示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の1つである「妊婦の腹部を介した胎児へのタッチングは産後のオキシトシン、胎児愛着との関連」について介入群と対照群を設定し比較検討できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
妊婦にとって重要他者である夫(またはパートナー)との関係性と妊婦の児への愛情との関係については報告されているが、夫(またはパートナー)の胎児への実際のかかわりと妊婦の胎児愛着との関連ついて調べた研究はほとんどない。そこで本研究は、夫やパートナーによる妊婦の腹部へのタッチングと妊婦の胎児愛着およびオキシトシンとの関連を明らかにする目的で研究実施する。これらによって胎児愛着を促進するための夫への具体的な支援について示唆が得られると考える。妊娠中の血中オキシトシン値が高いほど、産後うつ病のリスク軽減に関連があることが示唆されており、妊娠中および産後のオキシトシンが母親の精神状態に関連していることは明白である。そこで本研究では、授乳期の中でもホルモン動態を示しやすいと考えられるエンドクリン・コントロールの時期(産後4、5日)の唾液オキシトシンの分泌状態を明らかにするとともに、産後早期の唾液オキシトシンの分泌状態(変化量)と産後1か月の抑うつ・対児愛着との関連を明らかにすることを目的として研究を実施する。本研究における仮説は以下の通りである。 1.産後早期の授乳時の唾液オキシトシン変化量が大きいほど、産後1カ月の抑うつ症状は軽減される。2.産後早期の授乳時の唾液オキシトシン変化量が大きいほど、産後1か月の対児愛着はより肯定的となる。 本研究において上記の仮説が明らかとなれば、産後早期の唾液オキシトシンの変化量を観察することで、産後1か月の母親の抑うつや対児愛着を予測することが可能となる。つまり、産後早期に、その後の母親の抑うつ症状や愛着障害のリスクをスクリーニングすることが可能になるため、産後うつ病や児童虐待の早期発見および支援につながると考えられる。
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Causes of Carryover |
研究目的の1つである「妊婦の腹部を介した胎児へのタッチングとオキシトシン、胎児愛着との関連」について実施したが、「産褥期のオキシトシンの経過と産後うつとの関連]について調査できていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
夫やパートナーによる妊婦の腹部へのタッチングと妊婦の胎児愛着およびオキシトシンとの関連を明らかにする目的で研究実施する。これらによって胎児愛着を促進するための夫への具体的な支援について示唆が得られると考える。さらに授乳期の中でもホルモン動態を示しやすいと考えられるエンドクリン・コントロールの時期(産後4、5日)の唾液オキシトシンの分泌状態を明らかにするとともに、産後早期の唾液オキシトシンの分泌状態(変化量)と産後1か月の抑うつ・対児愛着との関連を明らかにすることを目的として研究を実施する予定である。
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